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語り手
世界は同じことで繰り返されている。
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語り手
少し道から逸れる行動をとったとしても、いつかは終着点にたどり着く。
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語り手
それでも世界を変えたいのならば、それなりに大きく行動をしない限り意味がないのだ。
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語り手
あくまで憶測にすぎないこともあるかもしれないが、できる限り見てきたことをみなさんに情報提供していくつもりだ。
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語り手
もう何十周もしてきた世界のほんの些細な想い出。
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病院内にて
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語り手
ケドルスが病院に来ておばあちゃんのところへ行き、お菓子ついでにお見舞いをしに来ている話はしたと思う。
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語り手
実際のところ、いま、私は病院内にいる。
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語り手
もちろん、この姿は誰にも見えていない。
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語り手
…レンジにも。
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ケドルス
よーばーちゃん 元気かあ?
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語り手
扉が開いたと思ったら、ケドルスが入ってきた。
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語り手
腕にはお見舞いで買ってきたのか、おやつやら花まで持ってきていた。
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語り手
おばあちゃんは手元にあるスイッチで布団ごと、身体を上げた。
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ケドルス
調子はどうなんだ?
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語り手
ケドルスは近くの椅子によっと、座り、おばあちゃんに話かけている。
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語り手
外は変わらず、台風の雨。
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語り手
風は幸いにも吹き付けてくる方向ではなく、病室内は雨のたたきつける音と、電子音がぴっ、ぴっ、と魂に刻む。
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語り手
おばあちゃんは口をもごもごさせて、ゆっくりと、言葉を繋いだ。
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おばあちゃん
だいじょうぶ、ありがとねぇ コウちゃん
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ケドルス
くたばんなよ
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語り手
おばあちゃんはケドルスの頭に手をゆっくりのばし、ほとんど力もなくなでなでした。
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語り手
ケドルスはよせやいと言いながらもニコニコだ。
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おばあちゃん
コウちゃん はな、もってきてくれたのかい?
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ケドルス
あー うん 花瓶にいれとくよ
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おばあちゃん
よい、かおりだねぇ
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語り手
ケドルスは席を立つと、枯れかけている花を手際よく入れ替えている。
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おばあちゃん
すこし、げんきになったきが、するよ ありがとねぇ
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ケドルス
礼なんていらねえよ
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語り手
この二人の関係性、おばあちゃんに関して説明をすると
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語り手
おばあちゃんの孫、家族はみんな外国にいる。おじいちゃんがたまにきて介護をするのだ。
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語り手
しかし、どうにも夫婦仲は宜しくなかったのか、おじいちゃんの方は態度がよそよそしい。
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語り手
コウちゃんは孫のことだろう。おばあちゃんにはケドルスの姿は孫に見えてしまうようだ。
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語り手
だからケモノの耳やしっぽが出ていても不思議がらないのかな、と思ったら
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語り手
これもラベンダの魔法で気にならない装飾品グッズみたいな感じにしているようだ。
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語り手
あまり関係はなかった。
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ボクくん
あれ、おい ケドルス
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語り手
病室のドアからボクが顔をのぞかせる。
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語り手
どうやら、ケドルスの跡をついてきたみたいだ。
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ケドルス
んだよ お前はお前のおやじを心配しろよ
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ボクくん
いや、おれのおやじなら、今日退院するよ。
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語り手
ボクはケドルスが座ってるところまで近くによって、おばあちゃんとの雑談に入り込む。
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語り手
おいこら、あまり茶化したりするなよ?
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ボクくん
わかってるっての。
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おばあちゃん
コウちゃんの、おともだちかい?
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ボクくん
ボクってなまえだ
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おばあちゃん
そうかい、そうかい おかしいっしょにおたべよ
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語り手
おばあちゃんはテーブルを自分の近くに寄せて、ケドルスが置いたおやつの袋を開ける。
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ボクくん
え、いいんすか?
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語り手
ケドルスはあまり良くない表情を浮かべていたが、おばあちゃんがうなずいたため、何か言うのはやめたようだ。
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語り手
今回においては、老人の心使いは素直に受け取っておくべきだろう。
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ボクくん
なあ、座敷童
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語り手
なんだい?
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ボクくん
おばあちゃん後どれくらいの命なわけ?
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語り手
まあ、今月と言うべきか。ケドルス次第だな。
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ボクくん
がんばれよ ケドルス
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ケドルス
なにがだよ!?
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語り手
そんなこんなでまったりと雑談を交わしたのであった。
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