実家帰りの後で
今夜泊まる宿の部屋に入り、旅装を解いて薄着になった途端に背後から抱きしめられた。恋仲となっても相変わらずの堅物で、「誰がどこで見ているか分からない」という理由で外でベタベタすることを嫌うマイクロトフだが、屋内で二人きりになった途端に〝これ〟だ。カミューはマイクロトフの腕の中で小さく笑い、こら、と柔らかく窘 める。
「部屋に入って早々サカるな。外はまだ明るいし、シャワーも浴びていないだろう」
「違う。今はただ、故郷に別れを告げてきたお前を抱きしめたくなっただけだ」
マイクロトフの予想外の言葉に、カミューは目を丸くした。確かにいつものように耳を食んできたり首筋に顔を埋 めてきたりすることはなく、耳元で聞こえる呼吸も穏やかだ。激しい情欲を含まない、優しく包み込むような抱擁。服越しに伝わってくる温もりに、カミューはふ、と息を吐き出す。
「なんだ、気を遣ってくれているのか。お前は優しいな」
「お前のお父上にああ言われた手前、二度と帰れないかもしれないんだ。いくら長く離れていたとはいえ、カマロはお前の生まれ育った地だろう。にもかかわらず、これからもマチルダ騎士として俺と共に生きてほしいと願ったばかりに……」
マイクロトフの声音に、やや苦悩が滲み出ている。己 を責めているのだろうか。カミューは自身を抱きしめる逞しい腕にそっと手を添え、囁くように答える。
「そういう生き方を選んだのは私自身だ。だから、お前が自責の念に駆られる必要はないよ。――お前と共に生きると決めた時点で、あの地に骨を埋める覚悟はできたんだ。今はこうして帰郷しグラスランド中を旅しているが、この旅を終えたらこれまでどおり、マチルダ騎士として励むつもりさ」
「カミュー……」
不意にマイクロトフは抱擁を解き、カミューの前に回るとその顔をじっと見つめた。カミューの表情は実に晴れやかで、誇らしげにすら見える。
「まあ、まったくへこんでいないと言えば嘘になるな。なにせ実の父から勘当も同然に家を追い出されたんだからな。だが私には、お前がいる……私の全てを愛してくれる男がね。そんな人間と共に生きて行けるんだ、こんなに幸せなことはないだろう」
「……そうか。そう思ってくれているのなら良かった」
そう言ってマイクロトフは、今度は正面からカミューを抱きしめた。そして、力強く宣言する。
「……絶対に、幸せにする」
「ははは、まるでプロポーズだな? ならば私もお前にふさわしい人間であれるよう、これからも精一杯努めるとしようか」
冗談めかした言葉を口にしながらもカミューの頬はほんのりと染まり、琥珀色の瞳が嬉しそうに、そして幸せそうに細められる。
カミューもまたマイクロトフをしっかりと抱きしめ返し、二人はしばし愛おしい存在と温もりを、改めて噛み締めたのだった。
「部屋に入って早々サカるな。外はまだ明るいし、シャワーも浴びていないだろう」
「違う。今はただ、故郷に別れを告げてきたお前を抱きしめたくなっただけだ」
マイクロトフの予想外の言葉に、カミューは目を丸くした。確かにいつものように耳を食んできたり首筋に顔を
「なんだ、気を遣ってくれているのか。お前は優しいな」
「お前のお父上にああ言われた手前、二度と帰れないかもしれないんだ。いくら長く離れていたとはいえ、カマロはお前の生まれ育った地だろう。にもかかわらず、これからもマチルダ騎士として俺と共に生きてほしいと願ったばかりに……」
マイクロトフの声音に、やや苦悩が滲み出ている。
「そういう生き方を選んだのは私自身だ。だから、お前が自責の念に駆られる必要はないよ。――お前と共に生きると決めた時点で、あの地に骨を埋める覚悟はできたんだ。今はこうして帰郷しグラスランド中を旅しているが、この旅を終えたらこれまでどおり、マチルダ騎士として励むつもりさ」
「カミュー……」
不意にマイクロトフは抱擁を解き、カミューの前に回るとその顔をじっと見つめた。カミューの表情は実に晴れやかで、誇らしげにすら見える。
「まあ、まったくへこんでいないと言えば嘘になるな。なにせ実の父から勘当も同然に家を追い出されたんだからな。だが私には、お前がいる……私の全てを愛してくれる男がね。そんな人間と共に生きて行けるんだ、こんなに幸せなことはないだろう」
「……そうか。そう思ってくれているのなら良かった」
そう言ってマイクロトフは、今度は正面からカミューを抱きしめた。そして、力強く宣言する。
「……絶対に、幸せにする」
「ははは、まるでプロポーズだな? ならば私もお前にふさわしい人間であれるよう、これからも精一杯努めるとしようか」
冗談めかした言葉を口にしながらもカミューの頬はほんのりと染まり、琥珀色の瞳が嬉しそうに、そして幸せそうに細められる。
カミューもまたマイクロトフをしっかりと抱きしめ返し、二人はしばし愛おしい存在と温もりを、改めて噛み締めたのだった。
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