16日目:寂しいからそばにいて(隼海)
「遅くまでお疲れさん。今日はゆっくり休めよ」
「ふふ、ありがとう。大も気を付けて」
「おう」
黒月の車を見送って、隼は伸びをしながら寮の入り口を通り抜けた。
エレベーターで三階まで向かい、そこから慣れた足取りで自分の部屋の前まで行く。
鍵をさしてがちゃりと回そうとすると、何故か閉まる方向にしか回らなかった。
「あれ、閉め忘れたかな」
鍵をそのまま引き抜いてドアノブを引くと、隼の予想通り扉が開いた。
不審に思いながらも、隼は部屋の中に入る。
ソファのある部屋を通り過ぎて、奥のベッドルームに直行するとそこは明らかに朝とは違った様子だった。
「うわぁ、すごい」
感心している場合ではないのだが、隼の口から零れたのはそんな言葉だった。
部屋の中心に置いてあるベッドの上には大量の洋服やタオルなどが山積みになっている。引っかきまわしたのかクローゼットは開けっ放しになっていた。
近づいてよく見れば、その山の中にはツキウサもいる。そして中心には愛しい恋人の寝顔が。
すうすうと寝息を立てている姿は、いつもより幼く見える。
「ふふふ、眠り姫、だね」
海の髪を隼は愛おしそうに撫でる。そうしながら、今の状況をようやく理解した。
オメガの習性に、巣作りというものがある。番になったアルファのものを集め自分の身の周りに固める行為だ。
オメガが巣作りをする時は、番のアルファを求めている時らしい。そして、巣作りをしているオメガはとても寂しがっているのだと隼は教わった。
ならば、隼がとる行為は一つだ。
「かぁい」
「……ん……?」
眠る海に声をかけ軽く揺さぶると、思っていたよりも早く海は反応した。眠りが浅かったようだ。
「おはよ、海」
「しゅん……?」
舌足らずな喋り方で海は隼の名前を呼ぶ。
今すぐ抱きしめたい気持ちを抑え、「そうだよ」と隼は答えた。
「海、これ作ったの?」
「うん……散らかして悪かったな……」
「何で謝るの。とても上手に出来てるよ」
隼が笑顔でそう言うと、海は嬉しそうにへにゃりと笑った。気の抜けた海の笑顔はとても可愛らしい。
余程嬉しかったのだろう、いつもしっかりしている海からは想像できない甘えるような声で隼の名前をもう一度呼んだ。
隼もそれに応えるように服の山をかきわけ海の隣に潜り込む。
「へへ、本物の隼だ」
「僕が恋しかった?」
「うん。隼が欲しくてたまらなかった」
笑顔の奥に見える、燃えるような熱情に隼の理性はぐらぐらと崩れていく。
今すぐ抱いてめちゃくちゃにしてしまいたい。けれども、せっかく海が隼を求めてくれているのだから、海の好きなようにさせてあげたい。隼の心は揺れていた。
「なぁ、隼」
「ん?」
「ずっと、俺のそばにいて」
海の声はどこか寂しそうだ。この巣を作っている間も、その前からも、隼がいなくて不安だったのだと声と表情で訴えかけている。
隼はそんな海を安心させるように両腕で優しく抱きしめる。
「もちろん。その為に海と番になったんだから」
「……ありがとう」
隼の心からの言葉に安心した海はふわり微笑んで、自分の上に乗っている服を横に除け始める。
先程よりもいくらかすっきりしたベッドの上で、海は隼の上に乗った。
「なぁ、シよう?」
そこにはもう寂しそうな姿は無くて。ただ、狂おしいほどの欲が海を支配している。
強烈な色香は、番というのを差し引いても隼を煽るには十分だった。
海の問いかけに言葉を返すことも無く、隼はすぐにその唇を自分ので塞いだ。
「ふふ、ありがとう。大も気を付けて」
「おう」
黒月の車を見送って、隼は伸びをしながら寮の入り口を通り抜けた。
エレベーターで三階まで向かい、そこから慣れた足取りで自分の部屋の前まで行く。
鍵をさしてがちゃりと回そうとすると、何故か閉まる方向にしか回らなかった。
「あれ、閉め忘れたかな」
鍵をそのまま引き抜いてドアノブを引くと、隼の予想通り扉が開いた。
不審に思いながらも、隼は部屋の中に入る。
ソファのある部屋を通り過ぎて、奥のベッドルームに直行するとそこは明らかに朝とは違った様子だった。
「うわぁ、すごい」
感心している場合ではないのだが、隼の口から零れたのはそんな言葉だった。
部屋の中心に置いてあるベッドの上には大量の洋服やタオルなどが山積みになっている。引っかきまわしたのかクローゼットは開けっ放しになっていた。
近づいてよく見れば、その山の中にはツキウサもいる。そして中心には愛しい恋人の寝顔が。
すうすうと寝息を立てている姿は、いつもより幼く見える。
「ふふふ、眠り姫、だね」
海の髪を隼は愛おしそうに撫でる。そうしながら、今の状況をようやく理解した。
オメガの習性に、巣作りというものがある。番になったアルファのものを集め自分の身の周りに固める行為だ。
オメガが巣作りをする時は、番のアルファを求めている時らしい。そして、巣作りをしているオメガはとても寂しがっているのだと隼は教わった。
ならば、隼がとる行為は一つだ。
「かぁい」
「……ん……?」
眠る海に声をかけ軽く揺さぶると、思っていたよりも早く海は反応した。眠りが浅かったようだ。
「おはよ、海」
「しゅん……?」
舌足らずな喋り方で海は隼の名前を呼ぶ。
今すぐ抱きしめたい気持ちを抑え、「そうだよ」と隼は答えた。
「海、これ作ったの?」
「うん……散らかして悪かったな……」
「何で謝るの。とても上手に出来てるよ」
隼が笑顔でそう言うと、海は嬉しそうにへにゃりと笑った。気の抜けた海の笑顔はとても可愛らしい。
余程嬉しかったのだろう、いつもしっかりしている海からは想像できない甘えるような声で隼の名前をもう一度呼んだ。
隼もそれに応えるように服の山をかきわけ海の隣に潜り込む。
「へへ、本物の隼だ」
「僕が恋しかった?」
「うん。隼が欲しくてたまらなかった」
笑顔の奥に見える、燃えるような熱情に隼の理性はぐらぐらと崩れていく。
今すぐ抱いてめちゃくちゃにしてしまいたい。けれども、せっかく海が隼を求めてくれているのだから、海の好きなようにさせてあげたい。隼の心は揺れていた。
「なぁ、隼」
「ん?」
「ずっと、俺のそばにいて」
海の声はどこか寂しそうだ。この巣を作っている間も、その前からも、隼がいなくて不安だったのだと声と表情で訴えかけている。
隼はそんな海を安心させるように両腕で優しく抱きしめる。
「もちろん。その為に海と番になったんだから」
「……ありがとう」
隼の心からの言葉に安心した海はふわり微笑んで、自分の上に乗っている服を横に除け始める。
先程よりもいくらかすっきりしたベッドの上で、海は隼の上に乗った。
「なぁ、シよう?」
そこにはもう寂しそうな姿は無くて。ただ、狂おしいほどの欲が海を支配している。
強烈な色香は、番というのを差し引いても隼を煽るには十分だった。
海の問いかけに言葉を返すことも無く、隼はすぐにその唇を自分ので塞いだ。
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