2. あなたがかけた解けない魔法(隼春)
その日の事はよく覚えている。
酷い嵐の日だったとか溶けそうなくらい暑い日だったとかそういうわけでは無く、穏やかな休日の一日で、ともすれば取り立てて特徴の無い何気ない一日になっていた可能性もあった。
その日の俺は海がお土産にとくれた茶葉で紅茶を淹れていて、匂いにつられたと上の階から隼が降りて来て一緒にお茶会をすることになった。
海のお土産のお茶と、お供には葵くんが焼いてくれたクッキーで二人だけのお茶会は優雅に始まった。
「春は、始が好きなんでしょ? 恋愛的な意味で」
他愛の無い会話をしていた時に突然隼が爆弾を落としてきた。持っていたティーカップをあわや落としかけた俺に、隼はくすりと笑う。
「そんなに驚くとは思わなかったよ」
「そりゃ驚くよ……というか、何でそう思ったの?」
「う~ん……ほら、僕は始クラスタだから」
理由になっていないと思いながらも否定することは出来なかった。確かにその時、俺は始に対して他の人とは違う感情を抱いていたからだ。ただ、それが恋愛の方向なのかは自分でも分かっていなくて、だから隼に言われたとき他人からはそう見えるのかと思って。
――頷いてしまったのだ。
「ふふふ、やっぱりそうなんだね。そんな春に僕からおまじないをかけてあげよう」
「おまじない? 何の?」
「好きな人と結ばれるおまじない」
まるで小学生のようなおまじないの内容に、半信半疑でかけてもらう。隼は満足そうに笑って、その場ではそれ以上話題が続くことは無かった。
そしてその日からずっと、俺はただ一人の事を想い続けている。
思えばおかしかったのだ。あの隼が、始クラスタである隼が俺の応援をするなんて。もちろん、隼は始に対して恋愛感情は抱いていないし、純粋に俺を応援するためにあんなことをしてくれたのかもしれない。でもそれならば、俺が結ばれたいと思うのは、
「……ねぇ、隼」
「なぁに?」
あの日からずっと、隼の事しか見えない、なんて。
酷い嵐の日だったとか溶けそうなくらい暑い日だったとかそういうわけでは無く、穏やかな休日の一日で、ともすれば取り立てて特徴の無い何気ない一日になっていた可能性もあった。
その日の俺は海がお土産にとくれた茶葉で紅茶を淹れていて、匂いにつられたと上の階から隼が降りて来て一緒にお茶会をすることになった。
海のお土産のお茶と、お供には葵くんが焼いてくれたクッキーで二人だけのお茶会は優雅に始まった。
「春は、始が好きなんでしょ? 恋愛的な意味で」
他愛の無い会話をしていた時に突然隼が爆弾を落としてきた。持っていたティーカップをあわや落としかけた俺に、隼はくすりと笑う。
「そんなに驚くとは思わなかったよ」
「そりゃ驚くよ……というか、何でそう思ったの?」
「う~ん……ほら、僕は始クラスタだから」
理由になっていないと思いながらも否定することは出来なかった。確かにその時、俺は始に対して他の人とは違う感情を抱いていたからだ。ただ、それが恋愛の方向なのかは自分でも分かっていなくて、だから隼に言われたとき他人からはそう見えるのかと思って。
――頷いてしまったのだ。
「ふふふ、やっぱりそうなんだね。そんな春に僕からおまじないをかけてあげよう」
「おまじない? 何の?」
「好きな人と結ばれるおまじない」
まるで小学生のようなおまじないの内容に、半信半疑でかけてもらう。隼は満足そうに笑って、その場ではそれ以上話題が続くことは無かった。
そしてその日からずっと、俺はただ一人の事を想い続けている。
思えばおかしかったのだ。あの隼が、始クラスタである隼が俺の応援をするなんて。もちろん、隼は始に対して恋愛感情は抱いていないし、純粋に俺を応援するためにあんなことをしてくれたのかもしれない。でもそれならば、俺が結ばれたいと思うのは、
「……ねぇ、隼」
「なぁに?」
あの日からずっと、隼の事しか見えない、なんて。