浪速のバカンス
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ハァハァと荒い息を繰り返し、飛び込むように入って来たのは……
『友香里ちゃん?』
キョトンと目を丸くするりんの声に反応して、友香里はギロリと鋭い目をしながら顔の向きを変えた。
りんを瞳に入れた瞬間、まるで獲物を捕える野獣の如く飛び付いた。
友「…りんちゃん!」
『は、はい!』
友「何で家に泊まってくれへんの!??」
至近距離なのに大声で叫ばれて、りんの耳はキーンと音が鳴った。
『な、何でって…えと、ご家族の方にも迷惑だろうし、白石さんもそうした方が良いって…』
友「くーちゃんが何言ったか知らんけど、うちはりんちゃんと枕投げとか、恋ばなとか、枕投げとかするん楽しみにしとったのに!!」
紅「(今枕投げ2回言うたな…)」
肩を揺さ振る友香里は、声には迫力があるが…その顔は悲しそうに歪んでいた。
りんは胸がチクリと痛み、掴まれていた友香里の手をそっと握る。
『…ごめんね、でも、白石さんにも何か事情があるんだと思うし……でもね、友香里ちゃんに会えること、私もすっごく楽しみにしてたんだよ』
『本当だよ』とふわり優しく微笑んだりん。
友香里の顔もだんだん緩み始め……いや、何故か震え始めた。
友「……りんちゃんかわええー!!」
『ふぇ!///』
ギュムッと抱き付く友香里に、りんは顔を赤くして戸惑う。
まるでコントでも見ているような感覚に陥り、その光景を呆然と眺める紅葉。
暫くして、やっとツッコむ気になった。
紅「…友香里ちゃん。あんたまさか、それ言いにわざわざ?」
呆れたように溜め息を吐く紅葉の言葉にぴくっと反応して、友香里はゆっくり立ち上がった。
わなわなと体を震わせ、強く拳を握り締める。
友「ホンマ……ムカつくんやあの男、」
紅「また喧嘩したん?翔太と」
2人の会話に全くついて行けずに、りんは首を傾げる。
友「そう、翔太!!あいつな、今日のプール教室でうちの水着見て「貧乳はスクール水着しか似合わんな」とか言うてん!しかも大声で!
皆に笑われるしもうホンマ最悪やねん!!!」
力説する友香里は、興奮して息も途絶え途絶えで。
友「せやからな!今日これから海行くやん?
何故か翔太も行くみたいやから、大人っぽく見える水着…ダイナマイトボディに見える水着、紅葉ちゃん貸して!!」
頭を下げて、懇願するように両手を揃える友香里。
りんは「ダイナマイトボディ」に反応し、ゴクンと唾を飲み込む。
紅葉が口を開けようとした時、再びダダダ…と新たな訪問者を知らせる足音が響いた。
襖が開き、そこにいたのは……
小「そんな時はうちに任せてや~!」
友「小春ちゃん…!」
ユ「ちょ、小春速すぎや…」
その後ろでゼェゼェ言いながら、たくさんの紙袋を持ち姿を見せたユウジ。
りんが慌てて駆け寄りオレンジジュースを渡すと、ユウジはそれを一気飲みした。
小「悩める乙女の為、一肌脱ぐわよ~
さ、ユウくん!!」
ユ「OK小春!」
何処から取り出したのか、ユウジはガラガラと衣紋掛けを運んで来た。
そこには…たくさんの水着。
小「折角バカンスに行くんやし、可愛くせな!」
ユ「オトンに借りて来てやったで~」
紅「そ、そこまで…」
ユウジの父はデザイナーなので、入手は簡単だったらしい。
呆気に取られる紅葉の隣では、友香里がキラキラと目を輝かせていた。
友「すっごいやん!じゃ、見立ててくれるん!?」
小「勿論よーっこのスポーティーなのも似合いそうやねぇ」
もう試着タイムは始まったらしい。
ポカンとするりんの横で、紅葉は「次から次へと…」と本気で疲れていた。
と、くるっとりんの方へと振り返った小春。
小「りんちゃんも選んであげるからねぇ」
『へ!いえ、私は…』
ビキニとかではないが、りんも一応持って来ていた。
小学生からのではあるが…
小「こういう水着の方が、蔵リンも喜ぶ思うねん」
小春の手には、ヒラヒラのレースがいっぱい付いたビキニ。
一瞬考えるが、りんは顔を赤く染めブンブンと首を横に振った。
『む、むむ無理です!///』
そんな水着を着て、恥ずかしくて人前になんて出れない。
ましてや白石の前なんて…
そんな純粋な乙女の気持ちなど全くお構い無しに、小春と友香里は着々と選んでゆく。
小「りんちゃんロリ顔やし…やっぱりピンクかしら?」
友「イメージカラーは白やけどなー
あ、あえての黒とか!」
『あ、あの……』
同情の瞳をした紅葉の手が、肩にポンッと置かれる。
小「蔵リンってどーいう系が好きなん?」
友「んー…やっぱ清楚系?でもりんちゃんが着るんやったら、何でも喜ぶと思うわ」
小&紅「「((確かに…))」」
兎に角試着してみようと言うことで、候補を絞ったところでジリジリとりんに近寄る。
そんな小春と友香里に恐怖を覚え、後退りするりんだが…後ろの壁に塞がれてしまった。
『え、えっと…』
…この後りんの身に何が起こったのかは、言うまでもない。