可愛い我儘

 ロックアックス城内、昼下がりの食堂。
 赤騎士団長カミューと青騎士団長マイクロトフはいつもの席に座り、ランチを楽しんでいた。正午をやや過ぎているからか食堂はいていて、近くには誰もいない状態だ。
 「本日のおすすめ」にオムライスとハンバーグがあるのを見て、カミューはオムライスを、マイクロトフはハンバーグを頼んだ。「好物を食べて、午後からの仕事も頑張ろう」。そう励まし合い、ほどなくして運ばれてきたそれぞれの料理に手を付ける。
 マイクロトフはひたすら黙々と食べ進めたが、カミューは二口、三口食べたところで眉を顰め、中のチキンライスに入っているグリーンピースを取り除き始めた。緑色の丸い物体が次々と皿の端に追いやられて行くのを見て、今度はマイクロトフが眉を顰める。
「……何をしているんだ、カミュー」
「……不味い。やはり、グリーンピースは嫌いだ。しかも今日は、やけに量が多い」
「騎士たる者が好き嫌いをするな。そもそもオムライスにグリーンピースはつきものだろう。我儘わがままを言わずに、きちんと食え」
「前言撤回だ。これでは、午後からの仕事は頑張れない」
「お前な……子供か」
 はあ……と悲しげに溜め息を吐いたカミューを、マイクロトフは呆れ顔で見つめた。オムライスは今までにも何度か食べていたはずなのだが、その時はグリーンピースが嫌いだなんてひと言も言っていなかった。部下たちの目がある所では、我慢していたのだろうか。他人に隙を見せることなく、つ団長としての威厳を保つために。
 ふう、とマイクロトフは息を吐き出し、パンが載っていた自身の皿をカミューに差し出した。そして、
「もったいないだろう。俺が食べてやるから、ここに載せるといい」
「……いいのか?」
「食べられるものを残すことに、俺が罪悪感を覚えるからだ。ただし、今日だけだぞ。常に期待されては困る」
「感謝する。いやあ、私は本当に良い友人を持ったものだ」
 嬉々としておのれの皿へグリーンピースを移すカミューを見て、マイクロトフはもう一度溜め息を吐く。
(……カミューは人前を繕いがちな性格だ。だから俺くらいは、時折こうして可愛らしい我儘を聞き入れてやらなければ)
 これも、無二の親友である己の特権だ。決して悪い気はしない。マイクロトフもまた自然と表情を緩め、カミューとの和やかなランチタイムを再開したのだった。
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