涙雨
明らかに、己 の判断ミスだった。血塗れで足下に倒れ伏す青騎士たちを、マイクロトフは茫然と見下ろす。
「雑魚はお任せを。団長は真っ直ぐ大将の元へ向かってください。我々もすぐに追いつきます」――彼らはマイクロトフより少し年上で戦慣れしており、実力も確かだった。彼らになら任せても大丈夫だろう、部下を信頼することも大切だと、その頼もしい背中を敢えて見送ったのだ。
一命は取り留めたものの全身傷だらけで戻ってきた青騎士曰 く、「我々が戦ったのは囮部隊で、森に潜んでいた部隊が本隊だった」らしい。敵の数の少なさと手応えの無さに油断した青騎士たちは瞬く間に本隊に取り囲まれ、無数の矢に貫かれた上、無慈悲に振り下ろされた凶刃に倒れた。斥候も敵情を探る前に殺されたと、青騎士は涙ながらに言った。犠牲者は数名だが我が青騎士団の士気は著しく低下している、ここは撤退すべきだ、とも。
拳を握り締め、血が滲むほどきつく唇を噛みしめるマイクロトフの元へ、カミューと数名の赤騎士たちがやってきた。直情的な性格ゆえに何をしでかすか分からないマイクロトフを心配してのことだろう。カミューは俯いたまま動かないマイクロトフに近付くと、静かに語りかける。
「撤退だ、マイクロトフ。今回の敵はあまりにも手強い上に、雲行きが怪しい……この様子だと、じきに土砂降りになるだろう。つまり、何もかもが不利だ。今は退くことだけを考えろ」
「……っ……だが、せめて……ほんの少しの間でいい、この者たちを弔わせてくれ。頼む、カミュー」
「……」
肩を震わせるマイクロトフを見たカミューは、一瞬悲しげな表情をした後に顔を逸らし、そっと目を閉じた。マイクロトフは物言わぬ骸と化した青騎士たちの前に跪 いて祈りを捧げたが、押し寄せる後悔の念に堪え切れなくなり、地に伏さんばかりに崩れ落ちる。
「……すまない。俺が判断を誤ったせいで、お前たちを……すまない……すまない……!」
ぽつり、ぽつりと、空から水滴が降ってくる。カミューが言ったとおり、ここはこれから土砂降りに見舞われるだろう。マイクロトフの瞳からとめどなく溢れる涙も、この場にいる者たちの無念や悲しみも、戦場に散った青騎士たちの体から流れ出た赤黒い血も――全てを洗い流して行くのだろう。
ついには蹲 って嗚咽を漏らし始めたマイクロトフに、その周りに無言で立つカミューや騎士たちに、激しい雨が降り注ぐ。しかし、誰もそこから動かない。マイクロトフとカミューが騎士団長の座に就いてから間もなくのとある出陣は、こうして酷く苦しく悲しいものになったのだった。
「雑魚はお任せを。団長は真っ直ぐ大将の元へ向かってください。我々もすぐに追いつきます」――彼らはマイクロトフより少し年上で戦慣れしており、実力も確かだった。彼らになら任せても大丈夫だろう、部下を信頼することも大切だと、その頼もしい背中を敢えて見送ったのだ。
一命は取り留めたものの全身傷だらけで戻ってきた青騎士
拳を握り締め、血が滲むほどきつく唇を噛みしめるマイクロトフの元へ、カミューと数名の赤騎士たちがやってきた。直情的な性格ゆえに何をしでかすか分からないマイクロトフを心配してのことだろう。カミューは俯いたまま動かないマイクロトフに近付くと、静かに語りかける。
「撤退だ、マイクロトフ。今回の敵はあまりにも手強い上に、雲行きが怪しい……この様子だと、じきに土砂降りになるだろう。つまり、何もかもが不利だ。今は退くことだけを考えろ」
「……っ……だが、せめて……ほんの少しの間でいい、この者たちを弔わせてくれ。頼む、カミュー」
「……」
肩を震わせるマイクロトフを見たカミューは、一瞬悲しげな表情をした後に顔を逸らし、そっと目を閉じた。マイクロトフは物言わぬ骸と化した青騎士たちの前に
「……すまない。俺が判断を誤ったせいで、お前たちを……すまない……すまない……!」
ぽつり、ぽつりと、空から水滴が降ってくる。カミューが言ったとおり、ここはこれから土砂降りに見舞われるだろう。マイクロトフの瞳からとめどなく溢れる涙も、この場にいる者たちの無念や悲しみも、戦場に散った青騎士たちの体から流れ出た赤黒い血も――全てを洗い流して行くのだろう。
ついには
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