Fetishism

 不意に背後から尻を鷲掴みにされ、マイクロトフはびくりと肩を跳ね上がらせた。何事かと勢いよく振り向けば、後ろを歩いていたカミューがおのれの尻を凝視し、無遠慮に両手で掴んでいる。
「……カ、カミュー……?」
 恋人の不可解な行動に大いに戸惑うマイクロトフに、だがカミューは相変わらず目の前の男の尻を見つめながら、その感触を確かめるように揉み始めた。いくら恋仲とはいえ、どこで誰が見ているか分からない外でのこういった行為は御免だ。
「おい、カミュー……」
「……この服の形状のせいもあるんだろうが、以前からお前は尻も大きいなと思っていたんだ。まあ体全体のパーツが大きめだから、当然といえば当然なんだろうが。うん、筋肉が発達している硬さだな」
「……」
 ひとしきり揉んで満足したのかようやく手を離したカミューに、マイクロトフはひと呼吸置いてから「……セクハラだぞ」と低く呟いた。それを聞いたカミューは目を丸くし、それからははっ、と笑う。
「セクハラ? 二人きりになった途端に私の体をまさぐってくるお前がそれを言うのか?」
「そ、それとこれとは話が別だ! 時と場所をわきまえろと言っているんだ」
「では二人きりになったら、私もお前の体を好きなだけ弄ってもいいということだな?」
「うっ、それは……」
「お前は良くて、なぜ私が駄目なんだ? お前は私の髪や腰から尻にかけてのラインを好んでいるようだが、私にだってフェチはあるんだぞ。立派な尻はもちろんパンと張った太もも、厚い胸板に、綺麗に割れた腹筋……上げたらキリがないが」
「……」
 まだ昼前だというのに、カミューの言動のせいでおかしな気分になってきてしまった。しかし、だからといってこの場で発散するという発想はマイクロトフにはない。せめて次の村に少しでも早く辿り着けるよう願うばかりだ。
「……ん? 顔が赤いぞ? もしや、淫らなことを考えているな?」
「誰のせいだと思っている!」
「おや、否定しないのか。お前は基本的に堅物だが、私に対しては案外ムッツリなところがあるからな。――喜べ、このまま順調に行けば、夕方頃には次の村に着きそうだぞ。……ふふ、今夜が楽しみだな」
 カミューが妖艶に微笑みながら寄り添ってきて、マイクロトフの顔と体はますます火照るばかりだ。
 カミューの言葉どおり次の村には夕方頃に到着したわけだが、夜を待たずして互いへのフェチを発揮し、熱いひと時を過ごしたのは言うまでもない。
1/1ページ