~一方的な再会~

――その出会いはあまりにも鮮烈で、忘れようにも忘れられない。

 それどころか、事あるごとに脳裏に甦り、苦々しい気持ちを思い出させた。

『この中で"頭"は……貴様か?』

 突如現れた紅い旋風。
 そいつは不敵に笑うと、何でもない事のように呆気なく……


――――


「ま~た"あの時"のコト、思い出してんスかぁ?」
「……む」

 間延びした声が、青年の思考を現在へと引き戻した。

「判り易いんスよ隊長は…………眉間にシワ、寄ってやすよ~?」
「なっ……!!」

 からかうように言われて"隊長"はカァッと頬を紅潮させる。

「……仕方なかったんスよ、たぶん……ヤツの強さは次元が違う。そんな気がしやす」

 彼より幾つか年上に見える青年は、ポンと大きな手を隊長の肩に置いた。
「敵わなくて当然だ」と、諭すように。

「たぶん隊長どころか……アレに太刀打ち出来るヤツなんて、そういない」
「そうかも、しれないが……っ」

 立場とは裏腹に、聞き分けのない隊長に部下は苦笑する。

「その負けん気はいいんスけどね、さっきから仕事が手についてないっしょ?」
「……あ……」

 部下が示したのは、隊長の手元にある書類。
 先程から処理が進んでおらず、それどころかぐちゃぐちゃと幾つもの文字にならない線が、まるでミミズのようにのたくっていた。

「……気晴しに、出掛けやせんか?」
「だ……だが……、うわっ!?」

 言うが早いか部下は隊長の手を取り、インクの匂いが立ち込める部屋から外へと連れ出す。

「こ、こらシゲン!?……まだ職務が……!!」
「堅っ苦しいのはナシですぜ、キズナ隊長☆」

 その勢いのままに、二人は街へと繰り出すのだった。
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