序章・~少女との出会い~
――夢を、観ていた。
絢爛豪華な城で、玉座の王にかしずく騎士。
「よいか、……必ず……」
「……仰せのままに」
お前達は誰だ?
そう思う間もなく場面は切り替わる。
切り立った崖、人を寄せつけぬ自然の城塞。
騎士は一人歩く。
そして……―――
「しっかりするんじゃ!」
「――!!」
夢は、そこで終わった……いや、強引に終わらせられた。
ベッドの上、仰向けで寝ていた少年は自分を覗き込む少女をじっと見つめる。
「……お前は誰だ?」
「そりゃ、こっちのセリフじゃ。おぬし、うちの前に倒れとったんじゃぞ」
ルビーの瞳、白花色の髪をポニーテールにしたとぼけた顔の少女。
少年は名乗ろうとして、はたとある事実に気付く。
「……オレは、誰だ……?」
「は……?」
間。
目を数回瞬かせた後、少女は身を乗り出した。
「それはひょっとして記憶喪失とかいうヤツかの?」
「記憶喪失……?」
「名前や過去を忘れてしまう事じゃ」
「それは知ってる」
少年の受け答えに少女はふむむ、と唸った。
「部分的な所が抜けとるのかの?……えーと、名前……は忘れとるんだっけか…………そうじゃ!」
少女はベッドの脇に置いてある荷物に視線を移す。
壁に立て掛けられている大きな剣は、彼女の持ち物ではなさそうだ。
「どうした?」
「いや、持ち物に名前なんか書いてないかと思っての……」
「……オレはガキか」
「ガキんちょじゃろ?……何なら鏡で見てみい」
少女は部屋に飾られている大鏡を指し示した。
そこに映っているのは少女と、自分と思しき少年。
歳の頃は十三、四くらい。フロスティブルーの髪に瞳は藍鉄。歳の割に落ち着いた雰囲気をしている。
……が、記憶を無くしているせいかこれが自分だという実感はいまひとつ薄かった。
(これが……オレなのか?)
「お、あった。えっと……」
少女は剣の柄をじっと見つめる。
よく見ればそこに文字が刻まれているのだが、掠れていて殆ど読めなかった。
「……よう使い込まれとるのー……デュ……あとは読めん」
「オレの名前か?」
「だと思うがの……ええい面倒臭い、おぬしの名前はデューじゃ!」
少女は強引に少年の名前を決めてしまう。
勝手だとは思いつつも自分の名前がわからない以上、少年に逆らう理由はなかったが。
「……それで、お前の名前は?」
「ああ、そうじゃった」
ぽんと手を打つと、少女は少年……デューに笑いかけた。
「ミレニアじゃ。ミレニア・トルティ」
「……ミレニア……」
古ぼけた山小屋にて、これがデューとミレニアの出会いとなった。
絢爛豪華な城で、玉座の王にかしずく騎士。
「よいか、……必ず……」
「……仰せのままに」
お前達は誰だ?
そう思う間もなく場面は切り替わる。
切り立った崖、人を寄せつけぬ自然の城塞。
騎士は一人歩く。
そして……―――
「しっかりするんじゃ!」
「――!!」
夢は、そこで終わった……いや、強引に終わらせられた。
ベッドの上、仰向けで寝ていた少年は自分を覗き込む少女をじっと見つめる。
「……お前は誰だ?」
「そりゃ、こっちのセリフじゃ。おぬし、うちの前に倒れとったんじゃぞ」
ルビーの瞳、白花色の髪をポニーテールにしたとぼけた顔の少女。
少年は名乗ろうとして、はたとある事実に気付く。
「……オレは、誰だ……?」
「は……?」
間。
目を数回瞬かせた後、少女は身を乗り出した。
「それはひょっとして記憶喪失とかいうヤツかの?」
「記憶喪失……?」
「名前や過去を忘れてしまう事じゃ」
「それは知ってる」
少年の受け答えに少女はふむむ、と唸った。
「部分的な所が抜けとるのかの?……えーと、名前……は忘れとるんだっけか…………そうじゃ!」
少女はベッドの脇に置いてある荷物に視線を移す。
壁に立て掛けられている大きな剣は、彼女の持ち物ではなさそうだ。
「どうした?」
「いや、持ち物に名前なんか書いてないかと思っての……」
「……オレはガキか」
「ガキんちょじゃろ?……何なら鏡で見てみい」
少女は部屋に飾られている大鏡を指し示した。
そこに映っているのは少女と、自分と思しき少年。
歳の頃は十三、四くらい。フロスティブルーの髪に瞳は藍鉄。歳の割に落ち着いた雰囲気をしている。
……が、記憶を無くしているせいかこれが自分だという実感はいまひとつ薄かった。
(これが……オレなのか?)
「お、あった。えっと……」
少女は剣の柄をじっと見つめる。
よく見ればそこに文字が刻まれているのだが、掠れていて殆ど読めなかった。
「……よう使い込まれとるのー……デュ……あとは読めん」
「オレの名前か?」
「だと思うがの……ええい面倒臭い、おぬしの名前はデューじゃ!」
少女は強引に少年の名前を決めてしまう。
勝手だとは思いつつも自分の名前がわからない以上、少年に逆らう理由はなかったが。
「……それで、お前の名前は?」
「ああ、そうじゃった」
ぽんと手を打つと、少女は少年……デューに笑いかけた。
「ミレニアじゃ。ミレニア・トルティ」
「……ミレニア……」
古ぼけた山小屋にて、これがデューとミレニアの出会いとなった。
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