11月と7月の両片思い戦争
確か、二週間前の事です。俺は大学での講義を終えて、その後特に何も無かったので普通に寮に帰りました。
時間は……15時頃だったかな。その日は俺以外の皆は仕事だと聞いてたんで、誰もいないだろうと思って共有ルームには寄らずに自分の部屋に行こうとしたんです。
でもいざ三階に到着したら、共有ルームから声が聞こえて来て。誰か早く仕事を終えたのかなぁと思って特に確かめもせずに共有ルームに入りました。そうしたら……
……いたんですよ、あの二人が。しかもものすごい状態で。
「あ、いっくん。おかえり」
俺の姿をすぐに捉えた隼さんはにこやかに挨拶をしてきました。続いて海さんも俺に気付いたみたいで、「おかえり」って明るく言ってくれました。
でも、おかしいんですよ。何がって、二人の体勢が。
共有ルームの隼さんお気に入りのソファの上で、海さんが寝転んでいて隼さんがそれに覆いかぶさってるんです。
「……えっと、お二人何やってるんですか……?」
当然聞きました。本当はすごく逃げたかったですけど。
隼さんは海さんの上に乗ったまま、俺に向かってさらににこやかに笑いました。
「海を襲ってるんだ」
完全に魔王様のそれでした。
まぁ、でもそれ言われたらついにって思うじゃないですか。そしたら案の定ですよ。
「お~い、郁をからかったらダメだろ。隼」
―やっぱりか、って思いましたよね。鈍感海さんが俺の誤解……まぁ、海さんの勘違いなんですけど。それを解くようにすぐにこの状況を説明してくれました。
「いや、さっきな、撮影でお互いをくすぐるっていうのがあったんだけど。俺はめっちゃ笑ってたのに隼は笑わなかったから、俺も我慢できるようになろうと思って特訓してたんだ」
「……うん、そういうことだよ」
つまり、海さんの説明から分かったのは、たった二人きりの共有ルームで隼さんが海さんをくすぐっていたと、そういうことでした。
……うん、そうですよ。絶対そう思ってるの海さんだけで、隼さんは下心あったと思います。
だってその後、隼さん俺がいるのに海さんくすぐり始めましたからね!?
「ひゃっ、しゅ、んあはは、やめろ、ってぇ」
「かぁい。ここ弱いよね」
さすがに逃げました。その後どうなったのかは知りませんけど、あれでまだ付き合ってないのが不思議です……。
*****
「ほんと、隼は……」
郁の話を聞き終わった陽が、苦々しい顔でそう呟く。どこからかやってきたマゼランがそっと陽の膝に羽を乗せた。
「でも、気づかない海さんもすごいよね」
「海は自分の事になるとびっくりするぐらい鈍感だからね」
「災難でした……」
ため息をつく郁を慰めるように、涙が頭を撫でる。涙の行為に癒されたのか、郁は破顔した表情を見せる。
その様子を微笑ましく見ていた夜が、「次は俺が話すね」と三人に向かって声をかけた。
時間は……15時頃だったかな。その日は俺以外の皆は仕事だと聞いてたんで、誰もいないだろうと思って共有ルームには寄らずに自分の部屋に行こうとしたんです。
でもいざ三階に到着したら、共有ルームから声が聞こえて来て。誰か早く仕事を終えたのかなぁと思って特に確かめもせずに共有ルームに入りました。そうしたら……
……いたんですよ、あの二人が。しかもものすごい状態で。
「あ、いっくん。おかえり」
俺の姿をすぐに捉えた隼さんはにこやかに挨拶をしてきました。続いて海さんも俺に気付いたみたいで、「おかえり」って明るく言ってくれました。
でも、おかしいんですよ。何がって、二人の体勢が。
共有ルームの隼さんお気に入りのソファの上で、海さんが寝転んでいて隼さんがそれに覆いかぶさってるんです。
「……えっと、お二人何やってるんですか……?」
当然聞きました。本当はすごく逃げたかったですけど。
隼さんは海さんの上に乗ったまま、俺に向かってさらににこやかに笑いました。
「海を襲ってるんだ」
完全に魔王様のそれでした。
まぁ、でもそれ言われたらついにって思うじゃないですか。そしたら案の定ですよ。
「お~い、郁をからかったらダメだろ。隼」
―やっぱりか、って思いましたよね。鈍感海さんが俺の誤解……まぁ、海さんの勘違いなんですけど。それを解くようにすぐにこの状況を説明してくれました。
「いや、さっきな、撮影でお互いをくすぐるっていうのがあったんだけど。俺はめっちゃ笑ってたのに隼は笑わなかったから、俺も我慢できるようになろうと思って特訓してたんだ」
「……うん、そういうことだよ」
つまり、海さんの説明から分かったのは、たった二人きりの共有ルームで隼さんが海さんをくすぐっていたと、そういうことでした。
……うん、そうですよ。絶対そう思ってるの海さんだけで、隼さんは下心あったと思います。
だってその後、隼さん俺がいるのに海さんくすぐり始めましたからね!?
「ひゃっ、しゅ、んあはは、やめろ、ってぇ」
「かぁい。ここ弱いよね」
さすがに逃げました。その後どうなったのかは知りませんけど、あれでまだ付き合ってないのが不思議です……。
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「ほんと、隼は……」
郁の話を聞き終わった陽が、苦々しい顔でそう呟く。どこからかやってきたマゼランがそっと陽の膝に羽を乗せた。
「でも、気づかない海さんもすごいよね」
「海は自分の事になるとびっくりするぐらい鈍感だからね」
「災難でした……」
ため息をつく郁を慰めるように、涙が頭を撫でる。涙の行為に癒されたのか、郁は破顔した表情を見せる。
その様子を微笑ましく見ていた夜が、「次は俺が話すね」と三人に向かって声をかけた。