~想い出の遺跡~

 宝が眠る場所、というのは大抵が入り組んだ迷宮だったり、魔物や罠によって侵入者を阻む難所となっている。

 今回一人のトレジャーハンターが挑んだ場所も、例に洩れずそういった所だった。

「ちっくしょー! やけに楽だと思ったら……」

 後ろからは凄まじい音と共に転がってくる、ゴツゴツした熱烈なファン……もとい大岩。

 逃げる途中も床から針山が突き出したり、左右の壁から弓矢が飛び出したり。

 そんなベタな罠の嵐の中を、トレジャーハンター……ルーツは駆け抜けていた。

「よっと!」

 脇に小部屋の入口を見つけて飛び込めば、大岩は目標を失いそのまま転がって行く。

「……はぁ~、助かったぜ……」

 無事やり過ごした事に安堵の息を吐き、ルーツはその場にしゃがみ込んだ。

……と。

『侵入者』

 無機質な音声が部屋に響く。
 感情の籠っていないそれに、ぞくりと青年の背筋を冷たいモノが走った。
 既に本能は危険を告げているが、髪と同じ黄金の瞳はその正体を確かめるべくゆっくりと振り返る。

 どうやらここもまた、罠のひとつらしい。
 侵入者を誘い込んで、仕留めるための部屋だ。

 開きっ放しだった部屋の入口はいつの間にか塞がり、ルーツの周りには異形の魔法生物達が取り囲んで。

『排除』

 平坦な声で、冷徹に言い放つ。

「やば……」

 絶体絶命、なんて言葉がこの上なく似合う場面で。

―ドゴォォォン!!―

 派手な音と共に、入口の扉が吹き飛ばされる。

「随分賑やかだと思って来てみれば……」

 巻き起こる風に白衣をはためかせ、傍らには雷の狼を従えて。

「妙な所で会ったな、ルーツ君。助太刀しようか」
「アンタは……」

 片眼鏡の学者……ロキシーは微笑みかけた。
1/4ページ
スキ