君がいたから

  • ボクくん

    色んなことがあったなと思う。

  • ボクくん

    いっぱい笑って、いっぱい喧嘩して。

  • ボクくん

    それでも、ここまでこれたのは

  • 君がいたから
  • ボクくん

    海を泳ごうという話になった。

  • ボクくん

    正直、俺は泳ぐのが怖くて。

  • ボクくん

    ガリガリ君(ソーダ味)を口にもごもごさせながら

  • ボクくん

    海を体育座りで見ていた。

  • ボクくん

    まだ、早朝。

  • ボクくん

    レンジも、クリスも、ケドルスも起きていない。

  • ボクくん

    人もまだ、少ない。

  • ボクくん

    はあ…。

  • ボクくん

    ため息がこぼれる。

  • ボクくん

    足でもつけてみるか。

  • ボクくん

    早朝は涼しくて良いな。

  • ボクくん

    足をふみいれると泡がしゅわしゅわと足首を刺激する。

  • ボクくん

    とても心地が良い。

  • クリス

    ボクくーーん

  • ボクくん

    おっ、おはよークリス。

  • ボクくん

    クリスは大きく手をふりながら、海岸通りから、砂浜に続く階段を降りてくる。

  • ボクくん

    ケドルスは?

  • クリス

    まだ眠いから起こすな―だって!

  • ボクくん

    クリスは靴と靴下を脱ぐと、海に足をつからせる。

  • クリス

    わっ!つめたっ!!

  • ボクくん

    がははっ、さすがに朝は冷たいよな!

  • ボクくん

    クリスは急いで浜にあがると、砂の上で足を踏み踏みしている。

  • ボクくん

    俺も砂に上がり、クリスと砂でお城を作り始めた。

  • ボクくん

    やがて、人通りが多くなってきて、日差しが強くなってきた頃に

  • レンジ

    ふたりともおはゆ

  • ケドルス

    おめーら朝はえーんだよ

  • レンジ

    けどちゃーん!おはゆー!

  • ボクくん

    いつものメンツが揃った。

  • お昼休み
  • 海のおじちゃん

    何を注文するかえ?

  • ボクくん

    俺、ホットデビルサンド2個。

  • クリス

    えっと、えびたっぷり焼きそば大盛り!

  • ケドルス

    ホットデビルサンド
    えびたっぷり焼きそば
    お好み焼き 大。
    つけあわせは――

  • レンジ

    えっとねーおでん!おでんたべるー!

  • 海のおじちゃん

    はいはい、ちょっとまってね――

  • ボクくん

    5、6人は座れそうなところをなんとか確保して、俺たちは飯をテーブルに並べる。

  • レンジ

    はい、ガードリアくん いつもありがとね。

  • ボクくん

    ガードリアが見えないところで餌をつついている。

  • ボクくん

    そこに、夏がいる。

  • クリス

    うわっ、やっぱりホットデビルサンド辛すぎるよ!

  • ケドルス

    みろ、このお好み焼きチーズみたいにのびるぜ。ほおら。

  • レンジ

    たべものであそんじゃだめ!

  • ボクくん

    クリスと俺が大きく笑うと、ケドルスは理解できない顔で俺たちを見つめる。

  • ボクくん

    レンジもおそらく、まじめにケドルスにめっとしたのだろう。

  • ボクくん

    ホットデビルサンドをちびりながら、早朝、クリスに言われたことを思い返していた。

  • ボクくん

    記憶はやっぱり消すって?

  • クリス

    うん。それが時の旅人のしきたりなんだって。

  • クリス

    ラベンダも結構考えて発言してくれてたよ。

  • ボクくん

    そっか。

  • ボクくん

    さびしくなるな。

  • クリス

    …ボクくん

  • ボクくん

    なんだ?

  • クリス

    ごめんね

  • ボクくん

    しょうがないさ。

  • ボクくん

    どんなに楽しい思い出でも、おじいちゃんになればみんな忘れてしまう。

  • ボクくん

    あいつのことも。

  • クリス

    そうだよね、ケドルスもラベンダも同じことを言うと思う。

  • ボクくん

    だから、よかった。

  • クリス

    え?

  • ボクくん

    おじいちゃんで、レンジ、クリス、ケドルスに。

  • ボクくん

    また、出会えたから。

  • だから。
  • ボクくん

    皆に出会えてよかった。

  • ケドルス

    うおっしゃ。

  • ボクくん

    ケドルスはすっからかんのお皿をゴミステーションにもっていった。

  • クリス

    相変わらず食うのだけは速いな。

  • レンジ

    えびたべていい?

  • クリス

    どうぞ~♪

  • レンジ

    やったー!

  • ボクくん

    クリスは俺としゃべっていたためか、まだ焼きそばは少し残っていた。

  • ボクくん

    ぷちぷちのエビが宙に浮くと、レンジはぱくっと食べた。消えた。

  • ボクくん

    レンジの声と、レンジの気配を感じとることはできるようになってから

  • ボクくん

    夏休みの初めに来た頃と比べ、俺は随分と急がなくなったなと思う。

  • ボクくん

    このままでも良いのかなと思った。

  • ボクくん

    海を見れば、レンジがいるってわかったからかな。

  • ボクくん

    でも、このままで良いはずもない。

  • ボクくん

    よし、泳ぐか。

  • クリス

    お。およぐ?大丈夫?

  • ボクくん

    いつまでも海を怖がってちゃしょうがねえからな。

  • ボクくん

    泳げるようにみんなで手助けしてくれたら助かる。

  • ボクくん

    クリスはうなずいた。

  • ケドルス

    けっヒヨコがよお 俺様は手伝わねえぞ。沖まで先に泳いでやるからな。

  • ボクくん

    がはははっわかったよ。

  • ボクくん

    レンジも良いか?

  • レンジ

    うん

  • クリス

    じゃあ、勇気が出るように。

  • ボクくん

    クリスが手をのばした。

  • ボクくん

    続けてケドルス。

  • レンジ

    大丈夫だよ。

  • ボクくん

    …レンジ?

  • レンジ

    僕を信じて。

  • ボクくん

    俺は手をのばした。

  • ざぷ。
  • 環境音

    ぶくぶく…

  • 環境音

    ゴゴゴ…

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