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環境音
ゴポポ…
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環境音
ゴプ…
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ボクくん
…あれ、俺、今どこにいるんだ?
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ボクくん
頭がふわふわする…
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環境音
ギャァギャァ…
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レンジ
ボクくん、だいじょうぶ?
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ボクくん
――レンジ?
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環境音
ゴポ…
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クリス
失神したから驚いちゃったよ。
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ケドルス
なさけねえやつだな
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ボクくん
うるせえ、
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ボクくん
そうか――海の中か。
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ボクくん
海の内側から見る空は広々としていて、とても綺麗だなと思った。
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ボクくん
そういえば、ずっとはるか昔に、同じ空を同じ海の底で見つめたことがある。
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ボクくん
そんな、気がした。
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クリス
あ、見て、あそこにカニさんがいるよ
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ケドルス
バターまぶして焼いてやるか?
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レンジ
んもーかわいそうだよー
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ボクくん
クリス達はスイスイと泳ぎながら、カニやクラゲを見つけては手にとって、何か話をしている。
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ボクくん
俺はなんとかバランスを取ろうと身体を動かしていた。
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ボクくん
なんとかなりそうだ。
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環境音
ゴポポ
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レンジ
みんなちゃんと俺にしっかりついてきてね。
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レンジ
じゃないと俺のマホウがきかなくなって
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レンジ
おぼれちゃうからね
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ボクくん
俺は頷いた。
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◎。*。。◎
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レンジ
あれはクマノミのしーちゃん!
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レンジ
しーちゃんはねーイソギンチャクさんといっしょにくらしてるんだよ
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ボクくん
なんか、オレンジにしましまってカンジだな。
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クリス
太陽に透けて中身見えちゃってる!
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ケドルス
イソギンチャクって糸こんにゃく見てえできもちわるっ
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ボクくん
ケドルスは糸こんにゃくみたいなイソギンチャクを足で蹴っている。
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レンジ
ピリッてしない?だいじょうぶ?
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ケドルス
あ?そんなんあるんけ?
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ボクくん
レンジは笑いながらケドルスとイソギンチャクを触って楽しんでいる。
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ボクくん
クリスは岩にひっついた苔をはぎ取って、それを手の中でひっくり返して、まじまじと見つめていた。
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クリス
こういうのってラベンダは魔法の材料だって言ってたなあ
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ボクくん
緑の薬草系はみんな魔法につかえそうだけどな
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クリス
なんかそういうイメージ僕にもあるー!
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環境音
ゴポポポ…
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ボクくん
ふいにケドルスが沈没船を見つけたと大声を出した。
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ボクくん
クリスは後を追い始めて、俺も後をつけようと泳ぎはじめた。
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レンジ
あ、だめ、だめ!みんなはなれちゃだめ!
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ボクくん
レンジは俺に一瞬にして追いつくと、先に行ってしまった二人を見ながら、ほっぺを膨らませる。
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ボクくん
とりあえず、二人に追いつこう。
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レンジ
…わかった。
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◎。・。*.。・◎
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ボクくん
その沈没船はとても大きく、表面は板でくっつけて作った感じだ。
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ボクくん
マストが折れていたり、マストから垂れてる帆は溶けたチーズみたいだ。
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レンジ
いますぐそこからはなれて?
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クリス
なにかあるの?
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レンジ
そこはししゃがさまよっているの。
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レンジ
とりこまれるとあぶないよ
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ボクくん
ケドルス、レンジの言う通りにした方がいいぞ。
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クリス
ケドルスー!
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ケドルス
てめえら 幽霊なんか存在するわけねえだろうが!ガキ!
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ボクくん
ケドルスはすいすいと沈没船に近づいていく。
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ボクくん
レンジはケドルスに追いつこうとしたが、レンジが離れてしまったら私たちが危ないと思い
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ボクくん
クリスの腕をつかんでレンジの傍に急いで泳いだ。
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環境音
ゴゴゴ…
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ボクくん
沈没船の床に足をつき、俺は天井を眺めた。
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ボクくん
もうすっかり底に来てしまったらしい。太陽が小さく、心細くきらめく。
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ボクくん
視点を落とすと、ケドルスが船の中に入ろうとしているのが目に留まった。
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クリス
あのおバカ…ケドルスったら!
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レンジ
ボクくん、クリス、俺につかまって。
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ボクくん
言われた通りにする。
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ボクくん
レンジは二人にしがみつかれているにも関わらず、優雅に泳ぎながら、船に入る。
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ケドルス
おい。
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ケドルス
なんかいる。
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ボクくん
ケドルスが指を差した方向には折れて苔だらけになったテーブル、火のついていないレンガ。カーペットで椅子が引っかかって、微妙に浮いている。
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ボクくん
その先に青白い何かが見えた。
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ボクくん
ふ、と俺はレンジの手を放して、泳いで近くに寄った。
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ボクくん
理由はない。
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ボクくん
ただ、それをみたら、なんだか。
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レンジ
ボクくん!!
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ボクくん
小瓶に入った、青白い塊。
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ボクくん
これは、なんだろう?
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ボクくん
こえが、きこえる
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ボクくん
いでっ
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ケドルス
しっかりしろ、アホ。
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ボクくん
…取り込まれるとこだった。
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レンジ
だいじょうぶ!?
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ボクくん
ああ、ケドルスが助けてくれたよ。
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レンジ
よかった――
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レンジ
もどろ?
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ボクくん
私は頷き、そこから離れようとした。
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ボクくん
しかし…
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ボクくん
みんなが前を向いた隙を見計らって
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ボクくん
私はその小瓶を拾って、作業着のズボンのポケットに入れた。
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ボクくん
そして、急いでレンジの元に戻った。
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ボクくん
誰も、私のしたことには、気づいていないようだ。
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ボクくん
あのこえは…
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ゴポ…
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ケドルス
結構奥深くまで来ちまったけど、まだ泳ぐわけ?腹減った。
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レンジ
つれていきたいとこあるから、もうちょっとガマンして
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ケドルス
しゃあねえなあ
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クリス
アポロンダリ帝国ってこれ以上に深いところにあるの?
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ボクくん
レンジは頷いている。
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ボクくん
私は小瓶が太ももに当たるのが伝わってきた。
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ボクくん
あのこえは
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レンジ
でもアポロンダリていこくはいかないの。
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レンジ
きょうきげんわるかったから。
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ケドルス
おいみろ!くじらだ!
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レンジ
たいしょーってなまえ!おっきいでしょー!
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クリス
直に見たのは産まれてはじめてだよ・・・すごいなぁ
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レンジ
このおくにいくよー!
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ボクくん
レンジは俺の腕をつかんだ。
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ボクくん
ひっぱられる感覚。
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レンジ
だいじょうぶだよ
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レンジ
俺をしんじて?
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ボクくん
私はただ、ボケーッと頷くことしかできない。
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ボクくん
今はできない。
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ケドルス
おめーらおせーよ はやくこいよ
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レンジ
んもーまってよー
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ボクくん
このさきには、なにがある?
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ボクくん
そんなことはどうでもよかった。
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ボクくん
この小瓶に触れたい。
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ボクくん
その気持ちしか、なかった。
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レンジ
もうすぐだよっ
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ボクくん
洞窟の奥がきらきらとかがやいているようにみえた。
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