1日目:うちの子可愛い(隼海)

 ぺらり、紙をめくる度海は口元を緩める。
 ソファで優雅に紅茶を飲んでいた隼は、海のそんな様子を見つめ不思議そうに首をかしげた。

「海、何見てるの?」
「ん? あぁ、これ?」

 ひょいと海が紙の束を持ち上げる。大きめのクリップで止められたそれはかなりの分厚さで、すべて目を通すのは普通の人ではかなりの時間がかかりそうだ。
 海は半分くらいまで見た、そのページを隼に見せる。そこには風船を持って笑顔を見せる郁の写真が載っていた。

「……郁だね」
「だけじゃないぞ、ほら」

 また一枚紙をめくると、今度は白いシャツを着て花束をこちらに渡す涙の写真が出てきた。

「涙だ」
「陽と夜もいるし、俺らもあるぞ」

 海がぱらぱらと少し早くめくっていくその紙には確かに一枚一枚違う写真―それは個人だったりコンビだったりと様々だったが全てProcellarumのメンバーであった―が載せられていた。
 思わず吹き出してしまったというような笑顔で笑い合う陽と夜の写真を見ながら、隼は頭に浮かんだ疑問を口から零した。

「どうしたの? この大量の写真」

 隼からの質問に、海は笑って「黒月さんから貰ったんだよ」と答えた。

「大?」
「そ。雑誌の撮影で掲載されなかった写真ってあるだろ? それを個人的にまとめたやつらしいんだけど、渾身の出来だから見てほしいんだってさ」
「……写真集を作りたいとか、そういうことじゃないあたりが何とも大らしいね」

 常からプロセラを子供の様に可愛がっている黒月らしい行動である。隼の発言には海も同意だった。

「まぁ、でもさ気持ちはちょっと分かるんだよな~。ほら、この涙と郁めちゃくちゃ可愛くないか?」

 そう言って海が隼の前に差し出したのは、郁と涙がもこもことした衣装を身にまとって猫型のクッションを抱きしめている写真だ。郁はもちろん、涙も嬉しそうに笑ってるその写真は年少組にしか出せない可愛らしさ全開の写真である。
 ふぅんと声を漏らし隼は写真を見つめる。そして海が置いている紙束を手に取り、パラパラとめくっていった。

「この陽と夜も可愛いんじゃないかな?」

 隼が選んだのは陽に乗りかかる夜の写真だ。後ろから抱きつく夜の笑顔は可愛らしく、陽も嫌そうながらもどこか嬉しそうな表情をしている。

「お~確かにな」
「ふふふ。なんだか親みたいな気持ちになっちゃうね」
「だな。や~うちの子可愛いわ」

 一枚一枚写真を見ながら隼と海はコメントを言い合う。
 仕事から戻ってきた陽が共有ルームで親バカコンビにツッコミを入れるのはもう少し後のお話。
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