29日目:どんな私がお好みで?(年長海)
「なぁ、どういう事なんだこれ……」
ロケを終えて寮に帰ってきた海は、ただただ困惑していた。
帰宅早々春に拉致され、連れてこられたのは何故か隼の部屋で。入ってみれば部屋の主だけでなく、始の姿もあって。
なんだかよく分からないままに海は座らされ、三人に囲まれていた。どことなく三人とも目がぎらついているように見えるのは気のせいだろうか。
「誰か答えてくれよ」
誰か、と言いながら海は春の方を見る。こんな時一番喋ってくれそうなのは春だからだ。
海の予想通り、春はうっと声を漏らしてそのまま事の次第を説明しようとした。しかし、隼がそんな春を制止する。
「その前に、海」
にっこり微笑む魔王様、隼の笑顔は海の背筋を凍らせる。
「ちょっと、僕たちと遊ぼう?」
そう言って隼はじわりじわりと海に近づいていく。
逃げようと海が後ろへ行こうとすれば、始が海の両腕を掴んだ。
「悪いな、海。今日は付き合ってもらうぞ」
振り向けばにやり笑う王様の姿。救いを求めるように春の方を見れば、春は春で胡散臭い笑顔をしていた。
海はようやく今の自分の状況の危険さを理解した。ここに海の味方はいない。それどころか海を狙う敵ばかりだ。
視線を前に戻せば、隼が海の方へ手を伸ばしていた。
「大人しくしててね?」
隼がパチンと指を鳴らしたところで、海の意識は途切れた。
*****
「おはよう、かぁい」
海が意識を取り戻した時、隼の声が聞こえた。きょろきょろと視線をめぐらすと、始と春も海に向かって微笑みかけている。
「あ、あぁ、おはよう……? 俺、何してたっけ……」
海は現状を理解できないまま体を起こす。おかしい事に気づいたのはその時だ。
「…………あれ?」
海の記憶が正しければ、意識を無くす前普通にシャツとデニムを着用していたはず。部屋着に着替えていたとしても、今の格好は説明がつかない。
海は顔をひきつらせながら、頭を触る。そこには無いはずの耳が生えていた。
「おい、隼。どういう事だ……?」
「どういう事って、見たまんまだよ。バニーガール、いやこの場合はバニーボーイかな? キュートかつセクシー素晴らしいね!」
隼の発言に海は慌てて自分の全身を確認する。
確かに着用している服は、バニーガールのそれに近い。お尻の方に謎の違和感を抱いていたが、それは付けられた尻尾だった。
「海」
戸惑う海に始が声をかける。その顔はとても楽しげだ。
「そういう格好もいいな。エロい」
「え、いや、あの、始さん……?」
近づいてくる始を避けようとすると、横から春が海を抱きしめた。
そして、海の頭に生える長い耳に優しく触る。瞬間、海の体に電撃が走った。
「なっ、春」
「ふふっ、この耳と尻尾は本物なんだって。ふわふわで気持ちいいよ」
「ちょ、あんま触るな、っ」
「海、感じてるの?」
春は吐息混じりで海の本当の耳に囁く。そっちに気を取られているうちに始が海の尻尾を触る。
上と下からの感じたことのない快感に、海はだんだんと体に力が入らなくなっていく。
赤ら顔で元凶の方を見れば、いつものようにミステリアスな笑みを浮かべていた。
「僕らの知らない海を、もっと見せて」
抗わなきゃいけないのに海の体は言うことを聞かない。そうして重ねられた隼の唇を、ぼんやりとし始めた思考で受け入れたのだった。
ロケを終えて寮に帰ってきた海は、ただただ困惑していた。
帰宅早々春に拉致され、連れてこられたのは何故か隼の部屋で。入ってみれば部屋の主だけでなく、始の姿もあって。
なんだかよく分からないままに海は座らされ、三人に囲まれていた。どことなく三人とも目がぎらついているように見えるのは気のせいだろうか。
「誰か答えてくれよ」
誰か、と言いながら海は春の方を見る。こんな時一番喋ってくれそうなのは春だからだ。
海の予想通り、春はうっと声を漏らしてそのまま事の次第を説明しようとした。しかし、隼がそんな春を制止する。
「その前に、海」
にっこり微笑む魔王様、隼の笑顔は海の背筋を凍らせる。
「ちょっと、僕たちと遊ぼう?」
そう言って隼はじわりじわりと海に近づいていく。
逃げようと海が後ろへ行こうとすれば、始が海の両腕を掴んだ。
「悪いな、海。今日は付き合ってもらうぞ」
振り向けばにやり笑う王様の姿。救いを求めるように春の方を見れば、春は春で胡散臭い笑顔をしていた。
海はようやく今の自分の状況の危険さを理解した。ここに海の味方はいない。それどころか海を狙う敵ばかりだ。
視線を前に戻せば、隼が海の方へ手を伸ばしていた。
「大人しくしててね?」
隼がパチンと指を鳴らしたところで、海の意識は途切れた。
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「おはよう、かぁい」
海が意識を取り戻した時、隼の声が聞こえた。きょろきょろと視線をめぐらすと、始と春も海に向かって微笑みかけている。
「あ、あぁ、おはよう……? 俺、何してたっけ……」
海は現状を理解できないまま体を起こす。おかしい事に気づいたのはその時だ。
「…………あれ?」
海の記憶が正しければ、意識を無くす前普通にシャツとデニムを着用していたはず。部屋着に着替えていたとしても、今の格好は説明がつかない。
海は顔をひきつらせながら、頭を触る。そこには無いはずの耳が生えていた。
「おい、隼。どういう事だ……?」
「どういう事って、見たまんまだよ。バニーガール、いやこの場合はバニーボーイかな? キュートかつセクシー素晴らしいね!」
隼の発言に海は慌てて自分の全身を確認する。
確かに着用している服は、バニーガールのそれに近い。お尻の方に謎の違和感を抱いていたが、それは付けられた尻尾だった。
「海」
戸惑う海に始が声をかける。その顔はとても楽しげだ。
「そういう格好もいいな。エロい」
「え、いや、あの、始さん……?」
近づいてくる始を避けようとすると、横から春が海を抱きしめた。
そして、海の頭に生える長い耳に優しく触る。瞬間、海の体に電撃が走った。
「なっ、春」
「ふふっ、この耳と尻尾は本物なんだって。ふわふわで気持ちいいよ」
「ちょ、あんま触るな、っ」
「海、感じてるの?」
春は吐息混じりで海の本当の耳に囁く。そっちに気を取られているうちに始が海の尻尾を触る。
上と下からの感じたことのない快感に、海はだんだんと体に力が入らなくなっていく。
赤ら顔で元凶の方を見れば、いつものようにミステリアスな笑みを浮かべていた。
「僕らの知らない海を、もっと見せて」
抗わなきゃいけないのに海の体は言うことを聞かない。そうして重ねられた隼の唇を、ぼんやりとし始めた思考で受け入れたのだった。