HiGH&LOW〜THE STORY OF ZOMBIE〜

そこは昔「イトカン」と呼ばれたレストランだった。
SWORDのS、山王連合会のたまり場だったレトロな雰囲気の店内には、食事を提供する人間も、食事を必要 とする人間も、もういない。
閑散とした店内には、学童用の縦笛と取っ組み合う二人のゾンビがいた。向かい合って長テーブルの上に座り、爛れてこぼれ落ちそうになる顎をお互いの片手で支えながら、青息吐息を懸命に縦笛へ注ぎ込む。時折運よく澄 んだ音色が生まれるが、音に過剰に反応するゾンビの性(さが)が邪魔をする。音色に興奮して手が震え、 思わず縦笛を落としてしまうのだ。
お互いの身体と縦笛が朽ちるまで、縦笛ゾンビ兄弟の飽くなき音楽への挑戦は続く。
2/8ページ
スキ