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語り手
今日は寄りたいとこがある。
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語り手
クリスが働いているお店だ。
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語り手
とは言っても、今は仕事中なのだが。
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ボクの父
うぉーい、一緒にはこんでくれ。
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ボクくん
あいよー!
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語り手
親父は木材の近くで立っている。
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語り手
私は角を持った。
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ボクくん
んっしょ!
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語り手
腰が痛くならないのはとても良い。
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ボクの父
グアァアアァアアア!!!
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語り手
親父のようになるからな。
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語り手
仕事仲間が一斉に、親父と私が立つ場所に駆け寄って、声をかけてくる。
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語り手
完全に腰をやってしまったらしい。
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語り手
エンじいが救急車を呼んだ。
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語り手
そっこーで親父は病院に担ぎ込まれたのだった。
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語り手
っとまあ、こうして後で冷静に振り返ってみると、前の世界でも似たようなことが起きて
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語り手
それが理由で、8月終わりまで滞在することになったと思う。
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ボクくん
おやじ、だいじょうぶ?
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ボクの父
・・・すまん、後は任せた
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ボクくん
お、おやじい!!!
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語り手
今にして思えば、私もみっともない顔を親父に見せてしまった。
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語り手
病院に付き添った後、私は静かに泣いた。
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語り手
いや、親父は結果的には無事だったので、死んだとかそういうわけではなかったのだよ。
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語り手
ただ、親父も歳だったので、心配だったのだ。
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病室にて。
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ボクくん
おやじ
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ボクくん
飲み物買ってきてやるぞ。何がいい?
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ボクの父
コアラのモーチ
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ボクくん
それ、お菓子だから
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語り手
ポカリのついでに買ってきてあげるとするか。
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語り手
私は病室を抜けた。
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語り手
待合室に自販機を見かけたのだが、子供の身長じゃ高すぎるんだよなあ。
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語り手
ここの海岸通りの不満点と言えば、自販機の高さが子供に優しくない、という点だな。
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語り手
自販機をにらみつけていると、私の名前を呼ぶ声がして、後ろを振り向いた。
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ボクくん
あれ、ケドルスじゃん。こんなとこでどうしたんだよ。
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ケドルス
オレ様はお見舞いだ!
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語り手
小さい両手いっぱいに抱えた紙袋。顎を少し上げている。
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語り手
めずらしいとこもあるものだ。
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ボクくん
誰のお見舞いだ?
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ケドルス
秘密だー!ついてくんなよ!
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ボクくん
おれも用事あるから、お互い触れないでいいな。んじゃ。
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語り手
っと、自販機に向き直し、手をのばす。ん~~~~っ届かない!!
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ケドルス
チビ
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ボクくん
んだと!?
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語り手
声を荒げた瞬間、ケドルスは笑い声をあげて、走って逃げやがった。
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語り手
途中、ナースさんがケドルスとすれ違い、コラ、走ってはいけませんっと、過ぎ去っていくケドルスに注意していた。
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語り手
それよりも、耳としっぽにツッコミは入れないのか。
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語り手
私はナースに声をかけ、お金を渡し、代わりにポカリを買ってもらったのだった。
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語り手
病室に戻ると、エンじいがお見舞いに来ていて、仕事についての話をしていたらしい。
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語り手
予想通り、おやじ抜きで仕事をはじめ、おやじは休息を取ることになったようだ。
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語り手
エンじいは私に対し、外に遊びに行ってこいと言ってくれたが、今日くらいはおやじのそばにいたい気持ちもあった。
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ボクの父
じいさんと話があるから、お前は外で遊びに行ってきなさい。
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語り手
どうも、わけありな雰囲気だったので――
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ボクくん
わかった。そうするよ。またあとでくるよ。
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語り手
私は病院を出て、クリスのいるお店に向かった。
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海岸通りにて
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語り手
クリスの言っていた地図の印を元に、私は海岸通りを歩きながら、お店を探した。
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語り手
観光案内地図はあちこち穴が空いており、太陽でオレンジ色の影をつける。
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ボクくん
はーもう、はやくスマホ発売しろよな!!
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語り手
現在地を確かめるために地図を広げていた。
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語り手
しかし、暑い!!!!
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語り手
カラッとした天候は汗のしずくを作り、手のひらに伝ってスコップとのぬめりを作る。
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語り手
スコップを手ぶらな方の脇にはさみ、ズボンのポッケに入れていたタオルで、握っていた方の手のひらを拭きなおした。
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語り手
ついでに空を見上げると、脳みそが一瞬でまっしろになる。
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ボクくん
…あちー…。
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語り手
目をぎゅっと閉じれば、太陽の曙光でオレンジのカーテンの完成だ。
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語り手
最近、がんばりすぎかもしれないな。
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語り手
だが、まだまだ、ボクはいけるだろう?
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ボクくん
・・・っ、よし、いくか。
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語り手
私は再び移動を開始した。
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クリス
あ、きたきた
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クリス
ボクくーーん!こっちー!
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ボクくん
おー!
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語り手
手を振っているクリスのとこまで、工具ベルトをガチャガチャ鳴らしながら、私は走った。
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ボクくん
ここはクリスとケドルスのひみつきちかー
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クリス
あはは!なにそのたとえ!おもしろい!
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語り手
あえ?
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語り手
あー、えっと、とりあえずクリスのお店はフラワーショップなのはわかった。
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ボクくん
外観は花柄の木彫りかあ、センス良いな。誰に作ってもらったんだ?
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クリス
そんなの僕は知らないよ!
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ボクくん
それもそっか。
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語り手
取っ手は私の顔が見えるくらいピカピカの鉄製だ。金槌みたいにカーブになっている。
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語り手
クリスが先手切って取っ手をつかんだ。
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語り手
ギィーッと扉を開き、呼び鈴が頭の上から鳴る。
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カランコロン
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ボクくん
おっ、すずしいじゃん
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ボクくん
それに スッゲー良い香りする!!!
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語り手
クッキーの匂いが店内の奥からする。
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語り手
私はクリスの後を歩きながら、店内の品々を見渡してみる。
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語り手
色とりどりの、私の住んでいる国でも見かけなかった花が並んでいる。
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語り手
木製の棚が左右の一番壁際に置かれており、その中にはやっぱり見たことがない国の品物がある。
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語り手
天井は…高さがおかしい。
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ボクくん
なあ、クリス、外観の建物より大きい気がしないか?
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クリス
ふふっ
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クリス
そーれーはーねー
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語り手
クリスはおもしろがっている。
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ボクくん
まさか、天井の張り紙がだまし絵みたいに見えるだけか?
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語り手
1階と、2階までの天井は吹き抜けになっており、2階は本棚で埋め尽くされている。
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ボクくん
魔法みたいだな
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語り手
素直にそう思った。
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クリス
魔法なんだよね
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語り手
そう答えるクリスに対し、なぜか納得したし、
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語り手
少しずつ、彼を理解しつつある自分が可愛かった。
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クリス
うん ボクくん来たよ
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ボクくん
やっぱり、レンジもいたのか。
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クリス
うん 僕のおじいちゃんは今ちょっと出かけてるけど。
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クリス
レジカウンター入ってきて大丈夫だよ
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語り手
こげちゃ色の木製のレジカウンターだ。
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語り手
テーブルは黒く、ツヤも入っており、レジ打ちする機械もこげちゃ色だ。
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語り手
電話は指をいれて回転するやつ、のようだな。
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ボクくん
色んな物が置かれているな。いつの時代のものかもわからないのもあるしなぁ・・・。
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ボクくん
変なお店
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クリス
あははは!僕も最初来た時は同じこと思ったよ!
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クリス
レンジも最初 おかしい!おもしろい!ってねー!あははは!
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語り手
おもわずにやける。
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語り手
クリスはなんだかんだと
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語り手
レンジの姿も声も聞こえない私と、同じく、私に声が届けられないレンジとの関係を、一生懸命つないでくれている。
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語り手
それは、ケドルスも同じか。
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語り手
二人には頭が上がらない。
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ボクくん
おおっ、このクッキー美味いな
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クリス
それ、レンジとオレで作ったやつだよー
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レンジ
クリスとねー!いっしょにねー!つくったのー!
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ボクくん
うん、美味い。
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レンジ
やった~~~!
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ボクくん
!?
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語り手
急にドンッと何かにぶつかる音がした。
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ボクくん
レンジか
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語り手
クリスはうなずく。
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ボクくん
…。
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語り手
頭をなでたかった。
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クリス
二人って、付き合ってるの?
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レンジ
ほあ!?
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ボクくん
ぬあ!?
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語り手
それは断じてありえない。私が愛しているのは妻だけだ。
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語り手
だが、ボクが好きなのは間違いなくレンジなのだが
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語り手
レンジはボクのことを好きだとも限らないよな?
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ボクくん
んや、友達みたいなもんだろ
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レンジ
…うん
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クリス
ふーん。はー、おれもさーもうちょっとケドルスとそれくらい仲良くできればなあ。
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語り手
クリスはコーヒーミルクをすすりながら、クッキーを1枚、口に頬張る。
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ボクくん
そういや、クリスとケドルスはどうしていつも一緒にいるんだ?
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語り手
クリスはびっくり仰天で私を見つめると、首を横に何度も振った。
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クリス
とんでもない!ずっと一緒にいたら死んじゃうよ!
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レンジ
ケドちゃんとも、ナカヨシになればステキだとオモウんだけどなー
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クリス
ケドルスがここのおじいちゃんの家族みたいなもので
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クリス
別に、ケドルスとは友達ってわけでもないかなあ。
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語り手
クリスはためいきをつく。
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レンジ
トモダチってなんだろう?
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ボクくん
まあ、少しとっつくと倍返ししてくるから、そこは疲れるけど
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ボクくん
でも、あいつなりに人を想うことはあるんだろうなあって思うよ。
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語り手
病院内で起きたいきさつを二人に伝えてみた。
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レンジ
ボクくんのパパ、だいじょうぶなの?
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クリス
ボクくんのお父さんは大丈夫?
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ボクくん
そっちの心配かい!
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ボクくん
おやじは大丈夫だと思う。
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語り手
クリスは天井を見上げ、前髪を吹いた息で少し上げる。
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クリス
ケドルスについては
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クリス
あいつ お見舞いに来た人にはお菓子をくれるおばあちゃんがずっと入院してるんだけど
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クリス
お菓子目当てだと思う。
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ボクくん
まじかよ
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語り手
ブレないな、アイツ。
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レンジ
そうなのかなあ
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語り手
クリスは深くうなずいた。
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語り手
ケドルスについてはまだまだ研究が必要なようだ。
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