~記憶の鍵~

 その話題は、ふとした時に天才の口から零れた。

「ね、ファング達って小さい頃どんなだったの?」
「あ、それオレも知りたい!」

 金髪の子犬も興味津々でそれに食いつく。

 ファングとガナシュは何とも言えないような表情で互いの顔を見た。

「……どんな、って……」
「…………それは……」

 人よりずっと長い時を生きる魔獣も、何も生まれた時から今の彼らのような姿ではないだろう。

「その頃の姿になってみたらどうだね?」
「「!」」

 音もなく背後から間に割り込む白衣の片眼鏡に、慌ててファング達は飛び退いた。

(こ、この男、また気配が……!?)

 慄く火蜥蜴に薄い微笑みを向けて、ロキシーは口を開く。

「私の記憶が正しければ……魔獣は成人を迎えると人間時の姿をある程度自在に変えられるときく。少年の姿になるくらい容易いだろう?」
「そうなの?」

 すらすらと述べる友人にクレインが素直に驚いている。
 どうやら彼にも知らない話らしい。

「その通りだが……やけに魔獣に詳しいな」
「……人より知識に貪欲なモノでな」

 そう言って、訝るアイスブルーのまなざしを躱す。
 軽く流され不満を覚える氷狼だったが、既に二人の興味が自分達に向けられている事に気付き、やれやれと頭を掻いた。

「ファング達の子供時代、見たい!」
「見た~い☆」

 好奇心に輝く黄金と紫の瞳。
 さらにロキシーも面白そうにその様子を眺めている。

「ったく、宴会芸じゃないんだぞ……」
「ふん……何が面白いんだか、良くわからんな」

 ぶつくさと文句を言いながら、魔獣達は目を閉じて意識を集中させた。
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