• ピチョン・・・

  • 語り手

    ここは、どこだ?

  • 語り手

    すごく、さむい。

  • ボクくん

    ここは、海の底だよ。

  • 語り手

    きみは、わたしか。小さい頃の?

  • 語り手

    小さい頃の私はあぐらをかいて、私から少し離れたところで、座っていた。

  • ボクくん

    ちいさい、ちいさいって言うな。

  • 語り手

    海の底ってどういうことだ?

  • 語り手

    なぜ、わたしはここにいる?

  • ボクくん

    本来はどこにいたのか、あんた、覚えてるわけ?

  • 語り手

    ・・・

  • 語り手

    いや。わからない。

  • 語り手

    覚えて――ない。

  • ボクくん

    まあ、そーだろうよ

  • ボクくん

    いまは、おれが、記憶を持ってるんだからな。

  • ボクくん

    ・・・記憶を戻すぞ。

  • 語り手

    彼は私に近づくと、手を握った。ふにっとした、暖かく。

  • 語り手

    一瞬、ちかっとした。

  • 語り手

    そうか、あの時、さまよう者にタマシイを抜き取られかけたのか。

  • ボクくん

    んで、俺はあんたから記憶を一時的に引っ張って、

  • ボクくん

    肉体から1度、離れたんだ。

  • 語り手

    私たちの肉体はどこに?

  • ボクくん

    たぶん、ケドルス達が持って行っちまったわな。

  • 語り手

    なら、陸に上がって合流しよう。

  • 語り手

    しかし、いくら念じてみたり、心の中で手足を動かしたつもりでも

  • 語り手

    水面にたどり着くどころか、近づくことも、出来なかった。

  • ボクくん

    無理だって。

  • 語り手

    彼は上着ポケットからタバコを取り出すと、ライターで火をつけた。

  • 語り手

    タバコ吸えるのかよ

  • ボクくん

    ここは、蓋のされたビンの中。

  • ボクくん

    ほら、たくさんのタマシイが閉じ込められた、あの瓶だよ。

  • 語り手

    ケドルスと見つけた、あの瓶・・・。

  • 語り手

    あれはなんだ?

  • ボクくん

    憶測だけど、船が沈没した時に死んだいきもののタマシイを

  • ボクくん

    誰かがふうじこめたんじゃね?

  • 語り手

    ・・・そう、考えつくか。まあ、そうか。お前は俺だから。

  • 語り手

    だけど、この島はそういう災害は無かったと、前に図書館で調べた時は記載されていたはずだ。

  • 語り手

    なら、これは第二次世界大戦前の船なのだろうか?

  • ボクくん

    この瓶、作ったやつ、たぶんさ、アポロンダリのおっさんじゃねえかな?

  • 語り手

    根拠は?

  • ボクくん

    なんとなく。

  • 語り手

    まあ、いまはどうやってここから出るかだ。

  • ボクくん

    待とうぜ。ケドルスたちを。

  • 語り手

    気づいてくれるかな・・・

  • ボクくん

    信じよう。

  • 語り手

    そうだな・・・。

  • 語り手

    ・・・。

  • 語り手

    おまえは、ずっと、いたのか?

  • ボクくん

    なんのはなし?

  • 語り手

    俺の心の中に、いたのか?

  • ボクくん

    心の中というより。

  • ボクくん

    ずっと、みんなのそばにいたよ。

  • 語り手

    気づいてやれなくてすまん。

  • ボクくん

    しょうがねえよ。

  • ボクくん

    でも、嬉しかったぜ?

  • ボクくん

    宿題全部やってくれたり、さ。

  • ボクくん

    親父との関係もいー感じにしてくれたじゃん。

  • ボクくん

    さんきゅーな。

  • 語り手

    ・・・でも、そろそろお前に返してあげたいよ。

  • 語り手

    レンジも、肉体も、このスコップも。

  • ボクくん

    おまえはどうすんだよ。

  • 語り手

    おれは――。

  • ごぽぽ・・・

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