おまけ
シャワーの水音が聞こえる。使っているのは部屋の主だ。
『逃げるなら今の内だぞ』そう言って始は浴室へと向かって行った。俺の話も聞かず、言い捨てもいいところだ。
「逃げる、かぁ……」
つまり、“そういうこと”をするという意味だろう。さすがにそれが分からないほど初心では無い。
始と恋人という関係になってから、いつかはこの日が来ると分かっていた。その為にいろいろ調べたし、あまり言いたくないが準備だってしてきたのだ。それを今更、逃げる?
「……馬鹿じゃない? そもそも逃がす気なんてないでしょ」
本当に嫌がれば始は俺に無理をさせることはしないと思う。だけど、俺が嫌がっているわけじゃないのだから、逃がす気なんてさらさらないくせに、あの発言は一体どういう意味なんだろう。
心臓がうるさく音を立てる。いつの間にか水音は聞こえなくなっていて、気づいた時にはバスローブ姿の始が俺の前に立っていた。
「逃げなかったのか」
ゆるく弧を描いた唇は、どこか嬉しそうにも見える。
始ばかり余裕みたいで悔しくて、どくどくと早まる鼓動を抑えつけて、俺もにこりと笑ってみせた。
「俺が始から逃げられるわけないでしょ」
笑って言うと、始は勢いよく俺の体を押し倒した。ベッドがぎしっと軋む音を立てる。
押し倒されたという認識が出来る前に、始の唇が俺の唇に押し当てられた。いつもするキスとは違う、荒々しくてひたすらに求めあうキス。熱が高まって、呼吸する音が、息が、どちらのものなのか分からなくなってしまう。
ようやく離されたころにはお互いの顔が真っ赤になっていて。
「一晩中付き合ってもらうぞ、はぁる」
恐ろしいほどの始の色香が俺の全てを支配した。
『逃げるなら今の内だぞ』そう言って始は浴室へと向かって行った。俺の話も聞かず、言い捨てもいいところだ。
「逃げる、かぁ……」
つまり、“そういうこと”をするという意味だろう。さすがにそれが分からないほど初心では無い。
始と恋人という関係になってから、いつかはこの日が来ると分かっていた。その為にいろいろ調べたし、あまり言いたくないが準備だってしてきたのだ。それを今更、逃げる?
「……馬鹿じゃない? そもそも逃がす気なんてないでしょ」
本当に嫌がれば始は俺に無理をさせることはしないと思う。だけど、俺が嫌がっているわけじゃないのだから、逃がす気なんてさらさらないくせに、あの発言は一体どういう意味なんだろう。
心臓がうるさく音を立てる。いつの間にか水音は聞こえなくなっていて、気づいた時にはバスローブ姿の始が俺の前に立っていた。
「逃げなかったのか」
ゆるく弧を描いた唇は、どこか嬉しそうにも見える。
始ばかり余裕みたいで悔しくて、どくどくと早まる鼓動を抑えつけて、俺もにこりと笑ってみせた。
「俺が始から逃げられるわけないでしょ」
笑って言うと、始は勢いよく俺の体を押し倒した。ベッドがぎしっと軋む音を立てる。
押し倒されたという認識が出来る前に、始の唇が俺の唇に押し当てられた。いつもするキスとは違う、荒々しくてひたすらに求めあうキス。熱が高まって、呼吸する音が、息が、どちらのものなのか分からなくなってしまう。
ようやく離されたころにはお互いの顔が真っ赤になっていて。
「一晩中付き合ってもらうぞ、はぁる」
恐ろしいほどの始の色香が俺の全てを支配した。
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