30日目:僕の弱点イコール君(隼海)
僕は今まで何かに執着したことが無い。
たいていの事は望めば手に入ったし、勉強も運動も人より出来る方だった。何かに固執することなく、つまらない人生を歩んでいたのだと思う。
可愛らしい白兎のお姫様に出会ってから、そんな人生は一変したけど。
「本当、何が起こるか分からないよねぇ」
独り言を呟いて、隣で眠る男の髪を触る。
最初は始に惹かれてこの世界に足を踏み入れたけど、そこで海という存在に出会ったのは僕にとって嬉しい誤算だった。
榊さんに似て世話好きの海、だけどそれだけじゃない海の魅力は彼を知る度に増えていった。そんな海に惹かれていったのは必然だったのかもしれない。
海に告白して、受け入れてもらって、晴れて恋人になった今でも毎日海に惹かれている。
「ねぇ、かぁい」
きっと君は知らない。僕がどれだけ海に執着しているのか。
「僕は海を失うことが怖いんだ」
夢の中にいる海に僕の声は届いていない。
外国ロケから帰ってきた海は疲れていたのか、僕に会ってからそのまま倒れるように眠ってしまった。自分のベッドの上で幸せそうに恋人が眠る姿は据え膳状態だが、起こすのも可哀想なので隣で添い寝をする。
寝ているからか触っても特に反応が無いので、だんだん楽しくなって髪を触る手を止め代わりにキスを落とす。
短い髪から額へ、眉間にと少しずつ下に向かっていく。閉じられた瞼の上、鼻、頬、耳、そして唇。
柔らかい唇を啄むようにキスをする。何度も繰り返していれば海が少し反応した。
「起きた?」
しかし、それに答えは返ってこない。どうやらまだ眠っているようだ。
今度は少し長めに唇を重ねる。閉じられた唇を少しだけ舌でなぞれば、海の体がぴくりと動いた。
「んっ……」
「おや、キスでお目覚めかな?」
「あ……隼か……」
眠そうにしながら海は僕の方を見て、ふにゃりと笑う。これ以上僕を好きにさせて、海はどうするつもりなのだろう。
「ごめんね、起こしちゃったみたい」
「ん、だいじょうぶ」
「ふふふ、もうちょっと眠る?」
「いや、もう起きるよ。せっかく隼と一緒のオフなのに寝てばっかは嫌だしな~」
あははと笑う海に、僕の心にまた好きが生まれていく。溢れてだす恋心は僕の体を埋め尽くしていく。
起き上がろうとする海の頭を引き寄せ、先程と同じように唇を重ねてみれば、開いた海の唇の中に舌を侵入させることが出来た。
不意打ちが上手くいき満足して唇を離せば、真っ赤な顔をした海が僕の視界に映る。
「なっ、びっくりした」
「ふふっか~わいい」
「も~お前なぁ……」
呆れ顔をして海はベッドから起き上がる。
ベッドを下りて隼を見る海の姿は、すっかりいつも通りだ。
「あ、紅茶飲む? お土産に買ってきたんだ」
「いいね。よろしく、海」
海は僕の言葉ににかっと笑って台所の方へと向かう。
僕は海の背中を見つめながら、また生まれ出た好きをこぼさないように飲み込んだ。
たいていの事は望めば手に入ったし、勉強も運動も人より出来る方だった。何かに固執することなく、つまらない人生を歩んでいたのだと思う。
可愛らしい白兎のお姫様に出会ってから、そんな人生は一変したけど。
「本当、何が起こるか分からないよねぇ」
独り言を呟いて、隣で眠る男の髪を触る。
最初は始に惹かれてこの世界に足を踏み入れたけど、そこで海という存在に出会ったのは僕にとって嬉しい誤算だった。
榊さんに似て世話好きの海、だけどそれだけじゃない海の魅力は彼を知る度に増えていった。そんな海に惹かれていったのは必然だったのかもしれない。
海に告白して、受け入れてもらって、晴れて恋人になった今でも毎日海に惹かれている。
「ねぇ、かぁい」
きっと君は知らない。僕がどれだけ海に執着しているのか。
「僕は海を失うことが怖いんだ」
夢の中にいる海に僕の声は届いていない。
外国ロケから帰ってきた海は疲れていたのか、僕に会ってからそのまま倒れるように眠ってしまった。自分のベッドの上で幸せそうに恋人が眠る姿は据え膳状態だが、起こすのも可哀想なので隣で添い寝をする。
寝ているからか触っても特に反応が無いので、だんだん楽しくなって髪を触る手を止め代わりにキスを落とす。
短い髪から額へ、眉間にと少しずつ下に向かっていく。閉じられた瞼の上、鼻、頬、耳、そして唇。
柔らかい唇を啄むようにキスをする。何度も繰り返していれば海が少し反応した。
「起きた?」
しかし、それに答えは返ってこない。どうやらまだ眠っているようだ。
今度は少し長めに唇を重ねる。閉じられた唇を少しだけ舌でなぞれば、海の体がぴくりと動いた。
「んっ……」
「おや、キスでお目覚めかな?」
「あ……隼か……」
眠そうにしながら海は僕の方を見て、ふにゃりと笑う。これ以上僕を好きにさせて、海はどうするつもりなのだろう。
「ごめんね、起こしちゃったみたい」
「ん、だいじょうぶ」
「ふふふ、もうちょっと眠る?」
「いや、もう起きるよ。せっかく隼と一緒のオフなのに寝てばっかは嫌だしな~」
あははと笑う海に、僕の心にまた好きが生まれていく。溢れてだす恋心は僕の体を埋め尽くしていく。
起き上がろうとする海の頭を引き寄せ、先程と同じように唇を重ねてみれば、開いた海の唇の中に舌を侵入させることが出来た。
不意打ちが上手くいき満足して唇を離せば、真っ赤な顔をした海が僕の視界に映る。
「なっ、びっくりした」
「ふふっか~わいい」
「も~お前なぁ……」
呆れ顔をして海はベッドから起き上がる。
ベッドを下りて隼を見る海の姿は、すっかりいつも通りだ。
「あ、紅茶飲む? お土産に買ってきたんだ」
「いいね。よろしく、海」
海は僕の言葉ににかっと笑って台所の方へと向かう。
僕は海の背中を見つめながら、また生まれ出た好きをこぼさないように飲み込んだ。