~仲間~
「いくぞ、フェニックス」
『……うん』
クリスタルのような石にガナシュが魔力を注ぎ込むと、それは仄かに輝きだす。
そして一瞬強く発光し、石は人の姿に変わった。
「確かにアスカだ……」
生き別れになった仲間の久し振りに見る姿にファングは思わずそう洩らした。
そんな事は、わかりきっていたのに。
「……魔石になっていたなんて……」
つまり彼……不死鳥『フェニックス』のアスカは、一度肉体の死を迎えているという事。
恐らくは、シリウス同様魔獣を研究していたあの施設で。
……今となっては、生きている魔獣の方が少ないのだろうか。
「アスカちゃんまで、そんな……」
先に実体化していたシリウスが哀しげに呟く。
ファング、ガナシュ、アスカの三人は幼馴染で昔はよく一緒に遊んでいた。
シリウスにとっては彼も我が子のように可愛がっていたし、そもそも子供が酷い目に遭うのは胸が痛むもの。
だがアスカはシリウスの視線に気付くと柔らかく微笑みかけた。
「シリウスさん、そんな顔しないで下さい。俺はこれで結構幸せだったんですから」
「幸せ……?」
そう尋ねると不死鳥はコクリと頷く。
「確かに、苦しい毎日だったけど……カスミに、……妻に、逢えたし」
「「「妻ぁ!?」」」
狼親子と火蜥蜴の声が見事にハモった。
それもそのはず、幻想界にいた頃はそんな話は全くなかったから。
「ちょ、ちょっと待てフェニックス……それは、一体いつどこで……」
「お前らが知らないんだからひとつしかないだろ?……あの施設で、オレの世話係みたいなモノだった人。人間だよ」
ゴッ。
ガナシュはよろめいて頭を壁にぶつけてしまった。
「ガ……ガナシュ?」
「貴様が、そんなに手が早かったとは……」
「ひ、人聞き悪い事言うな! まるで誰彼構わず手ェ出すみたいじゃんか!!」
不死鳥は光の翼をぱたぱたさせながら猛抗議する。
「……でもアスカちゃん、それじゃその人はもう……」
魔獣と人間は、生きる時間が違う。
魔獣と添い遂げるには人間はあまりにも短命だ。
まして彼等が施設に捕らわれていた時代と今現在には、二百年ほどの時の流れがあった……というのがロキシーによって先日明かされたばかりだ。
そのロキシーは禁呪によって永らえているが、普通の人間には到底生きてはいられない。
「…………うん。でもそれより……ここに飛ばされる少し前に、彼女は死んだ。元々病弱だったから、子供産んだ時にね……」
そこまで語る黄金の瞳は哀しげに伏せられ、
「……けど、俺もカスミも幸せだったよ」
と上げた顔には芯の強さがうかがえた。
(そうか……アイツももう、いないんだな……)
ファングの脳裏に浮かんだのは、かつて自分が研究施設にいた頃出会った"彼"。
相棒とよく似た雰囲気の不思議な人間だったのだが……
「ってちょっと待て、今子供って……?」
「へ?……う、うん、一応……俺の……」
「フェ……フェニックス、貴様っ……」
照れ笑いをするアスカをわなわなと指差して、ガナシュは叫ぶ。
「ガキの作り方知ってたのかーーーーー!?」
「思いっきり失礼だなテメェーーーーー!!」
同じように育った幼馴染は、しばらく見ない間にいろいろあったようだ。
「ガナ君があんなに狼狽するの珍しいねぇ……面白いや☆」
「ふむ、相当ショックのようだな」
「アンタら……」
そんな騒ぎの中、傍観者達は呑気にお茶をすすっていた。
『……うん』
クリスタルのような石にガナシュが魔力を注ぎ込むと、それは仄かに輝きだす。
そして一瞬強く発光し、石は人の姿に変わった。
「確かにアスカだ……」
生き別れになった仲間の久し振りに見る姿にファングは思わずそう洩らした。
そんな事は、わかりきっていたのに。
「……魔石になっていたなんて……」
つまり彼……不死鳥『フェニックス』のアスカは、一度肉体の死を迎えているという事。
恐らくは、シリウス同様魔獣を研究していたあの施設で。
……今となっては、生きている魔獣の方が少ないのだろうか。
「アスカちゃんまで、そんな……」
先に実体化していたシリウスが哀しげに呟く。
ファング、ガナシュ、アスカの三人は幼馴染で昔はよく一緒に遊んでいた。
シリウスにとっては彼も我が子のように可愛がっていたし、そもそも子供が酷い目に遭うのは胸が痛むもの。
だがアスカはシリウスの視線に気付くと柔らかく微笑みかけた。
「シリウスさん、そんな顔しないで下さい。俺はこれで結構幸せだったんですから」
「幸せ……?」
そう尋ねると不死鳥はコクリと頷く。
「確かに、苦しい毎日だったけど……カスミに、……妻に、逢えたし」
「「「妻ぁ!?」」」
狼親子と火蜥蜴の声が見事にハモった。
それもそのはず、幻想界にいた頃はそんな話は全くなかったから。
「ちょ、ちょっと待てフェニックス……それは、一体いつどこで……」
「お前らが知らないんだからひとつしかないだろ?……あの施設で、オレの世話係みたいなモノだった人。人間だよ」
ゴッ。
ガナシュはよろめいて頭を壁にぶつけてしまった。
「ガ……ガナシュ?」
「貴様が、そんなに手が早かったとは……」
「ひ、人聞き悪い事言うな! まるで誰彼構わず手ェ出すみたいじゃんか!!」
不死鳥は光の翼をぱたぱたさせながら猛抗議する。
「……でもアスカちゃん、それじゃその人はもう……」
魔獣と人間は、生きる時間が違う。
魔獣と添い遂げるには人間はあまりにも短命だ。
まして彼等が施設に捕らわれていた時代と今現在には、二百年ほどの時の流れがあった……というのがロキシーによって先日明かされたばかりだ。
そのロキシーは禁呪によって永らえているが、普通の人間には到底生きてはいられない。
「…………うん。でもそれより……ここに飛ばされる少し前に、彼女は死んだ。元々病弱だったから、子供産んだ時にね……」
そこまで語る黄金の瞳は哀しげに伏せられ、
「……けど、俺もカスミも幸せだったよ」
と上げた顔には芯の強さがうかがえた。
(そうか……アイツももう、いないんだな……)
ファングの脳裏に浮かんだのは、かつて自分が研究施設にいた頃出会った"彼"。
相棒とよく似た雰囲気の不思議な人間だったのだが……
「ってちょっと待て、今子供って……?」
「へ?……う、うん、一応……俺の……」
「フェ……フェニックス、貴様っ……」
照れ笑いをするアスカをわなわなと指差して、ガナシュは叫ぶ。
「ガキの作り方知ってたのかーーーーー!?」
「思いっきり失礼だなテメェーーーーー!!」
同じように育った幼馴染は、しばらく見ない間にいろいろあったようだ。
「ガナ君があんなに狼狽するの珍しいねぇ……面白いや☆」
「ふむ、相当ショックのようだな」
「アンタら……」
そんな騒ぎの中、傍観者達は呑気にお茶をすすっていた。