無題

 日替わりランチにスマートフォンのカメラを向ける。そんなところを、向かいに座る新太にしげしげと見られている。
「意外?」
「そんな、撮るほどのもんかな。映えてる?」
「映えてる映えてる」
 今日のランチはハンバーグに目玉焼き、添えられているのは茹でたにんじん、サラダとライス。この目玉焼きが硬すぎず脆すぎずなところがハンバーグと合ってて好きだ。新太が作ってくれるとこうなる。親父さんが作るともっと固めで、それはそれでおいしい。画角的に皿の奥に新太の上半身が少し見切れる。顔まで入れようか。それじゃああまりに記念写真すぎる?
「インスタやってたっけ」
「やってないよ」
「えっじゃあこれ何用?」
 意図のわからない撮影に新太は笑う。何用だろうね、と返したはずみでシャッターが鳴る。ついでに新太も撮る。
 ブレた新太にいいから、はやく食えって!と促された。
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