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語り手
カレーとはどの国においても一般的な基本料理のひとつだと思っている。
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語り手
私はカレーがたまらなく好きだ。
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語り手
なので、レンジがクリスの叔父の店でカレーを作るという話を聞いた時は
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語り手
かなり心が躍った。
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おじゃましま
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語り手
あれ、ケドルスのやつはいないのか
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クリス
あいつカレーはこの世で一番、下準備がだるいやつだからって逃げたよ
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レンジ
ケドちゃん りょうりおいしいのにねー
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語り手
クリスが少し横にずれた隙間にレンジはいる。ピーラーが浮いてじゃがいもの皮がめくれはじめた。
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語り手
かなり奇妙な光景だ。
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クリス
あいつは自炊できる点だけは良いとこだとは思うけど。
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語り手
クリスはぼそぼそとケドルスのことを呟きながら、にんじんの皮をむいている。
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語り手
俺もカレー好きだからな。何か手伝おうか?
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レンジ
じゃあ じゃあ たまねぎきって!
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レンジ
ぼく たまねぎきるのきらい!
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語り手
玉ねぎはむけているんだな。切ろうか。
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レンジ
しみるから!
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語り手
レンジのことだからしみるーって言ってやらなさそうだもんな
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クリス
あはは!あたってるう!
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レンジ
おねがいします
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語り手
ボールからつるつるの玉ねぎを取り出し、手のひらで転がしながら、この国の玉ねぎを眺める。
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語り手
さきっぽに残った皮の色を見るに、赤紫色だったのかなとか想像をしてみた。
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語り手
用意されていたまな板の上に玉ねぎを置いて、手のひらをしっかりとグウの形にして
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環境音
ズシッ
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レンジ
わーお ボクくん かっこいい!
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語り手
しみて思わず目を閉じる。
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クリス
あはは!やっぱしみるよね~!
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語り手
いやいや、待て!この辛さはいったい!いやぁ!!!
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語り手
痛すぎるのだ。
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レンジ
ぼくねーゴーグルつけてやるのー
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レンジ
いいでしょー!
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クリス
シュノーケルマスクならあるけど
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語り手
頼む・・・それをくれ・・・。
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語り手
クリスは私の横を通りすぎた。私はしゃがんで目をこする。
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語り手
レンジにやらせないでよかった。
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レンジ
ボクくん だいじょうぶ?
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レンジ
いたいの いたいの とんでけー!
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語り手
これは、たまらん。
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語り手
私は天井の顔を上げて、ひたすら苦痛を耐える。
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語り手
すこし、収まってきた。
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レンジ
ボクくん なでなで
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語り手
頭の感触にレンジがよしよししているのが伝わる。
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語り手
ありがとうな レンジ
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レンジ
えへへーほめられちった
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クリス
もってきたよー
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語り手
というわけで料理の再開だ。
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クリス
ケドルスが炒めものをする時はフライパンじゃなくて、鍋を使うんだって。
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語り手
いや、それがふつうだろ?
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語り手
ああ、こらこら油が少ない。周りもちゃんと塗らないとだめだ。ひっついてこげちゃうからな。
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レンジ
わお
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レンジ
はあい
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語り手
そうそう。そんな感じだ。
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クリス
ふふ。
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環境音
カチチッ
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環境音
ボッ
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語り手
まずはお肉を焼くんだ。
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クリス
僕は洗い物してるね。
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語り手
私は頷いた。
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語り手
レンジはボトボトとお肉を入れて、ゆっくりとかきまぜはじめた。
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レンジ
わーーおにく どんどんやけるよー!
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レンジ
すごーい!
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語り手
お肉が焼けるフレンズなんだな。
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語り手
そうそう、そんな感じだ。ひっつかないだろ?
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レンジ
すごーい!
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語り手
すごい!すごい!と目をキラキラさせて大きな声ではしゃぐレンジを、私はほほえましくみつめる。
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語り手
クリスの様子をこっそりと伺うと、クリスも微笑んでいた。私と同じ気持ちなのかもしれない。
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語り手
ここにケドルスがいたらもっと楽しいのだが。
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クリス
あ、帰ってきたの?ケドルス。
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語り手
お?
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語り手
レジがある部屋から茶色いホウキのようなしっぽがぴょこぴょこのぞかせている。
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ケドルス
もうほとんど知り合ったダチ 夏休み終わるからって元いた国に帰ったな。
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ケドルス
暇だからきてやったぞ。
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ケドルス
てつだわねえけどな!
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レンジ
やったー!あそぼー!
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クリス
あ、こら レンジはボクくんのためにカレー作るんでしょ
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レンジ
そうでした
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語り手
私はおもわず笑っていた。
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語り手
一瞬、レンジが見えた。
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語り手
気がしただけだ。
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ケドルス
にんじんでかすぎだろ もっと細かくしろや
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クリス
んもーさっきから 俺の切ったのばっか文句言うー!
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ケドルス
けっ おまえは不器用なんだよ
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語り手
またはじまった。
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レンジ
んん~~っおもい~~!
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語り手
野菜もいれはじめた鍋のかきまぜるスピードが遅くなっていた。
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語り手
きっとレンジの力では具が重いのだろうと思い
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語り手
かきまぜ棒に手を触れる。
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語り手
君がいるのがわかっていたからか
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語り手
レンジの手の感触が私の手に伝わった。
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語り手
懐かしく、暖かい、あの手。
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レンジ
ボクくんのおてて、ごつごつしてる
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クリス
ボクくん レンジみえてる?
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語り手
私はゆっくり顔を横に振る。
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語り手
でも、ちゃんといるってのはわかる。
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ケドルス
ふん あと少しだな。
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語り手
私は頷く。
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完成!
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ケドルス
はん やっぱみんなでつくるカレーはうめえなあ!
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クリス
ケドルスはなんもしてないでしょ
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ケドルス
ははん?ははははん?は~~~ん?
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クリス
わかったから 食事中くらいそういうのなしにして!
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語り手
ケドルスとクリスはお互いのカレーに眠っているでかい鶏肉の取り合いだ。
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語り手
ダジャレではない。
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レンジ
ボクくん これあげるー
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語り手
ちょこんっとでかいにんじんが私の皿におかれた。
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レンジ
にんじんさんすきだから ボクくんにあげるのー
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語り手
こら レンジ にんじんくらいちゃんと食べなさい!
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レンジ
そういうのちがう!すきなやつ!
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レンジ
んもー!どうしてなのー!
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語り手
クリスとケドルスは私たちを見て大笑いしている。私は首をかしげていて。
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語り手
レンジは
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語り手
レンジもきっと笑っている気がした。
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