birthdayデート
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金「もう一回乗るでぇー!」
千「金ちゃん、そんな腕引っ張らんで」
ジェットコースターが余程面白かったのか、何回も乗ろうとする金太郎。
ユ「こ、小春…観覧車一緒に乗らへん?」
小「んーあたしまだええわぁ。ユウくん先行って来てええよ」
ユ「!(そ、そんな…)」
尾行という本来の目的も忘れ、それそれが思い思いに遊園地を満喫しているようだ。
財「…はぁ、気持ち悪…」
謙「大丈夫かー?」
謙也はベンチに寄り掛かる財前に、ほいとジュースを差し出した。
財「…ヘタレ先輩があんな回すから、アホの子みたいに」
謙「だからすまんって!回すもん見るとついスピードがな…」
はははと笑って誤魔化そうとする先輩を、鋭い目で睨む。
数分前、コーヒーカップに乗ったのだが…謙也は尋常ではないスピードで回し出し、それに乗っていた財前が被害にあったのだった。
「流石は浪速のスピードスター」とでも言えようか。
謙「お前…その服装で睨むなや。めっちゃ怖いから」
財「好きで着てるわけじゃないです。…謙也さんと違って」
謙「俺も好きで着てません!」
じっと疑り深い目で見てくる財前を見て、「ホンマ可愛くない奴」とブツブツ呟く謙也。
けれど、財前の表情は何処か曇っていた。
財「(…あいつ暗闇苦手やったよな)」
見たいわけじゃない。
けれど、尾行なんてしていたら嫌でも見てしまう。
財「(…まぁ、部長なら上手く守ってくれるやろ)」
わざと怖がらせる自分と違って、王子様気質なのだから。
だから来たくなかったんだ。
何でこんなとこまで来て、こんな服装までして、嫉妬しなければならないのか。
金「…けーんやー乗ろうでー!」
遠くから金太郎の声が聞こえて、謙也は立ち上がる。
謙「あー…ごめんな、後で行くわ!」
そう叫ぶと、再びドカッとベンチに座った。
財前は少し目を丸くして隣を見る。
財「…俺、そういう趣味ないですわ」
謙「アホか……泣きそうやろ、自分。付き合ったる」
「感謝しぃや」と吐き捨て横を向く謙也。
財前は何も言わず、前に向き直った。
心の中で、ありがとうございますと呟いて。
白「…………」
暗闇の中、白石は出口に向かって歩いていた。
何処からか聞こえる変な悲鳴と、自分の足音だけが響く。
白「……りんちゃん」
さっきから名を呼んでもピクリとも反応しない、自分の彼女。
入った瞬間スタスタと先を歩き出して、外部からの音を聞こえないように耳を塞いでいる。
と、真横に立て掛けてあった棺がキィ…と気味の悪い音を立て開いた。
その中から、長い髪を前に垂らした女性がゆっくりと顔を覗かせ、
『…………』
白「……りんちゃん!?」
完全に硬直してしまったりん。
その時更に、誰かに足を掴まれた。
後ろを振り向けば、目が飛び出ているお化け………
『ぴ、ぴぎゃ…!』
白「(ぴぎゃって…)」
固まっていたりんも正気に戻ったのか、慌てて白石の腕に絡みつく。
ぎゅううと、か細い腕には不似合いなくらい、力強く。
『し、白石さん…こわ…いです…』
目に涙をいっぱい溜めて、見上げてくる。
白「……っ」
予想以上の破壊力に動揺しそうになるが、白石は何とか平静を装おう。
小さな子供をあやすように優しく頭を撫でた。
白「大丈夫やから」
『……本当…?』
白「…うん」
一体何だと言うのか、この可愛い生き物は。
こんな場所じゃなかったら今すぐに抱きしめて…と一人暴走しそうになる思考を、必死で押さえる。
りんの手をギュッと握って自分の元に引き寄せ、庇うようにして先を歩きだした。
やがて外へ出て、一気に緊張が解けたりんはほっと肩を落とす。
白「大丈夫?堪忍な、そんな怖がるなんて思ってなくて…」
『い、いえ…!』
慌てて手を横に振ると同時に、自分の今の状況を思い出した。
ズザザザと音がしそうなほど、勢い良く距離を置く。
『ご、ごごめんなさい!!///』
なんて大迷惑なことをしていたんだろう。
と今更ながら顔を真っ赤に染めるりんを見て、白石はふはっと笑い出した。
『ほ、本当に怖かったんです…笑うなんて、』
白「いやいや、ごめんな。やってりんちゃんが可愛すぎて」
『!///』
ククク…と笑いを堪える白石にどんな顔をしたら良いかわからない。
笑われたことに対する怒気も、今の一言で吹き飛んでしまった。
笑いが治まってきた時、白石はふと前を見据えた。
白「…まだ、乗ってないのあった」
『?ぇ、』
ニコッと笑った白石を、りんは首を傾げながら見つめた。