~忘れられた場所で~

――どうにも、苦手な奴っていうのはいるもので……

 会いたくない時に限って遭遇したりするのもお約束だ――


 人の手が入っていない、古い洞窟の中で。

『こんな所があったなんて……』

 ファングの行く先を照らしながら、魔導サポートアイテム“シエン君”は辺りを見回した。
 呟く声は、その制作者クレインのものだ。

「この前の嵐の影響で入口が発見されたんだろう?」
『うん。知る限りでは百年単位で放置されてたみたい』
「むしろよく今まで見つからなかったな……」

 クレインの話によると、この辺りは本当に何もない田舎らしい。
 そして入口付近には封印装置らしき残骸があり、それが今まで洞窟を見えないようにしていたようだ。

『偶然の産物って奴かな? 調査隊が来るのはまだ先だから、僕達が一番乗りだね♪ なんだか気分いいなぁ☆』
「……まぁ、奴等に荒らされてからではめぼしい物も見つからないかもしれないしな」

 楽しそうなクレインとは裏腹に冷静なファング。

「……ん?」

 ふと、その行く手に人影らしきモノが見えた。

「どうやら一番乗りではないらしい……って!?」
『何? どしたのファング?』

 まだはっきりと誰かわかった訳でもないのに、全身に感じた悪寒。

「い、嫌な予感が……」
「随分な言い様だな」

 暗闇から返ってきたのは、艶のある低音。

 青い髪に片眼鏡、闇に映える白衣という特徴的な出で立ちの男は、ファングを見つけると妖しく灰色の目を細めた。
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