騒動の後で
「ふと思ったんだが……ミリトの村で私が負傷して意識を失った時、お前が私を介抱してくれたのか?」
突然のカミューの質問に、ちょうどミリトの村での一件のことを考えていたマイクロトフは、はっと顔を上げて傍 らのカミューに視線を向けた。そういえばそのことについては村では特に話していなかったなと、マイクロトフは素直に問いに答えることにする。
「そうだが?」
「私をベッドに運んだのも?」
「ああ」
「服を脱がせて手当てをしたのも?」
「ああ、俺が全てやった。女性のマキ殿や村人たちに任せるわけにはいかなかったからな」
「そうか」
ふむ……とカミューは顎に手を当てて少し考えてから、再びマイクロトフを見た。その顔には、悪戯っぽい笑みが浮かんでいる。
「……どうやってベッドに運んだ?」
「どうやって、とは」
「荷物のように担いで? 背負って? それとも……まさかの〝お姫様抱っこ〟で?」
「うっ……なぜそんなことが気になるんだ……」
「気になるだろう。お前のことだから『担いだ』が有力候補だが……」
「……三番目だ」
「……ん?」
ぼそりと小声で答えたマイクロトフに、カミューが目を丸くする。「三番目」と言えば。
「……本当に、〝お姫様抱っこ〟を?」
「……」
「公衆の面前で?」
「……」
かあ、と頬を染めるマイクロトフを見て、カミューの頬までがうっすらと染まり始めた。ほんの冗談で言ったつもりが、それがまさかの「正解」だったなんて。つまり己 は多くの人の目がある場所でマイクロトフに「お姫様抱っこ」をされてベッドまで運ばれ、〝そういう意味〟では全く無かったにしろ、彼の手で服を脱がされたわけだ。なるほど確かに、その役目は同性であり恋人でもあるマイクロトフにしか務まらない。今更ながら何とも言えない恥ずかしさと嬉しさが込み上げて、カミューは赤面したまま唇を引き結んでいるマイクロトフを軽く小突く。
「まったく、お前は……道理でマキにも私たちの関係がばれていたわけだ。隠そうとしていなかったんだな」
「……隠しておいてほしかったのか?」
「いや。変に彼女に気を持たせてややこしいことになる前に分かって良かったくらいさ。マキは幼なじみであって、付き合っていたわけではないからな。私の恋人は、後にも先にもお前だけだよ」
柔らかく微笑むカミューへ、ようやく顔の火照りが治まったマイクロトフはふと真面目な顔になった。そして。
「……今だから言うが……マキ殿はお前とは昔馴染みでお前のことを慕っていたようだったから、俺はここにいていいのかと思っていた。だが……それでも俺は、お前を諦めたくはなかった」
「……マイクロトフ」
「だから、態度で示そうと思った。俺がどれだけお前を大切に想っているか、そしてお前を誰にも譲る気はない、ということを。俺の愛する人間も、後にも先にもお前だけだ。周りの者から何を言われようとも、俺の気持ちが変わることはない」
マイクロトフからの真摯な言葉を受け止めて、胸がいっぱいになったカミューは、ふ、と小さく笑う。
「まるでプロポーズだな」
「プロポーズ……のようなものは、俺がお前と共にグラスランドへ行くと決めた時にしたつもりだ。だが俺は一度きりではなく、何度でも言うぞ。何度だって、伝えてみせる」
「はは、相変わらず愛が重い。じゃあ私も、同じくらいお前に返して行かないとな」
草木の匂いを含んだグラスランドの爽やかな風が、二人の髪や服を揺らす。どちらからともなく顔を近付けて、マイクロトフとカミューは啄 むような口付けを交わしたのだった。
突然のカミューの質問に、ちょうどミリトの村での一件のことを考えていたマイクロトフは、はっと顔を上げて
「そうだが?」
「私をベッドに運んだのも?」
「ああ」
「服を脱がせて手当てをしたのも?」
「ああ、俺が全てやった。女性のマキ殿や村人たちに任せるわけにはいかなかったからな」
「そうか」
ふむ……とカミューは顎に手を当てて少し考えてから、再びマイクロトフを見た。その顔には、悪戯っぽい笑みが浮かんでいる。
「……どうやってベッドに運んだ?」
「どうやって、とは」
「荷物のように担いで? 背負って? それとも……まさかの〝お姫様抱っこ〟で?」
「うっ……なぜそんなことが気になるんだ……」
「気になるだろう。お前のことだから『担いだ』が有力候補だが……」
「……三番目だ」
「……ん?」
ぼそりと小声で答えたマイクロトフに、カミューが目を丸くする。「三番目」と言えば。
「……本当に、〝お姫様抱っこ〟を?」
「……」
「公衆の面前で?」
「……」
かあ、と頬を染めるマイクロトフを見て、カミューの頬までがうっすらと染まり始めた。ほんの冗談で言ったつもりが、それがまさかの「正解」だったなんて。つまり
「まったく、お前は……道理でマキにも私たちの関係がばれていたわけだ。隠そうとしていなかったんだな」
「……隠しておいてほしかったのか?」
「いや。変に彼女に気を持たせてややこしいことになる前に分かって良かったくらいさ。マキは幼なじみであって、付き合っていたわけではないからな。私の恋人は、後にも先にもお前だけだよ」
柔らかく微笑むカミューへ、ようやく顔の火照りが治まったマイクロトフはふと真面目な顔になった。そして。
「……今だから言うが……マキ殿はお前とは昔馴染みでお前のことを慕っていたようだったから、俺はここにいていいのかと思っていた。だが……それでも俺は、お前を諦めたくはなかった」
「……マイクロトフ」
「だから、態度で示そうと思った。俺がどれだけお前を大切に想っているか、そしてお前を誰にも譲る気はない、ということを。俺の愛する人間も、後にも先にもお前だけだ。周りの者から何を言われようとも、俺の気持ちが変わることはない」
マイクロトフからの真摯な言葉を受け止めて、胸がいっぱいになったカミューは、ふ、と小さく笑う。
「まるでプロポーズだな」
「プロポーズ……のようなものは、俺がお前と共にグラスランドへ行くと決めた時にしたつもりだ。だが俺は一度きりではなく、何度でも言うぞ。何度だって、伝えてみせる」
「はは、相変わらず愛が重い。じゃあ私も、同じくらいお前に返して行かないとな」
草木の匂いを含んだグラスランドの爽やかな風が、二人の髪や服を揺らす。どちらからともなく顔を近付けて、マイクロトフとカミューは
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