6. confession(始春)
誰もいなくなった共有ルーム、ソファの上には王様もとい始が腕組をして俺を見ている。
つい先程までは他のメンバーもここにいて、みんなで懺悔タイムをしていた。駆が話して、新が話して、俺に話が振られたもんだから冗談交じりに「無事では済まない気がするからやめとく」なんて言ったのが間違いだった。
「へぇ? そこへ直れ」
絶対零度の始の目に、下の子たちは一目散に共有ルームから逃げ出していった。【残念、逃げられない!】なんてゲームの画面のような文字が頭に浮かぶ。
とりあえず素直に正座してゆっくりと始の顔を見上げる。始の綺麗すぎる顔は無表情なだけで凄みを増す。
「で? 何をしたんだ?」
口角は上がっているのに目は笑っていない。内容によってはアイアンクローを食らわせられる可能性もありそうだ。
さて、何を懺悔すればいいのだろうか。ちょっとした悪戯は大体始に見つかっているし、本気で始を怒らせるようなことはさすがにするわけがない。ここ最近自分の行動を思い返してみても本当に懺悔する内容なんて……。
「あ」
「あ?」
……あった、一つだけ。けれどこれはとても言いづらい。
「や、やっぱ、なんでも」
「あるんだな」
始の圧に負けて首を縦に振るしか道は無くなった。早く言えと促す目に、顔が熱くなるのを感じながら唇を開く。赤くなった顔を見られないように顔を俯かせて。
「その、始が撮影とかで居ない時に、」
「何だ」
「……勝手に部屋に入って、始の服を借りてました」
「借りて、何をしてたんだ?」
「それ、はっ」
ばっと顔を上げると、にやり意地悪気に笑う始が視界に映る。
どう見たって怒ってなんかいないし、俺の言葉の意味をすべて理解したうえでわざわざ俺に言わそうとしている。
だから言いたくなかったのだ。黙っていればバレなかったのに、そうは思っても迂闊な事を言ったのは自分で最終的にバラしたのも自分。後悔先に立たずとはよく言ったものだ。
分かっているのに、言ってしまうのは惚れた弱みなのかもしれない。
「一人、で、えっちなことを、する、のに、使って、ました」
「……」
突き刺さる視線が痛い。何か言って欲しいと声に出す前に、三日月のような美しい弧を描いた唇が俺の名前を紡ぐ。
「春」
金縛りにあったように体が固まる。
俺はこんな笑顔の始をよく知っている。よからぬことを企んでいる時の顔だ。そしてこの笑顔からはどう足掻いたって逃げられないことも身を持って知っている。
「それ、どんな風にしていたのか詳しく教えてもらおうか? はぁる」
「えっ、いや、それは」
「拒否権は無い。ほら俺の部屋に行くぞ」
ソファから立ち上がって、始は俺の腕を引っ張る。よろける足は正座のせいで軽く痺れている。
どこか楽しそうに俺を引っ張る始に、朝まで逃げられないことを思い知らされながら痺れる足で付いて行った。
つい先程までは他のメンバーもここにいて、みんなで懺悔タイムをしていた。駆が話して、新が話して、俺に話が振られたもんだから冗談交じりに「無事では済まない気がするからやめとく」なんて言ったのが間違いだった。
「へぇ? そこへ直れ」
絶対零度の始の目に、下の子たちは一目散に共有ルームから逃げ出していった。【残念、逃げられない!】なんてゲームの画面のような文字が頭に浮かぶ。
とりあえず素直に正座してゆっくりと始の顔を見上げる。始の綺麗すぎる顔は無表情なだけで凄みを増す。
「で? 何をしたんだ?」
口角は上がっているのに目は笑っていない。内容によってはアイアンクローを食らわせられる可能性もありそうだ。
さて、何を懺悔すればいいのだろうか。ちょっとした悪戯は大体始に見つかっているし、本気で始を怒らせるようなことはさすがにするわけがない。ここ最近自分の行動を思い返してみても本当に懺悔する内容なんて……。
「あ」
「あ?」
……あった、一つだけ。けれどこれはとても言いづらい。
「や、やっぱ、なんでも」
「あるんだな」
始の圧に負けて首を縦に振るしか道は無くなった。早く言えと促す目に、顔が熱くなるのを感じながら唇を開く。赤くなった顔を見られないように顔を俯かせて。
「その、始が撮影とかで居ない時に、」
「何だ」
「……勝手に部屋に入って、始の服を借りてました」
「借りて、何をしてたんだ?」
「それ、はっ」
ばっと顔を上げると、にやり意地悪気に笑う始が視界に映る。
どう見たって怒ってなんかいないし、俺の言葉の意味をすべて理解したうえでわざわざ俺に言わそうとしている。
だから言いたくなかったのだ。黙っていればバレなかったのに、そうは思っても迂闊な事を言ったのは自分で最終的にバラしたのも自分。後悔先に立たずとはよく言ったものだ。
分かっているのに、言ってしまうのは惚れた弱みなのかもしれない。
「一人、で、えっちなことを、する、のに、使って、ました」
「……」
突き刺さる視線が痛い。何か言って欲しいと声に出す前に、三日月のような美しい弧を描いた唇が俺の名前を紡ぐ。
「春」
金縛りにあったように体が固まる。
俺はこんな笑顔の始をよく知っている。よからぬことを企んでいる時の顔だ。そしてこの笑顔からはどう足掻いたって逃げられないことも身を持って知っている。
「それ、どんな風にしていたのか詳しく教えてもらおうか? はぁる」
「えっ、いや、それは」
「拒否権は無い。ほら俺の部屋に行くぞ」
ソファから立ち上がって、始は俺の腕を引っ張る。よろける足は正座のせいで軽く痺れている。
どこか楽しそうに俺を引っ張る始に、朝まで逃げられないことを思い知らされながら痺れる足で付いて行った。