バレンタインの奇跡
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*設定捏造
*グッズprince cafeネタ
バレンタインの奇跡
ここは、"ほほ~じカフェ"
街の隅にひっそりと佇む小さなカフェだけれど、毎日のように女性客で賑わっていました。
その理由は……
「白石くんっ良かったらこのチョコ貰ってー」
「私も今朝作ってきたんやで~」
「あの、光くんって今日おりますか??」
クリスマスイヴの前に告白してきた大群……再び。
カフェの店員である白石は、女の子達の熱い眼差しに一歩、一歩、と後退りした。
注文を取りにきただけなのにと、ずれた眼鏡を上げながら思う。
元々、白石は178センチの長身に加え、顔形が整っている。中学高校とテニス部で鍛えていた為、身体は筋肉もついて引き締まっていた。
人目をひく緑色のネクタイに黒色のベスト、同色のエプロンを腰に巻いた彼は、知らぬ間に女性客を虜にしていたのだった。
「白石くん、今彼女いないんよね?同じ大学の友達が言っとったで」
白「はは、そうですね」
「そんならこのチョコ貰って!」
白「仕事中はちょっと…」
ぐいぐい迫る女の子に、白石は綺麗な苦笑いを浮かべるしかない。
大学にそんな情報を知り尽くす人がいるなんて、授業を受けるのが怖くなる。
1人の女の子が白石の手をとろうとした時、間に誰かが割り込んだ。
謙「申し訳ありませんけど、只今営業時間ですので」
「あ、謙也くんにも作ってきたでー」
謙「おおきに。せやけど、うちの店のチョコレートケーキも絶品なんやで?」
上手く交わし、バレンタイン限定メニューを紹介する謙也。
スイーツ好きの女子達は目をハート型にさせると、揃ってそれを注文した。
キャッキャッとスイーツの話で盛り上がり始めた客に頭を下げると、謙也と白石は厨房に向かった。
白「謙也ありがとうな……寿命が縮まった気ぃするわ」
謙「気にせんでええって」
ハァと溜め息を吐く白石に、謙也は笑顔で返す。
彼も白石と同じ色のスカーフを巻いているが、キッチンスタッフであるので少しデザインが違っていた。
謙「それにしても…毎年毎年数増えてへんか?」
白「何処で個人情報仕入れてくるんやろ、」
小「女子のネットワーク舐めたらアカンでぇ」
厨房に立っていた小春に、「うわ!?」と白石と謙也は揃って飛び退く。
お化けを見たような反応に小春はムッとしながら、近くまで来た。
小「女の子は噂好きやからねー、と・く・に 好きな男の子のことは徹底的に調べる生き物なんよ」
謙「怖いなぁ…」
ぽつり呟いた謙也に同意するように、静かに頷く白石。
すると、カランコロンとお店の戸が開く音がした。
健「いらっしゃいませ…て、りんちゃん」
『こんにちは』
ペコリと小さく頭を下げたのは、カフェの常連客でもあるりんだった。
白石はその声にピクッと耳を動かし、颯爽と店内に向かう。
小&謙「「((早……っ))」」
先程までぐったりしていた者とは思えない切り返しの早さである。
白「いらっしゃいませ」
『あ、こ、こんにちはっ///』
案内された席に座っていたりんは、白石の姿を見ると顔を赤く染めた。
そわそわと身体を動かす姿と小動物を重ね合わせ、白石は全身マイナスイオンに包まれる。
白「いつものでええか?」
『はいっ』
現在は地元の高校に通っていて、白石の後輩でもある彼女は、学校帰りに"ほほ~じカフェ"に良く来てくれる。
幼馴染みが働いている、という理由もあるみたいだが、ここのケーキがとても気に入っているらしい。
白「そや、バレンタインデー限定のケーキもあるけど…」
『んと、じゃあそれもください』
白「かしこまりました」
くすくす笑う白石に、りんの顔はどんどん赤くなっていく。
こんなにわかりやすい反応をされても、白石は「可愛い」と強く思うだけで、深く考えないのだ。
周りは皆気付いているというのに……
『…あの、白石先輩』
白「ん?」
『もし、迷惑じゃなかったら、これ「あれ、来てたん?」
『っひーくん!』
幼馴染みの財前が姿を見せると、りんは手に掴んだ包みを慌てて鞄に戻した。
財「そない甘いもん食べとると太るで?」
『そんな食べてないもんっ』
財「まぁ健気っちゅーのは認めるけど、そんなんじゃいつまでたっても伝わらへ『ひ、ひーくん…!///』
しーと人差し指を自分の口元に当てて、財前の肩をポカポカと叩く。
白石は2人の戯れにははっと吹き出した。
白「相変わらず仲ええなぁ」
財「『仲良くないです!』」
見事に声が重なっても、「ただの腐れ縁っスわ」と財前はその事実を認めない。
ぷくぅと頬を膨らませていたりんは白石に笑われたことで真っ赤になり、まるで茹で蛸のようだった。
謙「ざいぜーん、注文入ったで」
財「あ、今行きます」
『こんにちは』と頭を下げるりんに、「おお、いらっしゃい」と謙也も手を上げる。
謙「にしても銀が休みやと、めっちゃ大変やな」
『お休みなんですか?』
謙「インフルになってもうたらしい。1人で3人分くらい働いてくれてたからなぁ」
カフェを支えていた銀が、この忙しいバレンタインの時期に病欠してしまった。
「そや」 と、財前は真剣に話を聞く幼馴染みを見る。
財「お前甘いもん作るの好きやろ?ちょっと手伝ってや」
白&謙「「『え!?』」」
唐突な提案に、りんだけじゃなく白石と謙也も声を上げた。
目を丸くする一方に動じず、財前だけは冷静に話を進める。
財「ここのケーキしょっちゅう食べとるんやし、味は大体わかるやろ?」
『う、うん…でも、』
財「…何や、用事でもあるん?」
財前に冷ややかな視線を向けられ、絶対に断れないような空気になっていく。
まるで蛇に睨まれた蛙だ。
謙「俺は別にええ思うけど…」
白「せやな。りんちゃんが来てくれたら百人力かも」
『!』
りんの料理の腕を知っている先輩2人は、揃って頷く。
それに…白石にしても、好きな女の子と一緒に働けるなんて夢みたいだ。
りんはちらりと白石を見てから、『私で良かったら』と申し出た。
財「じゃ、こっち」
財前に連れられるようにして、りんは初めての体験に少し緊張しながら店の奥へと向かった。
