11月と7月の両片思い戦争

 プロセラ共有ルームの外では、話し合いから外された隼と海が中の様子を伺っていた。

「なぁ、何の話してるんだ?」

 海は自分の前で中の様子を見る隼に問いかける。隼は後ろを振り向いてゆっくりと口角を上げた。

「どうやら、僕たちの話みたいだよ?」
「俺らの? だから俺ら抜きで楽しそうにやってるのか?」
「そうじゃないかな」

 わざわざ隼と海だけが仕事のある日に話し合いをしているのだから、恐らく聞かれるとまずい内容なのだろう。そう考えた海は少し寂しそうな表情をする。例えるなら、思春期の子供に拒絶された父親のような。
 しかし、隼の方はその内容を聞き取っていた。そしてそれは、概ね隼の予想通りだった。

「……ねぇ、海」
「ん?」

 無防備に呼びかけに返事する海に向かって、隼は笑みを浮かべたまま手を伸ばす。もとより近い距離にいたからか、すぐに隼の手は海の頬に触れた。
 するりと隼の指が海の輪郭をなぞる。

「隼?」

 自分の置かれている状況を理解できていない海は、不思議そうな表情で隼を見つめる。
 隼はふふっと笑って、指を海の口元へと持っていく。

「そろそろ、終わりにしようか」
「えっと、何をだ?」
「う~ん、そうだね……ロマンチストな海に気に入ってもらえるか分からないんだけど」

 ミステリアスな隼の発言に海はどういう意味かと追究しようとするが、隼の指がそれを制止する。
 海の唇に人差し指を押し当てたまま、隼は海の耳元へと顔を寄せた。

「僕と、恋人になってくれませんか?」
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