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語り手
この日はクリスの叔父であるラベンダのお店が大変込み合っており
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語り手
私とクリスで手助けをしていた。
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語り手
ケドルスは忙しい時に限って手伝いなどはしないらしい。
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語り手
いつも手伝ってはいないけどとクリスはボソボソと言っていたが
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語り手
夕焼けが見えてくる頃にやっとお店が落ち着いてくると
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レンジ
ボクくーーん!
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語り手
レンジがやってきた。
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ボクくん
レンジ?
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ボクくん
どっかいくか。
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レンジ
うん!
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語り手
そういうことになった。
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ボクくん
今日は何してたんだ?
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語り手
海岸通りのレンガ道を歩きながら、空を見上げる。
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語り手
首裏から噴き出た汗や脇から出た汗が肌を伝っていく。
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語り手
しかし、7月頃の暑さと比べると
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語り手
少しだけ、すずしくなったような。
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レンジ
えっとねーおれねーうみのいえのおてつだいしたの!
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ボクくん
そうか。
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レンジ
ケドちゃんもね-いっしょだったんだよ!
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ボクくん
ほお、それはめずらしい。
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語り手
私は足を止めて、レンジがいるであろう方向に顔を向けた。
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語り手
おそらく、そこにレンジがいなくても、レンジは私の方向に移動して見つめてくれている。気がした。
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語り手
しばらくブラブラと歩きながら、いつものようにレンジの住む浜にたどり着く。
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語り手
洞窟の山が影となり、海から流れてくる風で、私の身体は一気に熱が放出されていく。
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語り手
レンジがとなりにすわ、る。
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語り手
そして、海の家でのお手伝いのことを教えてくれたのだった。
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うみのいえ
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海のおじちゃん
ほぎゃっ!!!あだ~~~っ!!
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語り手
ギックリ腰というものは突然やってくる。
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語り手
お昼頃、海の家を経営するおじさんがギックリ腰で倒れた。
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語り手
ちょうどその時、ケドルスとレンジはおでんを食べにきていたのだ。
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ケドルス
どうした親父 入れ歯でも落っことしたか?ケケケ。
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海のおじちゃん
いやはや・・・腰がイっちゃってのお・・・すまんが手を貸してくれんか。
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ケドルス
いやなこった
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語り手
ケドルスは笑いながらおでんを食らっていたが、レンジは箸を置き、おじさんに近づいた。
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語り手
外から見たお客さんは「あーなんだ、一人で起きれるじゃん」って思っただろう。
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語り手
そう、レンジがおじさんに触れることができたのだ。
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語り手
それを聞いた時、私はびっくりした。
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海のおじちゃん
ありがとうよ レンジ。
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レンジ
きにしないで!ケドちゃんにはあとできつくいっとく!
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語り手
そう言って、おじさんを布団にうつぶせで寝かせることができたらしい。
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語り手
つまり、レンジは人助けをする時だけ大人でも触れることができるのか
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語り手
あるいは…
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語り手
レンジを信じている者はレンジの声と姿も見えて、触れることができるのだろうか?
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語り手
わからない。
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語り手
海の家はおじちゃんとその家族とバイトが仕切っているため、人数も結構きつきつだ。
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語り手
一人でも抜けると大変だとレンジは言っていた。
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レンジ
ねーケドちゃん おれたちでおみせのおてつだいしないー?
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ケドルス
しない
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レンジ
えーーーーー!しよーーーーー!
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語り手
ケドルスまずいものでも食べたかのような渋い顔で舌を出した。
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語り手
会話を聞いていた私たちと同じくらいの背の女の子が近づいてきた。
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語り手
おじさんのお孫さんらしい。
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語り手
お手伝いしてくれたらおやつをあげるわよと声をかけてきた。
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ケドルス
具体的に。
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語り手
お好きなもの無料で引換券1枚でどう?女の子は言った。
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ケドルス
ん。
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語り手
手のひらの指を全開にし、片手で女の子に突き出す。
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語り手
まったく現金なやつだ。
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語り手
そういうことになった。
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レンジ
いらっしゃいませー!
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ケドルス
しゃしゃしゃせー
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語り手
子供の相手はレンジ。
大人の相手はケドルスと他の従業員。 -
レンジ
なににしましょー!
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ケドルス
なななななしょー
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語り手
最初は乗り気じゃなかったケドルスだが。
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ケドルス
おい レンジ あそこの客 ビールおかわりだそうだ。
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レンジ
うっらじゃー!
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語り手
意外とお客をよく見ていたらしい。
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語り手
レンジよりかは接客スピードが上がっていた。
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ケドルス
ういーっす、おまちどー おでん2人前だー
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レンジ
きんきんにひえたビールよういできたよー
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ケドルス
お前・・・飲んだな?
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語り手
レンジは口周り泡だらけにしていたが、首を横に振っていた。
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語り手
ケドルスはトレーを受け取ると、にんまり笑った。
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語り手
ひと汗かいて喉がめちゃくちゃ渇いた時に一気に呑むビールは美味い。
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語り手
お昼過ぎて夕方近くになり、お客の入りも収まってきた頃に、店内の奥からおじちゃんが起きてきた。
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海のおじちゃん
ありがとねーハイ、これ引換券10枚ね。
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ケドルス
あ?んなにもらっていいわけ?
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海のおじちゃん
すごく、助かったからね、そのお礼じゃ。
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ケドルス
ん。じゃあ、受け取っておくわ。
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語り手
ケドルスは笑いながら、レンジはその後ろをついていきながら、海の家を出た。
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レンジ
おてつだいたのしかったねー
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ケドルス
しばらくはあそこのお店無料(ただ)で食えるわ ニヒヒ
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語り手
波の音。ガードリアの鳴き声。人の声。
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語り手
レンジはケドルスの隣を歩き、ケドルスはそのまま並んで歩いた。
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語り手
クリスや私だとケドルスは嫌がるが。
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ケドルス
はー、そろそろ家に帰ってやるか
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レンジ
オレ、ボクくんにあいにいく!
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語り手
そして、こんなそんなで、今に至る。
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レンジ
それでね それでね
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語り手
レンジは俺と会話できることがとてもうれしそうだった。
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語り手
きっと語りたいこと、伝えたい言葉、たくさんあったんだ。と思う。
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語り手
ケドルスとクリスは俺の知らないところでレンジと思い出を作っている。
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語り手
もちろん、俺もレンジの知らないところでクリスとケドルスとは色々あった。
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レンジ
それでね
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レンジ
ぼくね
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レンジ
ボクくんとあいたかったの。
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ボクくん
そっか。
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語り手
二人で砂浜にそのまま座って、海を見た。
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ボクくん
じゃあさ、今度は俺の話聞いてくれよ。
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レンジ
もちろんだよ
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語り手
なにから話そう?
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語り手
何を伝えよう?
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語り手
君に言いたかった言葉はたくさんある。
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