異界都市日記21
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一瞬の浮遊感の後には、夜のヘルサレムズ・ロットの道路からライブラ事務所の見慣れた場所へと景色は一変していた。
「……っ……」
次の一瞬後には、自分も含めた五人の人物を一度に空間転移で飛ばした結理がその場に倒れ込んだ。
「ユーリ!!」
「レオ!結理はチェインに任してこっち手伝え!」
「あ…はい!!」
慌てて結理を抱き起こそうとしたレオは、ザップの要請に応えて即座に一緒にツェッドを担ぎ上げた。その間にチェインが倒れたままの結理を抱き起こす。
ザップとレオとでツェッドを水槽の中へ入れる頃には、物音を聞きつけたクラウスとスティーブンも部屋に駆け付けていた。
「…ふう…何とかこれで一安心」
ツェッドを呼吸の出来る環境に入れ、結理も横になれる場所へ運び終えた面々は、ひとまず安堵の息をついた。
だが問題はまだ一つも解決していない。
「しかしエアギルス(逆アクアラング)なんてツェッドさん専用でしょ?他の使い道なんてありゃしないのに無理矢理引き剥がしていくとか、どういう了見なんでしょうね?」
レオがぼやいた通り、エアギルスを奪ったという二人組の意図は全く掴めない。ツェッドのように水が無ければ呼吸が出来ない者がいるとしても、ボンベ部分だけを持ち去っても全く意味がないし、エアギルスの存在を分かって奪うにしても、手段に粗が目立ち過ぎる。
「替えはないンすか」
「言ったろ。高価いんだよ。高級腕時計をワンオフで作るようなもんだ」
「え…!?て事は…!?」
「ああ。見つからなければ発注から納品まで向こう一カ月はこの中だな」
「ええ~!!何すかそれええ!!」
エアギルスを取り戻せなかった場合のことを聞いたレオは、泣きそうに顔を歪めて悲鳴のような声を上げていた。ツェッドが一カ月も水槽の中に閉じ込められるような状態になってしまう事もあるが何より、
「え?じゃ新年会は?」
「虚居?無理だろ」
「ウソだ~~!!苦労して取ったのにィィ!!」
苦労して超人気店を取ったことに加え、ようやくライブラの面々にツェッドを紹介できると思い楽しみにしていたレオにとって、この事実は相当にダメージが大きい。肩を落として嘆いていると、ふと、水槽に何かが張ってある事に気付いた。
「……これ…」
慎重にテープをはがして見ると、それはクラウスが刷った新年会のチラシだった。
内側に向けて張ってあったということは、水の中からでも見られるようにとツェッドが考えて張り付けたのだろう。
水槽の中から、自身が所属している組織のまだ出会えていない、新たな仲間達と顔を合わせられる日を数えて待っているツェッドの姿が、レオの中で浮かんだ。
この世界に彼の同種族の仲間はいない。
だが、ツェッドは決して一人ぼっちではない。
「取り返しましょうよ。エアギルス」
静かに、宣誓するように、レオは告げた。
「幹事としてこんなん承服できない」
仲間達に振り返り、強い意志を持ってレオは言い切っていた。
「新年会実行委員からの緊急要請です」
