眠る君を見ている -Side M-

 窓から射し込む光で、目が覚めた。朝が来たようだ。
 マイクロトフは早起きだが、おのれの腕の中のカミューはまだ目を覚ます気配がなく、すう、すうと気持ち良さそうな寝息を立てて眠っている。その寝顔を、マイクロトフは穏やかな表情で見つめる。
(……眠っていても綺麗だな。こういう、静かな時間も悪くない)
 恋人同士になってからというもの、互いへの想いが溢れて毎晩のように激しく求め合い愛し合っているが、自身の腕の中に収まって安心したように眠る美しい恋人をただ眺めるのもいいものだと、マイクロトフは思う。その柔らかな髪や長い睫毛に触れたい衝動に駆られたが、まだ早朝も早朝だ。さすがに起こすのは憚られて、ぐっと堪える。
 かつてカミューは、一番の親友だった。奥手で不器用な己と違って女性の扱いが上手く、それゆえに色々な女性と噂にもなっていた。本人は「私は紳士であってたらしではない」と憤慨していたが、女性からの人気が高い彼のことだ、そのうち特別な存在の女性を見つけて恋仲になり、毎日のように惚気のろけを聞かされることになるのだろうと思っていた。
 そんなカミューに、親友以上の好意を抱き始めたのはいつ頃だっただろう。共にいる時間が長かったからかいつの間にか好きになっていた、と言ったほうがいいかもしれない。元々綺麗な奴だとは思っていたし、周りの人間からも「お似合い」「並ぶと絵になる」などと言われていたのでなんとなく鼻が高くはあったのだが(マイクロトフも十分に人々の目を引く美男子つ美丈夫なのだが、本人にはその自覚がほとんどない)、いくらカミューが美人でも、同性である己に恋愛感情など抱くはずはないと思い込んでいた。
 だが時折、カミューが見せる思わせぶりな言動に期待してしまう自分もいた。もしかするとカミューも、俺を親友以上の存在として見ているのではないか。そうでなければ、毎晩と言っていいほど互いの部屋に入り浸って酒を酌み交わしたりはしないだろう。俺がお前と過ごす時間に充足感を覚えているように、お前も俺と同じ気持ちでいてくれているのだろうか。もし俺が想いを告げたら、お前は応えてくれるのだろうか――。
 言えない想いを抱えているうちにデュナン統一戦争が終わると、カミューはグラスランドへ帰郷すると言い出した。なんとなくではあったが彼はもう帰って来ない気がして、この想いを伝えるなら今しかないと思った。カミューがグラスランドへ発つ日の前夜、マイクロトフは長らく秘めていた熱い想いを告げ――二人は晴れて恋人同士となって、共にグラスランドへ旅立つことになったのだ。
 そして、今。二人は生まれたままの姿で身を寄せ合い、二人きりの甘い時間を過ごしている。もう、離ればなれになることはないだろう。俺はお前を愛し、お前もまた、俺を愛していると告げてくれたのだから。
「……カミュー。愛している」
 眠る恋人に、万感の思いを込めてそっと囁く。それが伝わったのか、いまだ夢の中にいるカミューの口元がふ、と綻んだ、気がした。
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