03:28
誠司が柔らかなベッドの上で目を覚ましたとき、部屋の中に差し込む光はなかった。直感でまだ未明だろうと判断し、枕元の照明用スイッチには触れないようにする。いつの間に寝てしまったのか、きっと大量の汗をかいただろうに肌に不快感はなかった。多分隣で寝息をたてている新太が後片付けをすべてやったのだろう。
誠司はできるだけ静かにベッドから抜け出した。部屋を出るのは朝でいいはずだが、出る前にバタバタするのは避けたいし、一応自分でも身体を洗っておきたい。バスルームは照明をつけなくても夜目で使えそうだった。身につけていたガウンの下には、誠司が寝落ちしたときには付けていなかった下着が履かされていた。寝ている自分を必死に世話している新太を想像すると、愛おしさが胸に満ちる。
絵本に出てくる魚のような形の泡立て用スポンジが、ボディーソープのそばに置かれている。二人共慣れない場所に完全に浮足立ってしまって、ロビーであれもこれもいるかも、と持ってきてしまったものの一つだ。結局スポンジは必要だから良かったけれど、普段飲まないハーブティーのティーバッグは二人しかいないのになぜか三つ持ってきてしまった。泡立ったスポンジを身体に這わせる。二つの身体がある一瞬一つにならんばかりに近接し、しかしまったく別々のものであり、時が経てば本当に一瞬でも一つだったのかも怪しいが、誠司の身体の普段使わない筋肉はもう痛みだしていた。記憶に残っているとおりのことを間違いなく体験したのだ。誠司がバスルームの照明をつけなかったのは、新太のためばかりではない。
誠司がベッドに戻ると掛け布団が場所を譲るようにそっと動いた。新太が重いまぶたをこすりながら、誠司がいるらしき方向に顔を向けている。
「電気点けても、良かったのに」
「ごめん、起こした?」
「だいじょぶ、すぐ寝れる」
新太のまぶたは開ききらず、その言葉通りすぐ眠りへ落ちていった。
「ありがと、新太」
「ウ、ゥー…」
「……朝にまた言うから」
熟睡する新太の温めた寝床は暖かく、日が昇るまできっとよく眠れるだろう。荒れた街の喧騒は遠く、ホテルの一室は二人の穏やかな寝息で満たされた。
誠司はできるだけ静かにベッドから抜け出した。部屋を出るのは朝でいいはずだが、出る前にバタバタするのは避けたいし、一応自分でも身体を洗っておきたい。バスルームは照明をつけなくても夜目で使えそうだった。身につけていたガウンの下には、誠司が寝落ちしたときには付けていなかった下着が履かされていた。寝ている自分を必死に世話している新太を想像すると、愛おしさが胸に満ちる。
絵本に出てくる魚のような形の泡立て用スポンジが、ボディーソープのそばに置かれている。二人共慣れない場所に完全に浮足立ってしまって、ロビーであれもこれもいるかも、と持ってきてしまったものの一つだ。結局スポンジは必要だから良かったけれど、普段飲まないハーブティーのティーバッグは二人しかいないのになぜか三つ持ってきてしまった。泡立ったスポンジを身体に這わせる。二つの身体がある一瞬一つにならんばかりに近接し、しかしまったく別々のものであり、時が経てば本当に一瞬でも一つだったのかも怪しいが、誠司の身体の普段使わない筋肉はもう痛みだしていた。記憶に残っているとおりのことを間違いなく体験したのだ。誠司がバスルームの照明をつけなかったのは、新太のためばかりではない。
誠司がベッドに戻ると掛け布団が場所を譲るようにそっと動いた。新太が重いまぶたをこすりながら、誠司がいるらしき方向に顔を向けている。
「電気点けても、良かったのに」
「ごめん、起こした?」
「だいじょぶ、すぐ寝れる」
新太のまぶたは開ききらず、その言葉通りすぐ眠りへ落ちていった。
「ありがと、新太」
「ウ、ゥー…」
「……朝にまた言うから」
熟睡する新太の温めた寝床は暖かく、日が昇るまできっとよく眠れるだろう。荒れた街の喧騒は遠く、ホテルの一室は二人の穏やかな寝息で満たされた。
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