7日目:報われないのは分かってたけど(黒海)
それが恋だと気づいたのは、いつだっただろうか。
最初はただ、頼りになりそうな人だという印象を受けただけだった。芸能界に身を置いたばかりで、マネージャーと言われてもあまりピンと来なかったし、きっと黒月さんも同じだったと思う。マネージャー業をする前はSPをしていたらしいし。
実際、仕事をしていく上で黒月さんは随分と頼りになった。初めての事だらけで戸惑いが多かったのは黒月さんも一緒なのに、年上の彼は自身の経験値で俺たちの事を支えてくれた。
あぁ、そうだ。年上の彼に憧れを抱いた。それだけで止めておけばよかったのに。
「黒月さん」
どうしてなのかと聞かれれば、俺にもわからないとしか答えられない。長期のロケで、久しぶりに会って、想いが溢れ出したというのが正しいのだろうか。
いやたぶん、理由なんてないのだ。心が限界を迎えていた、それだけ。
「好きです」
二人きりの車の中、俺の疲れ切った声がよく響いた。運転していた黒月さんは動揺からか、少し車体を揺らす。
「お、急にどうしたんだ、海」
「どうもしないです。好きって言いたくなっただけなんで」
言ってから、今の自分の言葉は良くないなと思った。これでは黒月さんが逃げてしまう。
案の定黒月さんはほっとしたように息を吐いた。
「なんだ。海も可愛いところがあるんだな~」
「……黒月さん」
「俺も、お前のことは我が子のように思ってるぞ」
明るい声で黒月さんは死刑宣告をする。
死刑宣告を受けた恋心は粉々に砕け散って、破片になり俺の体のあちこちに突き刺さる。痛いと叫ぶ心臓を抑え俯いた。
「……ははっ、嬉しいです」
幸いにも俺の目から涙がこぼれることは無かった。吐きそうになるのを必死で抑え、無理矢理嬉しそうに笑う。
これでいい。きっと本当のことを言っても黒月さんを困らせるだけだ。大丈夫、恋心を殺すのには慣れている。
「本当プロセラは皆俺の子供みたいなもんだからな。可愛いし、大好きだ」
バックミラー越しに見える黒月さんの目はとても優しかった。それがまた俺の心臓に鋭利な刃物になって突き刺さる。
自分で蒔いた種に耐え切れなくなって、車外の風景を眺める。まだ見慣れない風景は、寮までの距離があることを教えてくれる。
「あの、黒月さん」
「んー?」
「ちょっと疲れたので寝ますね。着いたら起こしてください」
「おう。分かった」
目を閉じれば、思っていたよりも疲れていたようですぐに眠りの世界へと誘われていった。
眠る直前に聞こえた、優しい「おやすみ」に目から一筋滴が零れたのは俺しか知らないことだ。
最初はただ、頼りになりそうな人だという印象を受けただけだった。芸能界に身を置いたばかりで、マネージャーと言われてもあまりピンと来なかったし、きっと黒月さんも同じだったと思う。マネージャー業をする前はSPをしていたらしいし。
実際、仕事をしていく上で黒月さんは随分と頼りになった。初めての事だらけで戸惑いが多かったのは黒月さんも一緒なのに、年上の彼は自身の経験値で俺たちの事を支えてくれた。
あぁ、そうだ。年上の彼に憧れを抱いた。それだけで止めておけばよかったのに。
「黒月さん」
どうしてなのかと聞かれれば、俺にもわからないとしか答えられない。長期のロケで、久しぶりに会って、想いが溢れ出したというのが正しいのだろうか。
いやたぶん、理由なんてないのだ。心が限界を迎えていた、それだけ。
「好きです」
二人きりの車の中、俺の疲れ切った声がよく響いた。運転していた黒月さんは動揺からか、少し車体を揺らす。
「お、急にどうしたんだ、海」
「どうもしないです。好きって言いたくなっただけなんで」
言ってから、今の自分の言葉は良くないなと思った。これでは黒月さんが逃げてしまう。
案の定黒月さんはほっとしたように息を吐いた。
「なんだ。海も可愛いところがあるんだな~」
「……黒月さん」
「俺も、お前のことは我が子のように思ってるぞ」
明るい声で黒月さんは死刑宣告をする。
死刑宣告を受けた恋心は粉々に砕け散って、破片になり俺の体のあちこちに突き刺さる。痛いと叫ぶ心臓を抑え俯いた。
「……ははっ、嬉しいです」
幸いにも俺の目から涙がこぼれることは無かった。吐きそうになるのを必死で抑え、無理矢理嬉しそうに笑う。
これでいい。きっと本当のことを言っても黒月さんを困らせるだけだ。大丈夫、恋心を殺すのには慣れている。
「本当プロセラは皆俺の子供みたいなもんだからな。可愛いし、大好きだ」
バックミラー越しに見える黒月さんの目はとても優しかった。それがまた俺の心臓に鋭利な刃物になって突き刺さる。
自分で蒔いた種に耐え切れなくなって、車外の風景を眺める。まだ見慣れない風景は、寮までの距離があることを教えてくれる。
「あの、黒月さん」
「んー?」
「ちょっと疲れたので寝ますね。着いたら起こしてください」
「おう。分かった」
目を閉じれば、思っていたよりも疲れていたようですぐに眠りの世界へと誘われていった。
眠る直前に聞こえた、優しい「おやすみ」に目から一筋滴が零れたのは俺しか知らないことだ。