小話
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白「ったく紅葉は…ほんま男前やな」
紅「うっさい。蔵より男前になったるわ!」
『……………』
お好み焼き屋"カエデ"のカウンター席。
私の隣に座る白石さんは、目の前でお好み焼きを焼く紅葉さんと楽しそうに話しています。
白「そん時な…」
話してる内容より、耳に響く言葉。
白「で、…紅葉………」
チクリと、胸に針が刺さったように痛い。
『(また…)』
白石さんと紅葉さんは仲が良いから、名前で呼ぶなんて当然で。
一々胸が痛くなる私が可笑しいんだ。
白「聞いとる?りんちゃん」
『は、はい…!』
キョトンと白石さんに見つめられて、『聞いてますよっ』と慌てて返した。
その後も胸の痛みは治まらず、2人の会話も曖昧にしか聞くことが出来なかった。
白「んー涼しくなって良かったなぁ」
白石さんの家の近所にある河原を歩きながら、気持ち良さそうに伸びをする白石さん。
私はそんな白石さんの後ろをゆっくりと歩く。
『(…そういえば、)』
前に遊園地へ一緒に行った時、名前で呼んで欲しいって言われたことがあったな。
でもやっぱり恥ずかしくて、言えなくて。
結局今までと変わらずに呼んでしまって。
紅葉さんはあんなに自然に言えるのに。
それに比べて私は……
白「…りんちゃん、どないした?」
『ふぇ、』
悶々と頭を悩ませていた私は、白石さんが立ち止まってこっちを見ていることに気付かなかった。
『な、何でもないです!ごめんなさいっ』
白「何でもないって顔してへんよ」
『うぅ…』
的確につかれてしまうと、人間はきっと何も言えなくなるに違いない。
俯いていた顔を上げて、すぅと大きく息を吸った。
『あの…っ』
白「何?」
『………く、』
白「?」
"蔵ノ介"
そう言いたいのに、鼓動がドッドッと速まっていき、顔の方が先に赤くなってしまう。
でも、でも…言うって決めたんだもん…っ
口を閉じたり開けたりを繰り返す私を、白石さんは不思議そうに見つめている。
『く、く、く…く』
白「(?笑っとる?)」
ギュッと拳を握り締めた。
『く、く、くら!の、すけ』
どうしよう…今、声裏返ってたかもしれない。
恥ずかしくて、今すぐ立ち去りたい。
真っ赤になって俯いていれば、白石さんが一歩近付く気配がした。
白「…なぁ、」
『…っ』
顔を上げると映るのは、白石さんのドアップ。
驚いて後退りしようとすれば、逃がすまいと腕を掴まれてしまった。
白「もう1回言うて」
耳元で囁かれ、顔以上にその場所が熱くなっていくのがわかった。
白「…言って、りんちゃん」
『……っっ///』
僅かに上目遣いで眉を下げて。
白石さんのこの表情を見せられてしまえば、NOなんて言えないのに。
『…………っくら、の、すけ』
白「ん?」
『………くらのすけ』
ふわり、本当に嬉しそうに微笑む。
その姿にドキンと大きく鼓動が跳ねて、もっと笑って欲しいって思って。
『くらのすけ』
白「はい」
『くらのすけ』
白「はいはい」
ははっと照れたように笑う白石さん。
何度も何度も、大好きな人の名を呼ぶ。
言えたことが嬉しくて、しつこいかもしれないけれど、もう一度だけ。
『く、「りん」
低い声に驚いて顔を上げた瞬間、胸がドクンと波打つ。
静かに私を見据える白石さんは、今までに見たことがない表情をしていて。
白「…りん」
透き通るように、耳の奥に響く。
本当は嬉しいのに…どんな反応をして良いのかわからない。
胸もドキドキして、顔もさっきよりずっと熱くて。
どうしたら良いのかわからなくなって、白石さんの服の裾を握りながら俯いた。
『やっぱり、今まで通りでお願いします……』
これだけで鼓動がうるさいなんて、耐えられそうもありません…
白「…あれだけ言うておいて、」
『へ…』
白「いや、何でも」
首を傾げる私をチラリと見て、咳払いをすると再び歩き出した白石さん。
慌ててついて行こうとすれば、ふと歩調を緩め手を握られた。
白「好きやで、りんちゃん」
『!』
目を合わせてそんなことを言うから、また鼓動が忙しく鳴り出す。
繋がれた大きな手を、遠慮がちに握り返してみた。
『………わ、私もです』
白「私も、何?」
『っ………す、好き……』
きっと私の方が、ずっと。
今はこうやって一緒に歩いて、貴方の笑った顔が見れるだけで、
私はすごくすごく、幸せなんです。
『(でも、名前呼びって大変なんだな…)』
***
ただバカップルなお2人が書きたかったんです…。
名前で呼ばれたことが、実はかなり嬉しい白石さんでした。
