君に溺れる
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それは、山奥での長期合宿中のこと。
りんはお風呂上がりに宿舎を歩いていると、ロビーで楽しそうにはしゃぐ声を聞いた。
その輪の中に"あの人"の姿を見付け、ドキンと喜びで胸が高鳴る。
白「はははっそら災難やったなぁ」
財「…ほんまっスわ。早朝から起こされるとかほんま勘弁して欲しい」
赤「でもさぁ、ブログネタ付き合ってくれるとか優しいじゃん」
日「ああ、俺だったらまず断るな」
「謙也はお人好しやから」と再び笑う白石に、呆れたように頷く財前。
どうやら205号室のメンバーと一緒にいるらしく、りんは壁の影に隠れてコソコソと様子を伺った。
海「…りん?何してんだ?」
『ひゃあ!?』
突然背後に現れた海堂に、驚いてビクゥ!と飛び跳ねてしまう。
その為ロビーにいた彼らに存在を気付かれてしまい、りんはおずおずと姿を見せることになった。
白「あれ、りんちゃん?」
『あ、えと…偶然ですねっ』
あくまでも偶然を装いながら、笑って誤魔化す。
そのわざとらしさに財前と日吉は察し、「りんも来いよ!」と誘う赤也だけが気付いていなかった。
ソファーに腰掛けると、横からじっと白石の視線を感じて。
目が合うとニコッと微笑まれたので、りんは頬を赤く染めた。
『(うう…///)な、何のお話ししてたんですか?』
白「それがなぁ、財前がブログネタ欲しい言うたら、張り切った謙也に早朝から起こされたらしくて」
赤「で、あれだろ。山籠りしてる鬼さんに会ったんだろ?」
財「そや。謙也さんぴーぴー泣いて鬱陶しいのなんのって、」
海「『(それは怖い……!)』」
鬼の人柄は優しいと知っていても、山の中で雄叫びを上げながら鍛える姿は強烈なものだ。
夜に遭遇したことのあるりんと海堂は、サーッと顔を青くした。
『?赤也先輩達は、何で白石さんと?』
赤「ああ、さっきまで4人で軽く打ち合って風呂入ってきてさ。その時に白石さんと偶然合ったんだよ」
白「俺もランニングしてたから入るの遅くなってしもーて。それで今、皆で涼み中や」
りんがふんふんと頷いていると、「りんちゃんも何か飲むか?」と白石が自販機に視線を送った。
『あ、いえ…っ大丈夫です』
白「遠慮せんでええよ?財前なんて2本目やし」
財「すんません。人の金やと思うたらつい」
「ちょっとは遠慮しろよ…」と日吉に溜め息を吐かれても、気にせずグビッと飲み干す財前。
結局りんも白石にお茶を買って貰い、『っありがとうございます』とペコリと頭を下げた。
白「このくらい気にせんで。何なら俺のも飲んでええからな」
『ふぇ!?(そ、それって…)』
関節キスじゃ…?と想像しそうになって、ボッと顔を赤く染めるりん。
そんな2人を白けた顔で見つめる財前はいつも通りであるが、今回はじっと別の視線が2人に注がれていて……
赤「そういや、りんってずっと"白石さん"呼びだよなぁ。敬語だし、何で?」
お茶を飲んでいたりんは、突然の質問にゴホッとむせてしまった。
「大丈夫か!?」と白石に背中をさすられながら、何とかコクコクと頷く。
『?な、何でって?』
赤「いや、白石さんは名前で呼んでんのになーって不思議でさ」
赤也はただ純粋に不思議に思い、首を捻っている。
指摘されたりんは『えっと…』と考え、この場にいる全員から見られている気がして目をぐるぐると回した。
海「…そんなの人其々だろーが。周りがとやかく言うことじゃねぇだろ」
日「海堂のその言う通りだ。お前はそのすぐ口に出す癖をどうにかしろ」
財「はー…これから"デリカシーなし也"って呼ぶで」
赤「は!?つか最後の何だよオイコラ財前」
頭に怒りマークを付けながら睨む赤也。
それにいつもりんをいじめ…からかっている財前に、怒られるなんて心外だ。
『あ、あの…っ大丈夫ですよ!』と険悪な雰囲気を見兼ねたりんが、慌てて止めに入る。
『赤也先輩が言ったことは事実ですし、』
財「せやな。別に部長をどう呼ぼうとどうでもええけど……寧ろ一生そのままでええし」
白「ん?財前くん?」
ボソッと独り言のように呟いた最後の
言葉を、白石は勿論聞き逃さなかった。
そんな先輩のツッコミを物ともせず、「それよりも」と財前は話し続ける。
財「こいつだけ名前呼びってことの方が、気に食わん」
くいっと顎で差した方向にいたのは………赤也。
突然矛先を向けられた彼は、「!?」と一瞬コーラを吹き出し掛けた。
海「……確かにな。(青学でさえ全員名字呼びなのに)」
『か、海堂先輩?』
静かに頷く海堂だが、その瞳は僅かに嫉妬の色を宿している。
赤「何でって言われてもな……?」
『はい、特に理由はなくて…』
キョトンと首を傾げながら答える2人は息ぴったりで、財前はその光景にさえもチッと舌打ちをする。
「ええんスか?これ」と財前が尋ねると、「うーん…」と困ったように笑う白石。
白「……まぁ、正直ちょっと妬けてまうな」
『っ!』
寂しそうに眉を下げる白石を見て、りんの胸はズキンと痛くなる。
目を瞑りながらお茶を飲み切った後、すくっと立ち上がった。
『ご、ご馳走様でしたっそれじゃあ、おやすみなさい…っ』
「え、りんちゃん?」と白石の不思議そうな声が聞こえるが、りんはだっと早足でその場を去っていった。
