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 眠い。眠すぎる。久々の夜ふかしはだめだ。翌日に響く。でも夜ふかしが翌日に響くようになるなんて、かつては思いもしなかった。昼夜を問わずレッドラムをさばいていたときは、深夜一時はまだ早い時間だったし。
 体力の消耗は隣で寝ている誠司より、俺の方が激しかった。かと言って、休日を丸一日寝て過ごすつもりはない。
「新太は寝てても良いよ」
「どっか行くの」
「何かお昼買ってくる」
「俺も行く」
「ごめんなんか、無理させて」
「無理させた自覚あんのかよ。じゃあ昼おごって。サイゼで」
「朝から?」
「もう昼だし。昨日よりマシだろ」
 あー、と気の抜けた同意の声。その顎の下に小さなニキビの予兆がある。
 昨日の昼に待ち合わせて、誠司の家で映画を見て、飯を食べて。そろそろ帰るかなあと思ったら、
「帰るの?」
「じゃあ、いる……」
 それで、そこからソファーで戦争映画とホラー映画の二本立て。その間にポテトチップス一袋、ポップコーン一袋開けた。麦茶は白湯になるまで飲んだ。泊まってほしいならはやく言えばいいのに。お互い最後のエンドロールで寝落ちて、首の痛みで起きて、一つの布団で寝直した。
 昼前のサイゼは当然混んでいる。順番待ちの店内には椅子があって、記名の済んだ順に座っていく。慌ただしい厨房が見える。どんなに慌ただしくても結局向こう側で、ぼんやり見ているうちに飽きてくる。飽きてくると睡魔が襲う。視線の向きはそのままに、まぶたが落ちる。
 カーン!と高い音。大丈夫!?と叫ぶ声。皿を落とした。落としたのは割れる皿じゃないから、慌ただしさは止まらない。オーダーのベルが鳴るたびに、皿を持ちながら飛び出していく店員。店員の中には血みどろの女がいて、素早い兵士がいる。兵士は全然女っ気はなかったけど、血みどろの女は血みどろになる前に男と楽しく過ごしていた。ロマンチックな雰囲気だったかもしれない。ていうかなんで、
「……なんであんなに、映画見ることにしたんだっけ」
「えっ、今?」
「なんか約束してた?お前そんな映画好きだっけ」
「いや、してないけど。何かお互いに知ってるものが増えたら、いいかなと思って」
「正直一日に三つも見たら、細かいとことか全然覚えてないんだけど」
 いいよそれでも、と誠司は笑う。
「最悪、恋人に振り回された日があったなって、思い出になれば」
「無理に振り回さなくてもいいけど」
「それはまあ、そうだけど」
「だって振り回さなくても好きだし」
「えっ、うん、」
「振り回されても最悪じゃねえし」
「……ありがとう」
 俺の突然の惚気に、誠司が驚いているのが少し面白い。振り回したいってこういうことか。わからなくはない。

「でも、組み合わせはめちゃくちゃだったな……」
「名作ではあったでしょ?」
「なんかあんま、余韻がなかった」
「ああー……」

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下記の診断メーカーから着想を得ました
厨房で寝る。とうめいの夢。
#shindanmaker
https://shindanmaker.com/509717
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