~始まりの場所~
――傲慢な人間の振る舞いで、故郷は滅ぼされた。
多くの同胞を失い、そして魔石となった我が身も奪われてしまった。
これ以上、人間共の好きにさせてなるものかと心を閉ざし眠り続けたが……
目覚めは、唐突に訪れた。――
「…………ーテ…………ル、ツ……」
掠れた、殆ど音にならない声が魔石に届いた。
魔石を所持していた軍人は、調査に来た遺跡で乾いた壁に寄り掛かり座り込む血まみれの男を見つける。
「トレジャーハンター……?」
暗い中よくよく見れば、その男の身体を汚しているのは自分の血だけではなかった。
傍らに倒れ絶命している巨大な魔物が、ここで何があったかを物語っている。
「魔物と相討ちになったか……まだ息はあるみたいだけど、それでも……」
もう長くはないだろう。
魔石もぼんやりした意識でそう感じていた。
眠っている間にどれぐらい経ったのか、何があったのか、何故自分はここにいるのか。
そんな事はこの翡翠色をした魔石にはもはや興味の対象外だった。
それよりも、今目の前で命の灯が消えようとしているこのハンターの男の、片方を失って尚それでも消えない瞳の輝きに少しだけ惹かれた。
「……ちょいと、大丈夫かい?」
「…………だれ、か……いるのか……?」
軍人が呼び掛けると、男は苦しげな呼吸の中で応えた。
視界が霞んでいるのだろうか、声に反応してこちらを見たようだ。
「この怪我じゃ治癒の術も……」
「俺……死ぬ、のか……?」
微かな声を聞き取ろうと跪いた軍人に手を伸ばす。
男の目には涙が浮かんでいた。
どうせ愚かな私欲に走った末路だろう、と魔石は内心で吐き捨てたが……
「……謝らねーと…………ごめんって……」
「謝る?」
「帰らなきゃ…………会い、てぇよ……、…………に……、…………て、ごめん……な……」
そこから先の言葉は途切れ途切れでよく聞こえなかったが、魔石の心を強く動かすものだった。
多くの同胞を失い、そして魔石となった我が身も奪われてしまった。
これ以上、人間共の好きにさせてなるものかと心を閉ざし眠り続けたが……
目覚めは、唐突に訪れた。――
「…………ーテ…………ル、ツ……」
掠れた、殆ど音にならない声が魔石に届いた。
魔石を所持していた軍人は、調査に来た遺跡で乾いた壁に寄り掛かり座り込む血まみれの男を見つける。
「トレジャーハンター……?」
暗い中よくよく見れば、その男の身体を汚しているのは自分の血だけではなかった。
傍らに倒れ絶命している巨大な魔物が、ここで何があったかを物語っている。
「魔物と相討ちになったか……まだ息はあるみたいだけど、それでも……」
もう長くはないだろう。
魔石もぼんやりした意識でそう感じていた。
眠っている間にどれぐらい経ったのか、何があったのか、何故自分はここにいるのか。
そんな事はこの翡翠色をした魔石にはもはや興味の対象外だった。
それよりも、今目の前で命の灯が消えようとしているこのハンターの男の、片方を失って尚それでも消えない瞳の輝きに少しだけ惹かれた。
「……ちょいと、大丈夫かい?」
「…………だれ、か……いるのか……?」
軍人が呼び掛けると、男は苦しげな呼吸の中で応えた。
視界が霞んでいるのだろうか、声に反応してこちらを見たようだ。
「この怪我じゃ治癒の術も……」
「俺……死ぬ、のか……?」
微かな声を聞き取ろうと跪いた軍人に手を伸ばす。
男の目には涙が浮かんでいた。
どうせ愚かな私欲に走った末路だろう、と魔石は内心で吐き捨てたが……
「……謝らねーと…………ごめんって……」
「謝る?」
「帰らなきゃ…………会い、てぇよ……、…………に……、…………て、ごめん……な……」
そこから先の言葉は途切れ途切れでよく聞こえなかったが、魔石の心を強く動かすものだった。