~親子の距離の縮め方~
――ようやく再会した親子の関係は、実にぎくしゃくとぎこちなかった。
どこかの親子はすぐにいつも通りになったというのに……全く。
まあ、生き別れた時の境遇やお互いの性格、その他諸々を考えれば仕方のない事なのかもしれないが、それにしても焦れったい。
腹が立つ。苛々する。
……世話が焼ける。
火蜥蜴はそんな事を考えながら、盛大に溜息を吐くのだった。――
「ルーツに父親として認められたいんだけど、どうすればいいと思う?」
始まりは魔獣にとって天敵であるはずの軍人(と言ってもその過去は実に複雑なのだが)、サードニクスがガナシュを訪ねてきた事からだった。
「知らん。そもそもそれでなんで俺のところに来る?」
「それは……こないだから見ていてなんかあんたがルーツの父親っぽかったから、かな……」
実の父が自信を喪失する程に。
そんな心境が目に見えるような彼は今は招き入れられたリビングのソファで小さく縮こまっている。
チッ、と小さく舌打ちをしてガナシュはそれを睨めつけた。
「……俺は何もしていないぞ。あんなヤツの父親になったつもりはない。懐き具合ならフェンリルの方が上だろう」
「フェンリル?」
きょとんとしているとサードニクスの体内に埋め込まれている魔石が、ファングの事だ、と囁いた。
「……ああ。いや、あの人はどちらかと言うと父親よりも……」
―ダンッ!!―
突然、ガナシュとサードニクスの間に割って入るようにしてティーカップが置かれた。
置かれた、と表現するにはあまりにも凄まじい勢いに見えてそれはヒビひとつ入らず、注がれた紅茶も一滴もこぼれていない。
見ればカップを置いた本人、ファングがニコニコと笑顔で、サードニクスを見下ろしていた。
心なしか空気が冷たくなった気がするのは彼が氷を操る魔獣だからなのだろうか。
「えっ、あ……」
「バカ、母親みたいだとかフェンリルには禁句だ!」
「あっ!……わ、悪い……」
慌てて両手で押さえ口を噤むとファングはふわりと微笑んで首を左右に振った。
「いいんだ。悪気がないのはわかるし、言われ慣れてるしな。過剰に反応して悪かった」
「ファング……」
「……けどガナは後で話があるからそのつもりで」
「なっ!?」
ちょっと待て、何故そうなると抗議する火蜥蜴を無視してしゃがみこむと氷狼はサードニクスと目線を合わせた。
「馬鹿ガナはほっといて……サードニクスは早くルーツと親子に戻らないとな。俺もその方が嬉しい」
「う、うん」
ひっそりと思った事は今は内に秘めて、アイスブルーの目を優しく細めるのだった。
どこかの親子はすぐにいつも通りになったというのに……全く。
まあ、生き別れた時の境遇やお互いの性格、その他諸々を考えれば仕方のない事なのかもしれないが、それにしても焦れったい。
腹が立つ。苛々する。
……世話が焼ける。
火蜥蜴はそんな事を考えながら、盛大に溜息を吐くのだった。――
「ルーツに父親として認められたいんだけど、どうすればいいと思う?」
始まりは魔獣にとって天敵であるはずの軍人(と言ってもその過去は実に複雑なのだが)、サードニクスがガナシュを訪ねてきた事からだった。
「知らん。そもそもそれでなんで俺のところに来る?」
「それは……こないだから見ていてなんかあんたがルーツの父親っぽかったから、かな……」
実の父が自信を喪失する程に。
そんな心境が目に見えるような彼は今は招き入れられたリビングのソファで小さく縮こまっている。
チッ、と小さく舌打ちをしてガナシュはそれを睨めつけた。
「……俺は何もしていないぞ。あんなヤツの父親になったつもりはない。懐き具合ならフェンリルの方が上だろう」
「フェンリル?」
きょとんとしているとサードニクスの体内に埋め込まれている魔石が、ファングの事だ、と囁いた。
「……ああ。いや、あの人はどちらかと言うと父親よりも……」
―ダンッ!!―
突然、ガナシュとサードニクスの間に割って入るようにしてティーカップが置かれた。
置かれた、と表現するにはあまりにも凄まじい勢いに見えてそれはヒビひとつ入らず、注がれた紅茶も一滴もこぼれていない。
見ればカップを置いた本人、ファングがニコニコと笑顔で、サードニクスを見下ろしていた。
心なしか空気が冷たくなった気がするのは彼が氷を操る魔獣だからなのだろうか。
「えっ、あ……」
「バカ、母親みたいだとかフェンリルには禁句だ!」
「あっ!……わ、悪い……」
慌てて両手で押さえ口を噤むとファングはふわりと微笑んで首を左右に振った。
「いいんだ。悪気がないのはわかるし、言われ慣れてるしな。過剰に反応して悪かった」
「ファング……」
「……けどガナは後で話があるからそのつもりで」
「なっ!?」
ちょっと待て、何故そうなると抗議する火蜥蜴を無視してしゃがみこむと氷狼はサードニクスと目線を合わせた。
「馬鹿ガナはほっといて……サードニクスは早くルーツと親子に戻らないとな。俺もその方が嬉しい」
「う、うん」
ひっそりと思った事は今は内に秘めて、アイスブルーの目を優しく細めるのだった。