体調不良の理由
マイクロトフとカミューが約三年にも渡るグラスランドの旅から帰還し、実質的に新生マチルダ騎士団のツートップとして慌ただしく過ごす中で婚約者同士となった日の、翌朝。
「今日は大事な話がある」とマイクロトフが赤・青両騎士団の騎士たちを集め、その隣には、当然カミューの姿もあった。マイクロトフは自身を騎士団長、カミューを騎士団副長とすることを正式に宣言し、マチルダ騎士団存続のために今後も皆の力を貸してほしいと頭を下げた。両騎士団の騎士たちは「もちろんです」「変わらずお支えいたします」「どこまでもついていきます」と湧き、新たな団長と副長の誕生を心から祝った。これからは騎士団長一強ではなく、皆で騎士団を作り上げて行くのだ。
タイプは違えどマイクロトフとカミューは両者共にハイレベルの美男子であるため、並ぶと非常に絵になった。本人たちはまだ公言はしていなかったが二人が恋仲であることは誰の目にも明らかで、まさしく「お似合い」のコンビ――ならぬカップルだ。今日も俺たちの、私たちの団長が麗しいと、騎士たちはうっとりと目を細める。
だがマイクロトフが解散を命じ、騎士たちがそれぞれの持ち場へと戻って行く中で、何名かが異変に気付いた。それまで凛と佇んでいたカミューがふう、と息を吐き出し、自らの腹を数回摩 ったのだ。
そういえば、顔色もあまり良くない気がする。偶然目撃してしまった騎士たちは顔を見合わせ、カミューからは充分に距離を取った上でひそひそと話し合う。
「……なあ。今のって……」
「あ、ああ……お体の具合が悪い、というよりは……」
「……まさか、ご懐妊?」
「馬鹿か。いくらお綺麗でも、カミュー様は男だぞ。きっと腹を摩られたのは、マイクロトフ様が張り切り過ぎて――」
「いや、案外カミュー様がそうしてほしいと望まれたんじゃ……」
「俺はどっちもだと思うね。って、なんて話をしてるんだ。団長たちの夜の事情を想像するなんて」
ひそひそ話に興じる騎士たちの視線の先では、カミューの歩みが普段より遅いことに気付いたマイクロトフが引き返し、「どうした、カミュー?」とやや小声で尋ねるのへカミューが何やら耳打ちした途端にマイクロトフの目が大きく見開かれ、みるみるうちに赤面し狼狽 えながらも気遣うようにその背に手を添えている。
「……なあ。今のって……」
「やっぱり……」
「『できちゃった』ってやつか……?」
カミューの肩を抱き、彼に歩調を合わせてゆっくりとその場から去って行くマイクロトフの背中を、騎士たちは何とも言えない気持ちで見送った。
なお実際のところは、と言うと――
「どうした、カミュー?」
すぐ後ろについてこないカミューを訝しんだマイクロトフが大股で引き返し、気づかわしげにカミューの顔を覗き込んだ。カミューは腹を押さえながら、マイクロトフの耳元へ顔を寄せて囁く。
「――さすがに腹が痛くてね。朝まで離してもらえなかったものだからお前がまだ中にいる感覚が残っている上に、下着も大惨事になっているんだ」
「!!」
マイクロトフは目を大きく見開き、盛大に赤面しながら狼狽え始めた。その背に手を添えつつ「すまない……」と小声で詫びるマイクロトフへ、カミューは「まあ、それを良しとしたのは他ならぬ私だ。自業自得さ」と笑う。
マイクロトフに肩を抱かれながら自室へと戻ったカミューは、バスルームで「大惨事」になっていた下半身を清め下着を新しいものに変えてから、ソファーの上で未 だ縮こまっているマイクロトフの隣に腰掛けた。カミューからふわりと漂った清潔な匂いに一瞬ぐらりと来たものの、その誘惑を振り払うようにマイクロトフは新たな組織図を記した紙を広げ、二人は騎士団長と騎士団副長として、新生マチルダ騎士団のこれからについてしばし真面目に語り合ったのだった。
「今日は大事な話がある」とマイクロトフが赤・青両騎士団の騎士たちを集め、その隣には、当然カミューの姿もあった。マイクロトフは自身を騎士団長、カミューを騎士団副長とすることを正式に宣言し、マチルダ騎士団存続のために今後も皆の力を貸してほしいと頭を下げた。両騎士団の騎士たちは「もちろんです」「変わらずお支えいたします」「どこまでもついていきます」と湧き、新たな団長と副長の誕生を心から祝った。これからは騎士団長一強ではなく、皆で騎士団を作り上げて行くのだ。
タイプは違えどマイクロトフとカミューは両者共にハイレベルの美男子であるため、並ぶと非常に絵になった。本人たちはまだ公言はしていなかったが二人が恋仲であることは誰の目にも明らかで、まさしく「お似合い」のコンビ――ならぬカップルだ。今日も俺たちの、私たちの団長が麗しいと、騎士たちはうっとりと目を細める。
だがマイクロトフが解散を命じ、騎士たちがそれぞれの持ち場へと戻って行く中で、何名かが異変に気付いた。それまで凛と佇んでいたカミューがふう、と息を吐き出し、自らの腹を数回
そういえば、顔色もあまり良くない気がする。偶然目撃してしまった騎士たちは顔を見合わせ、カミューからは充分に距離を取った上でひそひそと話し合う。
「……なあ。今のって……」
「あ、ああ……お体の具合が悪い、というよりは……」
「……まさか、ご懐妊?」
「馬鹿か。いくらお綺麗でも、カミュー様は男だぞ。きっと腹を摩られたのは、マイクロトフ様が張り切り過ぎて――」
「いや、案外カミュー様がそうしてほしいと望まれたんじゃ……」
「俺はどっちもだと思うね。って、なんて話をしてるんだ。団長たちの夜の事情を想像するなんて」
ひそひそ話に興じる騎士たちの視線の先では、カミューの歩みが普段より遅いことに気付いたマイクロトフが引き返し、「どうした、カミュー?」とやや小声で尋ねるのへカミューが何やら耳打ちした途端にマイクロトフの目が大きく見開かれ、みるみるうちに赤面し
「……なあ。今のって……」
「やっぱり……」
「『できちゃった』ってやつか……?」
カミューの肩を抱き、彼に歩調を合わせてゆっくりとその場から去って行くマイクロトフの背中を、騎士たちは何とも言えない気持ちで見送った。
なお実際のところは、と言うと――
「どうした、カミュー?」
すぐ後ろについてこないカミューを訝しんだマイクロトフが大股で引き返し、気づかわしげにカミューの顔を覗き込んだ。カミューは腹を押さえながら、マイクロトフの耳元へ顔を寄せて囁く。
「――さすがに腹が痛くてね。朝まで離してもらえなかったものだからお前がまだ中にいる感覚が残っている上に、下着も大惨事になっているんだ」
「!!」
マイクロトフは目を大きく見開き、盛大に赤面しながら狼狽え始めた。その背に手を添えつつ「すまない……」と小声で詫びるマイクロトフへ、カミューは「まあ、それを良しとしたのは他ならぬ私だ。自業自得さ」と笑う。
マイクロトフに肩を抱かれながら自室へと戻ったカミューは、バスルームで「大惨事」になっていた下半身を清め下着を新しいものに変えてから、ソファーの上で
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