情炎
「あ、団長! カ――」
自身の直属の上司に当たる赤騎士団長・カミューの姿を見つけた赤騎士は、その名を呼びかけて、やめた。当のカミューが椅子に腰掛け、目の前のテーブルに頬杖をついて物思いに耽っている様子だったからだ。
(きっと考え事をしていらっしゃるんだな。カミュー団長は参謀役としても活躍されているから、邪魔をしてはいけない)
少し離れた所に立った赤騎士は、カミューがこちらに気付くのを待つことにした。しかしただ待つのも退屈なので、失礼かもしれないとは思いつつも自身が敬愛してやまない美しい団長の姿をこっそり堪能することにする。
(……綺麗な人だよな。かといって頼りないわけでは全く無く、まだお若いにもかかわらず団長としての貫禄はしっかりある。貫禄十分のマイクロトフ団長と並ぶと、さらに……ん?)
よく見るとカミューは考え事をしているわけではなく、ある一点をじっと見つめているのではないかということに気付いた。その視線の先には、彼の親友である青騎士団長・マイクロトフの姿。マイクロトフは部下の青騎士たちに囲まれ、一枚の紙を手に何かを真剣に話し合っている。
二人の間にはやや距離があるため、マイクロトフはカミューの存在にまだ気付いていないようだった。それでもカミューはマイクロトフから目を逸らさず、ただひたすらにかの男を見つめている。
(……なんだ?)
赤騎士はカミューに少しだけ近付き、その顔をおそるおそる覗き込んだ。そして――彼は見た。マイクロトフを凝視するカミューの琥珀にも似た神秘的な色合いの瞳に、燃え盛る炎のような光が宿っているのを。
熱情、情念、執着、思慕――それらの全てを含んだ、強い視線。赤騎士の胸がどくんと鳴り、見てはいけない、知ってはいけないことを知ってしまった気がした。常に冷静沈着なカミューが内に秘めた、烈 しい感情――道理で、一見涼しげなこの人がその右手に宿した『烈火の紋章』を発動させた時の姿が鮮烈で美しいはずだ、と赤騎士は思う。
(……はっ! 見惚れている場合じゃない。しかしこの状況、やはり声を掛けづらいな……)
どうしたものかと赤騎士が頭を悩ませていると、顔を上げたマイクロトフがようやくカミューに気付き、早足で近付きながら「カミュー!」と呼びかけた。その途端カミューの瞳から強い光が消え、彼は親しみを込めて「やあ、マイクロトフ」と口にする。
(……ああ、「炎」が消えた)
マイクロトフは手にしていた紙をさっそくカミューに見せ、何やら相談を持ち掛けている。やはりお二方が並んでいると絵になるな、と赤騎士は思わず見惚れてしまい、カミューが席を立ちマイクロトフと連れ立ってその場からいなくなる直前になってから、慌ててその後を追ったのだった。
自身の直属の上司に当たる赤騎士団長・カミューの姿を見つけた赤騎士は、その名を呼びかけて、やめた。当のカミューが椅子に腰掛け、目の前のテーブルに頬杖をついて物思いに耽っている様子だったからだ。
(きっと考え事をしていらっしゃるんだな。カミュー団長は参謀役としても活躍されているから、邪魔をしてはいけない)
少し離れた所に立った赤騎士は、カミューがこちらに気付くのを待つことにした。しかしただ待つのも退屈なので、失礼かもしれないとは思いつつも自身が敬愛してやまない美しい団長の姿をこっそり堪能することにする。
(……綺麗な人だよな。かといって頼りないわけでは全く無く、まだお若いにもかかわらず団長としての貫禄はしっかりある。貫禄十分のマイクロトフ団長と並ぶと、さらに……ん?)
よく見るとカミューは考え事をしているわけではなく、ある一点をじっと見つめているのではないかということに気付いた。その視線の先には、彼の親友である青騎士団長・マイクロトフの姿。マイクロトフは部下の青騎士たちに囲まれ、一枚の紙を手に何かを真剣に話し合っている。
二人の間にはやや距離があるため、マイクロトフはカミューの存在にまだ気付いていないようだった。それでもカミューはマイクロトフから目を逸らさず、ただひたすらにかの男を見つめている。
(……なんだ?)
赤騎士はカミューに少しだけ近付き、その顔をおそるおそる覗き込んだ。そして――彼は見た。マイクロトフを凝視するカミューの琥珀にも似た神秘的な色合いの瞳に、燃え盛る炎のような光が宿っているのを。
熱情、情念、執着、思慕――それらの全てを含んだ、強い視線。赤騎士の胸がどくんと鳴り、見てはいけない、知ってはいけないことを知ってしまった気がした。常に冷静沈着なカミューが内に秘めた、
(……はっ! 見惚れている場合じゃない。しかしこの状況、やはり声を掛けづらいな……)
どうしたものかと赤騎士が頭を悩ませていると、顔を上げたマイクロトフがようやくカミューに気付き、早足で近付きながら「カミュー!」と呼びかけた。その途端カミューの瞳から強い光が消え、彼は親しみを込めて「やあ、マイクロトフ」と口にする。
(……ああ、「炎」が消えた)
マイクロトフは手にしていた紙をさっそくカミューに見せ、何やら相談を持ち掛けている。やはりお二方が並んでいると絵になるな、と赤騎士は思わず見惚れてしまい、カミューが席を立ちマイクロトフと連れ立ってその場からいなくなる直前になってから、慌ててその後を追ったのだった。
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