EX~はじめての飲み会~

「かんぱーい☆」

 クレインが嬉々としてグラスを掲げる。

「ほら、ファングもっ!」
「? あ、ああ……」

―チンッ―

 グラス同士の触れ合う音。
 訳のわからないような顔でその行為を見つめていると、向かい側に座っているルーツが覗き込んできた。

「どーしたんだ、ファング?」
「いや、どうにも慣れなくてな」

 戸惑うファングに、斜向かいのロキシーが笑いかける。

「フッ……こういうのは初めてか?」
「なんかいかがわしいよ、ロキシー」

 妙に腰にくる低音で囁く男にクレインがつっこむ。

 別にいかがわしい事をしている訳ではなく、ただの飲み会なのだが。

「酒は飲むが、こうやって集まるのは初めてだ」
「へぇ、意外だな~」

 ちなみに未成年なのでルーツだけ飲み物はオレンジジュース。
 見た目だけならクレインも未成年と間違う童顔っぷりだが、こちらはしっかり酒をいただいている。

 と、いうより……

「おかわりっ♪」
「また!?」

 かなりのペースで飲んでいた。

「お前、蟒蛇だったのか……」
「まーね☆」

 いくつもの瓶を空にしながら、全く酔っていないどころかケロリとしている相棒に、ファングは驚きつつも呆れていた。

「うぅ、オレだけお酒じゃない……」
「こういうのは雰囲気を楽しむものだ」

 ザルを通り越した勢いのクレインとは違い、ロキシーはマイペースに楽しんでいる。

「……ていうか、なんでお前がいるんだ」
「おや、今更だな」

 アイスブルーの瞳がぎろりと睨むが、灰色の瞳は全く動じず。

「つーか、そもそもオレがファングを誘ったんだよ! しかも最初は普通に外食の予定だったし……」

 そう。
 日頃の礼がしたいとファングを外食に誘ったのだが、いつの間にかクレインがついて来て、さらにロキシーまで……

「二人っきりなんてダメだよ!」
「ファング、私は君に興味があるんだ」
「お、お前らなぁ……」

 ちなみに外食が飲み会に変わったのはクレインの提案。

「奢りから割り勘になったんだからいいでしょ?」
「他はともかくアンタが飲み過ぎなんだッ!!」

 噛みつく金髪の子犬など歯牙にもかけず、クレインは追加の注文をする。
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