怠惰で、淫らな一日

「うう、だるい。あまりにも、だるい……」
 恋人と激しくも甘い一夜を過ごした、翌朝。体を起こすことができずにぐったりとしているカミューを、すぐ隣で上半身を起こしたマイクロトフが申し訳なさそうに見下ろした。おのれを煽るカミューにも原因はあるのだが、大体は途中から抑制が効かなくなり、有り余る欲を全力でぶつけてしまう自身のせいだ。今までにも、何度カミューの口から「もう無理」「死んでしまう」「殺す気か」という類の言葉を聞いたことか――それでもやめられないのが、困りものである。
「……大丈夫か?」
「……大丈夫じゃない」
「ならば、出発は遅らせたほうがいいか。お前が動けるようになるまで……」
「いや……いっそ今日は、丸一日ベッドの住人になっていたい。たまにはそんな日があってもいいだろう、急ぐ旅でもあるまいし」
「なっ……本気か!?」
 まさかの言葉に驚くマイクロトフへ、カミューは「本気だ」と返した。いくら今の自分たちが「元」騎士団長とはいえ、それはさすがに怠惰が過ぎるのではないか。病人でもないのに一日を、ただ寝て過ごすなど。
 唖然としているマイクロトフの手にカミューは自身の手をそっと重ね、指を絡めた。そして。
「――今日は私を好きなだけ抱いていい……と、言ったら?」
「!」
「おかしいと思ったんだ、昨夜もさんざんお前に抱かれたというのに、体の疼きが一向に治まらなかっただなんて。どうやら、昨日の夕飯に食べた肉が原因だったらしい。あれはこの辺りで有名な精力増強効果のある獣の肉で、それが作用したようだ。お前は元々絶倫だが、私も昨夜はいつも以上にお前を求めてしまって――」
「……それがまだ、残っていると?」
「ああ。こうして話している間にも、お前が欲しくてたまらなくなってきている。そんな自分が、恐ろしい」
 「恐ろしい」と言う割には情欲を孕んだ視線を向けてくるカミューを見て、耐えられるマイクロトフではない。カミューと同じ物を食べたマイクロトフの体も依然火照ったままであり、「今日は好きなだけ抱いていい」などと、夢のようなことを言われたのだ。
 無為に過ごすわけではない。恋人と、一日中愛し合うことができるのだ。カミューが言うように、たまにはそんな日があってもいいだろう。今の自分たちは、ただの旅の剣士なのだから。
「……手加減はしないぞ」
「今更。望むところだ」
 妖艶な笑みを浮かべたカミューの上に、マイクロトフが素早く覆い被さる。マイクロトフの逞しい背中にカミューのしなやかな腕が回されたのを合図に、二人の怠惰つ淫らな一日が始まった。
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