両片想い人たちの口説き合戦
当の本人は無自覚のようだが、青騎士団長マイクロトフは、大変モテる。
女性の扱いが上手く正統派美男子でもある赤騎士団長カミューも同様で、彼はそれを充分に自覚して常に紳士的な接し方を心掛けているが、色恋事が苦手なマイクロトフは女性に話しかけられただけで緊張し、特に若い女性から積極的なアプローチをされると、しどろもどろな返答しかできなくなってしまう。だがいわゆるマイクロトフ派の女性たちは呆れるどころか「むしろそこがいい」「ウブで硬派なところが最高」「とても男らしい方なのにお可愛らしい」と口々に言い、今日も懲りずに「ウブで硬派な」青騎士団長殿を囲むのだ。
「やあ、マイクロトフ。レディたちとの歓談は楽しかったか?」
通りの角を曲がった所に待ち受けていたカミューの言葉に、マイクロトフは途端に顰め面になった。「見ていたのならなぜ助けてくれなかったんだ」と思わず不満を漏らしたマイクロトフへ、「なぜ私が助けてやらなければならないんだ?」とカミューが涼しい顔で返す。
「いつも言っているだろう、お前はもう少し女性に慣れろ、と。せめて普通の会話はできるようになれ」
「無理だ。女性は男とは勝手がまったく違う。しかし女性人気の高いお前ならまだしも、なぜ俺にまで……」
「お前は自分の容姿の良さと男としての魅力に無自覚過ぎるぞ。城下のレディたちの間ではお前派と私派というのがあって、噂ではお前派のほうが若干リードしていると聞いたことがあるくらいだ。まあ、納得かな」
「納得? なぜだ。俺はお前のように容姿が美しいわけではない上に、女性の扱いも上手くはない。だから、お前のほうが絶対に魅力的――」
「さりげなく口説くな。私を口説いても何も出ないぞ。……お前と私では、タイプが全く違う。私はよく『優男』と言われるが、お前は身も心も男らしい男だ。そういう男を好む女性が多いんだろう。加えて、部下たちからも熱く慕われていると来ている。男も惚れる男……つまり、誰もが惚れる男だな。だからお前は、私よりずっと魅力的だというわけさ」
「……」
こうまで褒めそやされると、むずむずする。マイクロトフは居心地が悪そうに身を縮こまらせ、未 だ納得がいっていないといった様子でなぜか得意そうなカミューの端整な横顔を見つめた。――「誰もが惚れる」の「誰も」の中に、お前も入っているのだろうか。衝動的な行動の多い俺を見限らず、いつも何かと助けてくれるのは……。
「……何だ? まだ何か言いたいことでも?」
「いや……やはりお前は誰よりも美しいな、と」
無意識に口を衝 いて出た言葉なのだろう。マイクロトフからの素直な賛辞にカミューは一瞬目を丸くした後、「だから、私を口説くな。そういう言葉は、お前を慕うレディに掛けてやれ」と笑う。
親友であると同時に想い人でもあるカミューのことを本当に美しいと思っている上に「こういう言葉はお前にしか掛けないのに」とマイクロトフは思い、自身も惚れている男から「誰よりも美しい」と褒められて、カミューは城へと帰るまでの間、内心の喜びと少しの照れを隠すことに努めたのだった。
女性の扱いが上手く正統派美男子でもある赤騎士団長カミューも同様で、彼はそれを充分に自覚して常に紳士的な接し方を心掛けているが、色恋事が苦手なマイクロトフは女性に話しかけられただけで緊張し、特に若い女性から積極的なアプローチをされると、しどろもどろな返答しかできなくなってしまう。だがいわゆるマイクロトフ派の女性たちは呆れるどころか「むしろそこがいい」「ウブで硬派なところが最高」「とても男らしい方なのにお可愛らしい」と口々に言い、今日も懲りずに「ウブで硬派な」青騎士団長殿を囲むのだ。
「やあ、マイクロトフ。レディたちとの歓談は楽しかったか?」
通りの角を曲がった所に待ち受けていたカミューの言葉に、マイクロトフは途端に顰め面になった。「見ていたのならなぜ助けてくれなかったんだ」と思わず不満を漏らしたマイクロトフへ、「なぜ私が助けてやらなければならないんだ?」とカミューが涼しい顔で返す。
「いつも言っているだろう、お前はもう少し女性に慣れろ、と。せめて普通の会話はできるようになれ」
「無理だ。女性は男とは勝手がまったく違う。しかし女性人気の高いお前ならまだしも、なぜ俺にまで……」
「お前は自分の容姿の良さと男としての魅力に無自覚過ぎるぞ。城下のレディたちの間ではお前派と私派というのがあって、噂ではお前派のほうが若干リードしていると聞いたことがあるくらいだ。まあ、納得かな」
「納得? なぜだ。俺はお前のように容姿が美しいわけではない上に、女性の扱いも上手くはない。だから、お前のほうが絶対に魅力的――」
「さりげなく口説くな。私を口説いても何も出ないぞ。……お前と私では、タイプが全く違う。私はよく『優男』と言われるが、お前は身も心も男らしい男だ。そういう男を好む女性が多いんだろう。加えて、部下たちからも熱く慕われていると来ている。男も惚れる男……つまり、誰もが惚れる男だな。だからお前は、私よりずっと魅力的だというわけさ」
「……」
こうまで褒めそやされると、むずむずする。マイクロトフは居心地が悪そうに身を縮こまらせ、
「……何だ? まだ何か言いたいことでも?」
「いや……やはりお前は誰よりも美しいな、と」
無意識に口を
親友であると同時に想い人でもあるカミューのことを本当に美しいと思っている上に「こういう言葉はお前にしか掛けないのに」とマイクロトフは思い、自身も惚れている男から「誰よりも美しい」と褒められて、カミューは城へと帰るまでの間、内心の喜びと少しの照れを隠すことに努めたのだった。
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