11月と7月の両片思い戦争
俺は結構最近の話なんだけど。
この前、始さんに失敗作の煮物をつまみ食いされた話したじゃない? あれで、隼さんが『僕も始につまみ食いされたい!』とか言って料理をしようとしてた……あぁ、皆覚えてるよね。
その話はあの時で終わったんだけどさ、次の日共有ルームのキッチンに海さんが立ってたんだ。
いつもみたいにカップラーメンを作ろうとしてたのかなって思って、注意しようと見に行ったらね……海さんの前には生クリームがあった。
「海さん?」
「おぉ、夜。丁度いい所に」
「えっと、どうしたんですか?」
「今から大福作ろうとしてたんだけどさ」
……落ち着いて陽。俺も全く同じ反応したから。
そりゃもう、俺もびっくりしてすぐに理由を聞いたよ。
「どうして、急に大福を……?」
「んーと、説明するのはちょっち恥ずかしいんだが」
照れながらも海さんは話してくれたんだけど、第一声に隼って出た瞬間にあぁ……って思ったよ。
「隼がこの間、料理に挑戦しようとしてただろ? でも、さすがにあいつに料理をさせるのは怖いから」
「それは間違いないです」
「あはは。だからさ、俺が代わりに料理できるようになろうと思って!」
言ってること恋人っぽいなって思ったけど、ここで一つ気になったことがあった。そう、何故大福なのか。
あとついでに、大福を作るのに何故生クリームを前にしているのか。もちろん、それも聞いたよ。そしたらね……
「あぁ、まずは紅茶に合うお菓子作りから始めようかなって思ったんだ」
隼さんの事しか考えてないのかなってなったよね……。
「じゃあ、生クリームの理由は……?」
「生クリーム大福ってあるだろ? あんこよりクリームの方が紅茶に合うんじゃないかと!」
俺と始さんの話からここまで飛躍できる海さんを改めて尊敬しつつ、俺はそれ以上聞くのを止めた。
だって、これ以上聞いても海さんから隼さんへの想いを聞かされるだけだったからね。
あ、でもその代わり海さんの大福作りは手伝ったよ! その時作った分は海さんが持って行っちゃったけど、今朝余った材料で抹茶クリーム大福作ったから食べる?
*****
話し終わってすぐ、夜はキッチンのほうに向かう。冷蔵庫から作ったという一口サイズの大福をお皿に並べ、四人で囲む机の上に置いた。
物欲しそうに見つめるアニマルズをよそに、それぞれ夜の作った大福を口にする。
「夜、美味しい」
「美味しいです! 夜さん」
「本当? よかったぁ」
「さすが夜。美味い」
口々に美味しいと言う三人に、夜は安堵の息を漏らす。
大福のおかげで共有ルームの空気は先程よりも柔らかくなっていた。大福をごくりと飲み込んだ涙が徐に手を挙げる。
「次は僕ね」
この前、始さんに失敗作の煮物をつまみ食いされた話したじゃない? あれで、隼さんが『僕も始につまみ食いされたい!』とか言って料理をしようとしてた……あぁ、皆覚えてるよね。
その話はあの時で終わったんだけどさ、次の日共有ルームのキッチンに海さんが立ってたんだ。
いつもみたいにカップラーメンを作ろうとしてたのかなって思って、注意しようと見に行ったらね……海さんの前には生クリームがあった。
「海さん?」
「おぉ、夜。丁度いい所に」
「えっと、どうしたんですか?」
「今から大福作ろうとしてたんだけどさ」
……落ち着いて陽。俺も全く同じ反応したから。
そりゃもう、俺もびっくりしてすぐに理由を聞いたよ。
「どうして、急に大福を……?」
「んーと、説明するのはちょっち恥ずかしいんだが」
照れながらも海さんは話してくれたんだけど、第一声に隼って出た瞬間にあぁ……って思ったよ。
「隼がこの間、料理に挑戦しようとしてただろ? でも、さすがにあいつに料理をさせるのは怖いから」
「それは間違いないです」
「あはは。だからさ、俺が代わりに料理できるようになろうと思って!」
言ってること恋人っぽいなって思ったけど、ここで一つ気になったことがあった。そう、何故大福なのか。
あとついでに、大福を作るのに何故生クリームを前にしているのか。もちろん、それも聞いたよ。そしたらね……
「あぁ、まずは紅茶に合うお菓子作りから始めようかなって思ったんだ」
隼さんの事しか考えてないのかなってなったよね……。
「じゃあ、生クリームの理由は……?」
「生クリーム大福ってあるだろ? あんこよりクリームの方が紅茶に合うんじゃないかと!」
俺と始さんの話からここまで飛躍できる海さんを改めて尊敬しつつ、俺はそれ以上聞くのを止めた。
だって、これ以上聞いても海さんから隼さんへの想いを聞かされるだけだったからね。
あ、でもその代わり海さんの大福作りは手伝ったよ! その時作った分は海さんが持って行っちゃったけど、今朝余った材料で抹茶クリーム大福作ったから食べる?
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話し終わってすぐ、夜はキッチンのほうに向かう。冷蔵庫から作ったという一口サイズの大福をお皿に並べ、四人で囲む机の上に置いた。
物欲しそうに見つめるアニマルズをよそに、それぞれ夜の作った大福を口にする。
「夜、美味しい」
「美味しいです! 夜さん」
「本当? よかったぁ」
「さすが夜。美味い」
口々に美味しいと言う三人に、夜は安堵の息を漏らす。
大福のおかげで共有ルームの空気は先程よりも柔らかくなっていた。大福をごくりと飲み込んだ涙が徐に手を挙げる。
「次は僕ね」