~賑わいの裏側~

 悪夢のような事件から一夜明け、一行は魔学研究所にあるザッハの私室に呼び出された。

 だいぶ良くなったもののまだ完全ではないのであろうザッハは、デュー達が来るとベッドから上体を起こした。

「見苦しい姿でごめんね。けど、どうしても話をしておきたかったんだ」
「……もう、大丈夫なのか?」

 オグマが尋ねると、ザッハは静かに首を縦に振る。

「もともと大した事なかったんだけどね。ほら、僕もやしっ子だからさ」
「大した事ないなら良いのじゃが……」
「心配しなくていいよ、ミレニア」

 不安げな姪の頭を一撫でして、彼は一行に目を向ける。

「さて、こうなった経緯を話しておかないとね。まず、オグマに渡された魔物の肉片……あれが原因だという辺りまでは、見当がついているだろう?」

 ザッハの言葉にオグマは僅かに身を強張らせ、頷いた。

――淡々と語るところによると、ここの設備には魔学装置というものがあり、人工的にマナを集め、調整次第で様々な用途に使用出来るらしい。
 その装置でマナを照射してみたところ、なんと魔物の肉片がひとりでに動き出し、照射されたマナを取り込んで再生を始めた。

 みるみる大きくなる不気味な物体に慌てて装置を止めたのだが、今度は人間の体内に流れるマナを求めてザッハを取り込もうと襲いかかってきたのだ。

「……はっきり思い出せるのは、ここまで」

 辺りに、重い空気が流れた。
 マナを喰らうあの異質な魔物は、肉体が小さな欠片ひとつになっても再生する可能性があるだけでなく、人間にとりついてしまうという事実は、あまりにも衝撃的だった。

「そんな魔物が、いるなんて……もしかしたら、世界各地で……」
「だとしたら、尚更止めなきゃいけねーな。他にマナスポットの場所は、」
「待った」

 デュー達の会話にザッハが割って入る。

「今度は君たちの番だよ。この王都に来たのも、マナスポットに行ったのも、今回の事件も、何か関係があるんだろう?」

 こちらが話したのだから、そちらも話せ。
 促されて一行は簡単にこれまでの経緯を説明した。
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