のどかな昼下がりに

 珍しく、のどかな昼下がり。今日こなすべき仕事もあらかた終えたマイクロトフは、読みかけの本を読み進めるか親友の部屋へ向かうか少し迷い、後者を選んだ。読書ならばいつでもできると思ったからだ。
「カミュー、俺だ。今、空いているか?」
 親友・カミューの部屋の前で呼びかけたが、返事がない。試しにドアノブを回して前方に押してみると鍵は開いていて、容易に室内に入ることができた。カミューにしては不用心だなと思いつつ、マイクロトフは部屋の奥へと進む。
「!?」
 一見姿が見えない部屋の主は、ベッドに横たわっていた。それも毛布を頭まで引っ張り上げて、埋もれるように。マイクロトフは慌てて駆け寄り、後先考えずに声を掛ける。
「どうしたカミュー、具合でも悪いのか!?」
「……ぅ……んん……」
 人の形に膨らんだ毛布がもぞもぞと動き、中からカミューが気怠そうに姿を現した。どうやら本当に寝ていたらしく、なんとも無防備な寝惚けまなこで自身に呼びかけてきた親友を見遣る。
「……なんだ、お前かマイクロトフ……相変わらず、声が大きいな……」
「だ、大丈夫なのか?」
「……何が大丈夫だって?」
「こんな時間にベッドに突っ伏しているものだから……」
「私はただ、昼寝をしていただけなんだが……誰かさんの大声で起こされたけどね」
「……本当にただ寝ていただけなのか?」
「そうだ。昨夜はお前と別れた後もしばらく起きていたから、眠くて仕方がなくてな」
「……」
 のそりと体を起こし、ふわぁ……とあくびをしたカミューは、「……それで? 私に何か用か?」と親友に尋ねた。どうやら具合が悪くて寝ていたわけではないらしいと知ってマイクロトフはひとまず安堵し、それから「……特に用事があるわけではないんだが」と正直に返す。
「ただ、その……お前と話がしたくて来ただけだ。邪魔なら帰る」
「いや、お邪魔ではないよ。私と少しでも多くの時間を過ごしたくてわざわざ来てくれたんだろう? そんな健気な友を邪険にするわけにはいかないじゃないか。さて、何をして遊ぶ?」
 悪戯っぽく笑って言うカミューに、マイクロトフは少し考えてから「今日は天気がいい。もし良ければ遠乗りにでも行かないか?」と誘った。カミューも「それはいいな」と返し、ベッドから出る。
「確かにこの天気で部屋に閉じこもっているのはもったいないな。屋内デートも悪くはないが、屋外デートのほうがより解放的になれる。よし、じゃあ行こうか」
 他ならぬマイクロトフからの誘いだ、断る理由がない。楽しそうに微笑んだカミューへ、マイクロトフは「またお前はすぐにそういうことを……」と呆れながらも近くの椅子に腰掛け、カミューが支度を終えるのを待つことにしたのだった。
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