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環境音
ビュゥゴォオオオオォォォ――
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環境音
ズァァアアアアァアァアアアン――
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環境音
ザァァァアアアアアア――
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環境音
パシパシパシ…
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語り手
唸る風、ヤシの木は大きく揺れて、今でも折れそうだ。
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語り手
海岸近くはもちろん、人はいない――というわけでもなく、車が1、2台過ぎ去る程度だ。
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語り手
90年代の夏のあの日。ボクもクリスも各自、避難をするか事業所内で待機をしているはずだ。
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語り手
しかし、今回だけはみんな違う。
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レンジ
うぉぉおおおお!たいふう!こらー!
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ケドルス
くたばりやがれ オラァー!
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環境音
ビィゴォオオオオオォォォ――
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語り手
えっと、ふたりは何をしているのかと言うと、パトロールだ。
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語り手
しかし、今回ばかりは獲物が大きいからと言って、レンジはケドルスに助っ人を頼み込んでいた。
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語り手
前の世界でも同じことをやっていて私は呆れた。クリスはケドルスに対し呆れている。
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語り手
今回はボクとクリスはデパートにいる。
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語り手
それはなぜかと言うと。
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レンジ
ケドルス!あのくるま!あんぜんなとこにもっていって!
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ケドルス
おう!
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語り手
海岸通りを高速でかけぬけていた車が突然浮き上がり、デパートの屋上の駐車場まで飛んでいった。
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語り手
ケドルスが真下から持ち上げて、空を飛んでいるのだ。
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ケドルス
っらあぁあああああああああああ!
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語り手
運転手は顔面蒼白で、この世の者とも思えない怪物を見たかのように目と口はかっぴらきだ。
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語り手
ハンドルをぐーで握ったまま、自分はもうだめだと死期を悟ったに違いない。
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語り手
そして、何事もなかったかのように傷ひとつもない車と、自分を思い、もう二度と台風の日に車を走らせないという気持ちをもったと思う。
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語り手
そう願いたいではないか。
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レンジ
イーくん!ありがとう・・・!
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語り手
レンジは海周辺を気にしており、波を極力荒れないように操作をしていたり
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語り手
おろかにもサーフィンで溺れた人達、沖に流された人達を
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語り手
友達(海の生物)の力を借りて、なんとか海岸通りの砂浜まで持っていく。
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語り手
それをケドルスがデパートまで運ぶ。
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語り手
意外と大変なのだよ。みなさん。
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語り手
私にできることと言ったら、ボクの脳に語りかけ、デパートの屋上に運ばれてきた人を、クリスとボクが介護し、助けることだ。
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語り手
もちろん近くには事業所の仲間、親父、ラベンダもいる。
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語り手
ケガした人は周りが見てないうちに、ラベンダが近くに寄って、魔法で治す。
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語り手
それが台風が過ぎる5時間くらい続くのだ。
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語り手
やがて、雨と風は止み、夕焼空一面に広がる。
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語り手
その頃には、ボクもクリスも疲れて眠っていて
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語り手
ケドルスとレンジは誰もいない海岸のコンクリートの上に腰掛け
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語り手
夕焼けと静かな海を人が来るまで見つめていた。
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語り手
二人は濡れているコンクリートの上に座っても気にならないのは、レンジの魔法のおかげだろう。
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ケドルス
おつかれ レンジ
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レンジ
ケドちゃんもおつかれ!
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レンジ
みんなーありがとー!
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語り手
海から仲間たちの声がした。
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語り手
ガーゴイルたちが上空で感謝の気持ちを伝えている。
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語り手
私もとても気持ちが良かった。
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レンジ
ねー!ケドちゃー!おれとあそぼー!
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ケドルス
今からかよ 今日はつかれたぜ
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レンジ
あう・・・じゃあ、あしたあそぼ!
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ケドルス
明日なら良いぜ
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語り手
レンジは微笑む。
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語り手
ケドルスも微笑む。
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語り手
前の世界ではレンジにすべてを任せていた。
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語り手
今後は今回のように、みんなで、レンジを支えてあげたい。
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語り手
夏が、変わらないように。
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